「歳費納金の決議」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「歳費納金の決議」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

歳費納金の決議

貴族院にては自今六年間議員の歳費十分一を納れて製艦費の〓足に充つる議を〓したり右は今回下賜されたる聖詔の旨に體し聊か微〓を致さんとの意に外ならざる可し其〓〓は敢て咎む可からずと雖も抑も此〓議は法律上の問題に非ず云わば德義上より銘々の心を促して一院内の同意を得たるものにして正當の〓理より云えば議院の議〓として果して有〓のものなるや否やは少しく疑わざるを得ず然れども其邊の疑問は姑く〓き〓公〓私〓糊の間に斯る議〓を爲して實際に何の益する所ある可きやと云うに我輩は其結果の甚だ妙ならざる可きを斷言するものなり凡そ金錢に關する事柄は何人も公言するに憚る所にして特に德義上の問題として之を公開の議塲に論ずるときは表面に反對するものはなかる可しと雖も顧みて人〓〓會の實際を察すれば各人生計の度の異なるに隨い其利害は種々樣々にして一概に論ず可からざるのみか其關係の微妙なるは筆紙を以て盡す可きに非ず即ち〓會の〓面に〓伏する人〓の極處にして唯人々の推測に任ずる外ある可からず然るに今その事を德義の問題として議塲の公論に付するのみならず加えるに詔勅云々の意味を以てす何人も之に反對し充分に口を開くこと能わざるは素より怪しむに足らず恰も滿塲一致を以て議〓したるは甚だ立派なえるが如くなれども其口を開かざるは果して心に滿足して其〓に感服したるものなるやと云うに必ずしも然るに非ず之を爰に筆端に現わすも心苦しき次第なれども實際の内〓に立入りて皮肉の底を穿つときは銘々多少の不快なきを得ず其人の心の卑しきに非ず古今の〓則として一般の人〓の免れざる所なればなり左れば該議〓に就て議員の中に内々不快の〓を釀さしめたるは事實に疑なしとして扨その不快の〓は如何するやと云うに内に鬱するものあれば外に發す可き筈なれども本來の成行を尋れば敢て他に強られたるに非ず唯人〓の弱點に打勝つこと能わずして自から求めたるものにこそあれば其〓の發して向う所は政府にも非ず民間にも非ず俗に所謂〓けと爲りて自から〓れる外ある可からず即ち我輩の想像を以てすれば今後貴院の議事は事に付け物に觸れ兎角粉〓の沙汰多くして一言一論を圓滑を缺く結果ならんことを恐るゝものなれい讀者若し此に疑あらば假りに今の歳費を全癈したりとして議塲の有樣如何を想像せよ今日に比して議事の穩不穩は自から發明する所ある可し〓に官吏〓棒の爲め官海全面に不〓を釀して言論擧動の調子を高め或は其制御に困却の事〓もある可しとは正に今日の事ならずや人〓の波瀾は微妙の原因に〓伏して意外の働きを爲すものたるを忘る可からざるなり以上の推論果して事實に相〓なしとすれば今回十分一を納るゝ議決の如きは唯議塲の〓和を破るまでにして眞實、事に益なきものなれば今より早く思を改め其議を取消して他日の累を〓さざらんこと智者の事なる可し然りと雖も人々の德義心は深く自から信ずる所にして他より云々す可きものに非ず若しも議員の人々が眞實國家に對する至〓より自家の費用を割て之を公用に供せんとするは素より禁ず可きに非ざれば果して其志あるものは歳費の幾分なり又は全額なり私に之を納れて自から心に滿足す可きのみ我輩は啻に之を咎めざるのみならず寧ろ其志の奇特なるに感服するものなれども唯これを議塲の問題として公に議〓し恰も多數の勢を以て德義上に他を強いるに至りては其結果の妙ならざるものある可きを信じて聊か茲に一言するのみ