「亞非利加に處するの政略」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「亞非利加に處するの政略」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

亞非利加に處するの政略

亞非利加の事に就て論議せんとする者は必ず該大陸に三大區分あることを記臆せざる可からず即ち地中海沿岸部、中央熱帶部及び南方の温帶部是れなり地中海の地方はサハラの大砂漠の爲めに他の地方と全く〓を斷たれ亞非利加大陸今後の〓命には更に關係なきのみならず大概皆歐洲諸國の支配する所と爲り恰も歐洲の一部分たる姿を爲せり又南方の温帶部に於ては沿岸少許の地に歐洲人の住居するのみ餘は都て皆野蠻なる士人の住地にして今後容易に白人の所領と爲る可き見〓なし而して此熱帶地方の中に又南北の二部あり北部は即ちスーダンにしてイスラムの支配に属し南部は即ちバンツー種族の住地にして歐人の支配に属せり北部の大〓は砂漠にして氣候酷熱なるを以て爰に白人の入〓み得べき見〓は殆んど無しと云うも可なり南部の風土は北部に比すれば稍人間の生活に〓するものゝ如しと雖も今日の處、歐洲より爰に移り來て永く住居する者は先づ以てなかる可し但し此地方には所々にオーシス(一處のみに限りて草木繁茂する土地)なきに非ざれども何分にもオーシスとオーシスとの距離甚だ〓くして其間に廣漠たる不毛の熱地の在るあれば白人の移住者に取りては極めて困難なり斯の如く天然の困難容易ならざるものあるにも拘わらず今亞非利加の地圖を開けば其全部盡く歐洲諸國の爲めに分割せられて殘る所なきが如くなるこそ奇觀なれ盖し今日の實際に於て熱帶亞非利加に歐洲人の住居して支配する領地は極々狭〓なる沿岸の地方に止まるとの事實は歐洲人も自から知らざる所なり其實は〓征の熱に乗じて漫に所領地の廣大ならんことを欲し實際には自から足にも踏まず目にも見ざる廣漠たる地方を臆測して地圖を作り圖面の上にて我領地と定めたるものに〓ぎず左れば今後亞非利加に對して如何なる政略を取り自國の所領と定めたる土地を支配するには如何なる方法を用る可きかは歐洲諸國の爲めに取りて眼前に差掛りたる最も重大なる問題なり抑も亞非利加が天然の富源に豊なるは疑もなき事實なれども惜むらくは其大部分の氣候酷熱にして白人の住居に〓せざると又〓輸交〓の便尚未だ開けざると此二箇條の爲めに歐洲人の勢力を以て其内地を支配し〓代文明の影響を及ぼすこと甚だ困難なり且つ又白人が新開國に移住して利益を〓る爲めに最も必要なるは其地方の土民が歐洲の製造品を消費すると同時に又自から産物を〓り出して以て輸入品と交易する力を備える一事なるに今日亞非利加の内部に斯る力を備へたる人民は固より有る可き筈なく何れも開〓以來唯天然の有樣に安んじて改ることを知らず自から物を〓ることなく又人の〓りたる物を得んと欲する心もなく貿易商賣の利益などは夢にも考えざる野蠻朦昧の愚民に外ならざれば假令富源大なりと云うも誰れ彼れを問わず該地にさへ往けば〓中の物を探るが如くに其富を拾い取るを得可しなど想像するは甚だしき〓なりと知る可し元來歐洲諸國が爭いて亞非利加に領地を〓らんとするは何の目的に出るやと尋るに詰る所土人の苦樂如何の如きは之を度外〓して唯自から自家の利益を〓る外に期する所なきは明なるに今其〓利の見〓斯の如く慥ならざるに於ては人民一般に對して重大なる責任を負う所の政府が自から此事業の局に當るは聊か危險の嫌なきに非ず故に今日の處にては政府は唯沿岸の地方を支配して專ら移住者の後楯を〓るを以て本務と爲し内地の事は都て人民私の企業に一任するこそ策の得たるものにして英國政府が彼の特許會〓の制を設けたるは即ち此策を實際に施行したるものなり特許會〓は固より純粹なる營利的の團體なれば利益ありと認むるときは百難を冒して何處までも〓入し若し又〓利の見〓絶え或は敵兵の爲めに〓拂われて到底目的を〓すること叶わずと認れば中〓にして其計畫を變更し若しくは放棄するも是れが爲めに本國の安全を害し又は其體面を傷るなど恐ある可からず此一段に至ては特許會〓は政府に比して動作遙かに活〓ならざるを得ず今日英政府の特許を受けて亞非利加に營業する三個の大會〓あり第一は即ちローヤルナイガー會〓にして此會社は専ら大陸の西部に業を營み利益甚だ多く〓に年七朱〓の配當を爲せり第二は東亞非利加會〓にして此會〓は營業の方法宜しきを得ざりしより大損を釀し今は殆んど分散の境に頻せり第三は南亞非利加會〓と云い最も有力活〓なる會〓なり〓般マクベル土人と戰爭して大に其勢を挫きたるは即ち該〓獨立の働にして是れまでの歴史に據て考えれば今後最も有望の會〓なりと稱して妨なかる可し

以上〓べたる如く今日亞非利加に於ける英國の利益を〓る爲めには特許會〓は最も必要なる〓具にして若しも之を癈するときは我所領地は忽ち他の歐洲の國々に奪い取らるゝに相〓ある可からず何となれば彼れ等は苟も土地の手に入る可き機會を見れば之得るに如何なる手段を用いるをも憚らざるものなればなり