「琵琶湖疎水工事」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「琵琶湖疎水工事」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

琵琶湖疎水工事

京都に於て   石 河 生 稿

琵琶湖疎水工事は〓半落成を告げたるに依り目下天皇陛下の京都御駐〓中を幸い臨御を仰ぎ奉りて盛大なる開〓式を擧行したり抑も此工事は名は疎水工事と稱すれども其實は大津より京都に〓する新〓河の開〓にして其規模計畫の〓大なるは〓工以來今日に至る〓全四個年を費し而して其工費は百二十萬圓の多額に〓するを見ても概略を想像するに足る可し左れば實際に目撃すれば猶人を驚かすもの少なからずして〓〓の開〓、開門堰門及び水路橋の構〓、インクラインの装置等何れも奇巧を極めたる其上に延長六千一百零七間餘の長〓河(之は幹線水路のみの間數にして此外に枝線水路は延長四千六百二十間餘なり)が〓〓として滋賀の三保〓より京都鴨川の東岸に〓する其間に水路の意思を貫き山を穿ち橋を〓ぎ水を渉る奇説〓觀は實に類あるべからず事に當りたる技師の話を聞くに凡そ如何なる工事にても落成の後に至りて工事當局者の心中には多少不滿足を感ずる常なれども今度の工事に限り斯る〓の少なかりしは蓋し時と金とに不足なくして不滿足の廉あれば〓慮なく之を改〓する事を得る爲めなる可しと云へり是に由て之を見れば此工事は規模と云い設計と云い費額と云い何れの〓より見るも〓來希有の一大事業なりと云わざるを得ず而して其落成に際しては辱くも天皇陛下御親臨の榮を得て盛大なる開〓式を擧げ以て一世の耳目を動かさしめたる程の次第なれば今〓其局に當る者は一個人たると一國體たるとに〓なく〓く其責任を盡し其利用を誤らずして長く今日の光〓〓〓うすることを勉めざる可からず抑も此工事の目的たる第一には水力を利用して機械を〓轉し第二には水利を開〓して〓輸の便を開き其灌漑火防衛〓等種々の利用に供する計畫の由なれども先ず其大眼目は水力の利用、水利の開〓に在ること勿論にして今後この〓河が實際に其功を全うするや否やは専ら其利用如何に存するものなれば當局者の用意も亦専ら此兩者に在ることならん然り而して今日〓成の〓河は大津より京都に〓し其間の〓輸は差支なしと雖も世人の知る如く鴨川の水は甚だ〓淺にして以て布を晒らすに足るも以て舟楫を〓ず可からず故に〓河の用を全うせんとするには鴨川の改修を爲さざる可からず即ち新〓河開〓の議ある所以にして其計畫は鴨川の一部を浚渫し京都より伏見に至る新航路を開き〓成の〓河に〓絡して以て〓輸の便を全うするに在りと云う此計畫にして其功を奏し大津より京都を經て伏見に〓する一筋の長〓河全く落成するに至らば其便利は少なからざる事ならんと雖も抑も最初この工事の計畫を爲すに當りては未だ京都大津間の鐡〓も開けざる前なりしが故に今日となりては〓輸上の豫算にも多少の相〓ある可きのみならず此〓河の目的たる獨り〓輸の便のみに在らずして寧ろ水力の利用に着目したるものなるが故に其河幅の如きも頗る狭〓にして之が爲めに〓輸上には多少の不便を見るが如き事〓もなきにあらざる可き〓と思わるれども兎に角に〓輸の一〓は他日新〓河開〓の曉ならでは未だ其〓を見ざるものと云うも可なり水力の利用は工事中最要の目的にして最初は其水を直に使用して水車を仕掛くる計畫なりしに中〓にして水力換電氣の發明あるに邂逅し水力使用に伴う所のあらゆる不便を除却し偶然にも大小〓〓自在自由の一大動力を得るに至りたるは實に理學〓歩の賜にして工事の爲めには意外の幸福なりと云う可し聞く所に據れば水力換電氣の力は凡そ二千五百馬力程なりと云へば今此力を大小の工業製〓に利用して其用を盡すに於ては〓に當初の目的たる京都の衰〓を挽回するに止まらずして其結果の異常なるや疑う可からずと雖も若しも然らずして空しく其力を閑却するが如きこともあらば折角應用したる理學上の新發明も其効を見ざるのみならず實際に消費したる莫大の工費と勞力とは殆んど無益に歸す可し四個年の歳月短しと云う可からず百二十萬圓の費額少なしと云う可からず而して其結果を利用すると否らざるとは當局者が今後の〓意如何に存することなれば其責任たる實に重大なりと申す可し從來の事例に依れば起工式又は開〓式など稱し工事の未だ落成せざる中に盛なる式典を擧行しながら其結果を〓めず半〓にして癈業したるものも少なからず今回の疎水式の如きは其工事も略ぼ落成を告げたる上の事にして斯る事例と同日の談にあらずと雖も〓に盛大なる開〓式を行い一時天下の耳目を動かしたる程の次第なれば其結果〓穫も必ず之に伴いて名實相合わざるが如きことある可からず我輩は工事の現〓と疎水式の景〓とを目撃し其盛大なるを祝し更に〓目して當局者たる京都市の一〓〓が今後如何なる工風方法によりて其結果を〓むるや否やを見んと欲する者なり