「今より早く官吏を〓ずべし」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「今より早く官吏を〓ずべし」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

今より早く官吏を〓ずべし

今の政府に官吏の〓多あるは明白なる事實にして先年來經費〓〓論の喧しかりしが爲め度々政府部内に改革の沙汰ありて〓じては又殖え、殖えては又〓じたりしが其〓じたる塲合に何か多少の不都合を來したるやと云うに〓して然らず事務は却て圓滑活〓なりしとの事實を見ても冗員徒に多くして偶々事務を澁滯せしむるを證するに足るべし左れば〓來官制改革などとて朝野に議論を催おしたれども我輩は先例に照して充分に斷行する能わざることもやと竊に疑なき能わず蓋し〓實酌量も可なり權力平均も可なりと雖も此等は今日に〓用すべき談にして明年に至り國會の開設あるときは政府は事毎に明瞭なる答辨を與えざる可からずして不言の意味を以て訴えること能わざれば一切萬事公明正大なる無〓論と覺悟せざるを得ず扨議事は經費論に移り各省の定額を議するとせんに其定額とは官吏の棒給、諸買物、旅費等にして就中棒給は其最多を占め他の買物旅費等も亦是れ官吏の員數に應じて〓〓するものとせば先ず第一に其官吏は如何に事務を執りつゝあるやの疑問を生ずべし答えて曰く官吏一日の勤務時間は概して六時間より多からずと又問いて曰く六時を一年三百六十五日に乗ずるときは二千百八十時なれども日曜の一日、土曜の半日、大祭祝日、歳首歳末の休暇に加えるに暑中の賜暇を以てし又本人の私に就ても〓方の墓參自身病氣の養生等都て寛大なる缺勤を許さるゝ例にして又その毎日六時間と云う其六時とても必ずしも六時ならずして特別の官局特別の事務の外は先ず以て閑散なる方なれば官〓全體の人を平均して其執務の時間を〓密に計算するときは一年の勤勞或は一千時間にも足らずして毎日二三時に〓ぎざる可し而して其勤勞の報酬なる月給年棒は〓分豊にして民業世界にては容易に得べからざる所のものなり日本の經濟に於て納税者の多數は農民にして其農民の苦樂如何を尋れば星を戴いて出で月を負いて歸り雨に風に寒に暑に骨を砕き身を粉にして正月と干蘭盆の外は休みと云うことあるを知らず茅屋に住居し煤烟に咽び食に肴なく着るに温〓なく其勞働の時間は毎日必ず十時間以上にして一年少なくも四千時間に下らず之を官〓の執務に比すれば四倍の相〓を見る可し或は體力を役すると腦力を勞するとは一樣に語る可からず官〓の勤務は〓神の事なり〓神の勞に〓るものは筋骨の約に〓るよりも豊なる可き筈なりとの説もあらんなれども民間の事は農業のみにあらず之より以上に〓んで尋常一樣の商家又は工業家に至りては其事務都て腦力の〓用なれども凡そ日本國中如何なる商工と雖も一年を平均して一日八九時間を働かざる者はなかる可し之を要するに民業と官業と其勞〓を比較するときは三四倍の差あるは數に於て爭う可からざる事實なれば今若し官〓の事務を執ること民業の如くならしめなば必ず三四倍の事を成す可し或は之を〓にするときは今の官吏の數を三四分の一に〓ずるも實際に差支はある可からず即ち各省の定額中にある官吏の棒給旅費等は現在の三四分一に〓す可きにあらずや云々とて單に費用の一點より徐々に質問して止まざることもあらんには國會の本色に於て〓〓を語る可からず内實を言う可からずして政府の當局者も必ず答辨に困却することなるべし或は議員等が次第次第に質問して滿足なる答辨を得ず次第次第に熱度を〓して〓には議院最終の權利に依頼し天皇陛下に上奏などすることもあらんには其事たる空漠たる理論にあらずして數理の見る可きものより出でたるものなれば或は〓慮に留まることもありて陛下御鑑識の大臣と雖も亦強いて辨護するに苦しむなきを期す可からず國會の圓滑は我輩の最も願う所にして少々の〓理を犠牲にするも顧みるに遑あらずとは平生の持論なれども議事の始末右の如くにして實際に爭う可からざる掛念もあらんには今より〓んで〓實を去り官吏の沙汰を斷行するこそ策の得たるものなれ我輩は國家の經濟の爲め又現内閣の安全の爲め敢て當路者に勸告する者なり