「讀メール新聞」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「讀メール新聞」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

讀メール新聞

國會議員の年齢と題せる時事新報の論文に付橫濱のメール新聞は異論を唱へ我輩は既に兩

度までも辨駁せしが昨日の同紙上に於て又もや長々しく論ずる所ありたり其趣意を案する

に過半記者が述べたる所と更に異なる廉もなく要するに前言を繰返へすに過ぎざれば我輩

も之に答へんとすれば亦同じく前言を繰返さゞるを得ず故に其等の點は爰に云々するを止

め唯記者の參考の爲めに重ねて寄言せんとするは府縣會議員の一事なり記者は之に論及せ

ずして却て日本は西洋を崇拝するものとなし西洋の學術を修めたる者には頻に重きを置く

の有樣ゆゑ若しも國會議員の年齢を二十五歳としたらば此等の過激なる青年輩は必ずや議

員に當撰すべし國會の精神に非ざるなりと申せしなれども我輩はこれを然らずとして實例

を府縣會に求めたり蓋し府縣會は國會と能く相似たるものにして其景况を見るときは議員

の年齢二十五歳以上の定めなれども實際廿五歳の者は求むれども見えずして夫れより以上

三十歳以下の議員は總數の五分か猶ほ少なきか位のものなり洋學尊崇の時代と云ふと雖も

事實は抹殺するに由なかるべし我輩が國會の議塲に青年輩の現出するを嫌ひたるは記者の

既に熟知する所ならん是は獨り我輩のみならず全國撰擧人の多數は何れも然るもゝの如し

何ぞ濫に故なくして被撰の區域を擴張するの説をなさんや法律を寛にすると嚴にするの得

失は既に既にこれを知れり要、立論の標準にあるのみ