「松田東京府知事死去」

last updated: 2019-09-08

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時事新報に掲載された「松田東京府知事死去」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

東京府知事松田道之君は過日來重病の床に就き至極危篤の容體なりと云ひ既に 聖上の叡聞にも達して侍醫をも差遣されたる程なりしか療養叶はす昨六日遂に遠逝したるは實に氣の毒なることなり

松田君か往年滋賀縣に令たるや治績大に擧り名聲關西に隱れなかりしか次て内務大丞に轉し誠意事務に勉勵し其幹事の才と吏務に老練敏捷なるとは宮省の内外を問はす世人一般に歎賞する所なりし明治十二年琉球藩を廢して沖繩縣を置くの事務を了たる後君は楠本正骭Nに代て東京府知事に榮轉し爾來三年甥ュ治て〓り巧に日進の風潮に隨て事を理し務めて府民に滿足を與へたるを以って良京尹として地方官中第一位の令名あり近日或は更に榮轉することある可きやの噂もありし際に當て忽ちに此の不幸の報を聞き我輩一層の悲傷を感するなり

我輩東京府民は良京尹松田君を失ひたり政府は其後任を命するに必すや十分の人撰を爲し我輩をして他日松田君の外に府縣知事無しと歎せしむることなかる可きや疑を容れす然るに今日此人撰たるや極めて困難なるものなりと信するなり元老參事院の議官中には地方事務熟練の人もあることならんと雖とも今日の東京府知事は地方の民治に適し

たるのみの人物にて足れるとす可らす議官〓〓〓〓〓の中には〓〓〓に〓なる人もあることならんと雖とも今日の東京府知事は法律規制の專門家樣の人物にて足れりとす可らす或は無爲漂泊端坐拱手自然に任するを主義とするの人或は事の細大輕重を問はす漫に干渉壓制するを以って地方官の本分なりと認る人の如きは勿論此任に〓〓〓て 必すや才あり能あり熟練あり學識〓〓て改〓〓〓〓抱く壯年官吏に非すんは此困難なる重〓に堪ること難かる可し知らす誰か此任に當る者〓〓〓〓