「博覧會の會期/漉水は目下に急なり」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「博覧會の會期/漉水は目下に急なり」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

博覧會の會期/漉水は目下に急なり

今度の内國勸業博覧會は農作工品その他諸般の産業に關する物品を陳列し文字の如く勸業を目的とするものにして即ち間接に全國の富利を促すものなれば其國〓に重大の關係あるは勿論〓來各地方とも齊しく政治の熱度を高めて東呼西應互に黨派の掛引に忙わしく純質なる實業者も亦その餘波に震蕩せられて全體の生産力は看看〓さに〓耗に傾かんとする有樣なれば博覧會の一擧は喩えば〓〓〓夜の〓風に均しく颯到一陣人をして坐ろに澄徹を感ぜしむる効能なきに非ずして國會開設の期年に當り帝國議會と博覧會と恰も對陣の勢をなしたるは其旨蓋し淺しと云う可からず左れば人民が産業上の奮發心を獎勵せんが爲め事〓の許す限りは其都合を圖り〓憾なく開會の目的を〓せんことこそ博覧會の本意なれば我輩は當局者と共に唯その及ばざらんことを惧るゝ者なり

然り而して博覧會の會期は果して衆覧に供するに充分なりと云うを得べきか昨今世間の一問題なり四月一日より七月三十一日までの四箇月間の會期短しと云う可からざるに似たれども試に其間に於ける觀覧人の差支を察すれば第一に行幸大演習あり演習は四月二日を以て終り夫れより京都へ行幸ありて或は呉、佐世保へも幸きせらるゝならんと云う蓋し〓御は四月下旬の頃なる可しとの御事なれば各地の人民は陛下を〓〓し奉らんとして百事を打棄て歡々嬉々の中に博覧會見物をも忘るゝに至る可き尤もの事なり第二は七月一日に於て衆議院議員の撰擧を執行することなれば政熱沸騰の今日是非とも六月頃より競爭の火花を散らさざるを得ずして民間の繁忙此上なきのみか五六月は黄梅の時〓にして農事に餘暇なき最中なれば此時〓の間は博覧會の事を思う者少なかる可し第三は學校の生徒にして各地方の學校は何れも生徒を率いて見物せしめんと熱望し居るにも拘わらず七月下旬に試験を〓りて軈て就京する頃は恰も博覧會の閉鎖するときなるべく〓來有爲の國民をして産業の思想を感受せしめざるは殘念なりと云うべし第四は外國人にして是れは博覧會を見物せしむる外に附属の結果を産む者なれども招待券を發したるは去月初めの船便なりと云う西洋より東洋に來るは所謂萬里の波濤を〓ゆるの大旅行なるが故に假令え外國人なりとて招待券を受取ると同時に直ちに乗船すべきにあらず彼れ是れ手間取りたる後漸く日本に着する頃は前の學校生徒の如くなるも少なからざるべく或は會期に後るゝを懸念して來〓を見合わする者もある可し概算右の如くして誠に〓憾のみか今年は出品殊に多く會塲手狭を覺ゆる盛にして爲めに觀覧人の〓路を狭め陳列の幅を廣めたるよし又聞く所に據れば一時に〓〓し來るときは其混雑も亦一入なるべし種々思合わするに更に一二箇月を延期するこそ三方四方の好都合にして又左程の費用を要するにも非ざるべしと信ずるなり費用大ならず之を給する〓なきに非ずと雖ども閉鎖後の〓憾は〓に奈何ともすること能わざるが故に我輩は當局者に向て衆意の所在を吟味せられん事を希望するに切なり

玉川の上水は府下百萬人の飮用に供するものなれども水〓の源に水漉機械の設けなきが爲め降雨のときは獨流のまゝに流れ來りて殆んど〓〓物の洗〓にも堪えざるは勿論平常とても漉さずして飲用するとは衛生を重んずる今日に於て油斷の限りと云わざるを得ず尤も有害物の浸入は水源よりは寧ろ水〓の構造如何に由ること多きが故に從來の〓管を改めて鐡管となし大に上水の改良を計るべしとは多年來の議論にして我輩も異議なき所なれども東京市區改正委員會の協議する所なりと云うを聞くに水〓改築費は六百萬圓にして向い十ケ年を期すと云へり或は其時に至り十箇年が十四五箇年となるやも知れず又二十箇年となるやも知る可からず兎に角に早〓の業にあらざるや明白なり左れば其間毎度彼の獨流に腦まされて之を救う策なかるべきやと云うに必ずしも唯水源に水漉機械を据付くれば夫れにて事足る次第にして而も其人費は僅々高の知れたるものなれば水〓改築の擧るを俟て而して後始めて着手すべきに非ず且つ又其水漉機械なるものは從來の水〓にのみ〓して鐡管に〓せずと云うに非ず据付けの始めに於て少しく注意を加えるときは双方に〓用して毫も差支なかる可ければ兎も角も機械を設置して目下の急に應ぜんこと我輩が市民の爲めに希望する所なり