「英國の干渉」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「英國の干渉」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

英國の干渉

〓日の時事新報にも記したる如く〓般以來英國が戰闘艦テルソンを始めとし數隻の軍艦を新に東洋に派遣したるに就ては或は其目的は單に自國居留民の生命財産を保護するが爲めに非ずして日本に向て兵力的干渉を試みんが爲めなりとの〓を爲す者あり元來今回の戰爭に關係する者は唯日本と支那とのみなれば是が終局を調停するは正に〓國の事務にして〓もなき局外國が差出がましく其間に〓〓するとは甚だ以て謂れなき次第にこそあれ〓より信じ難き〓にして何かの間〓ならんとは思わざれども又〓て考えれば方今英國にて或る部分の人が兎角に日本の勝利を〓ばずして已むを得ざれば〓〓を〓びても〓勝利の勢を〓當の區域に〓〓せんと〓〓〓〓〓あるは〓〓〓〓〓〓らず彼〓〓〓〓は今〓〓〓〓〓〓〓の目的を兵力約〓〓の爲めなりと公言〓〓〓〓〓るのみならず〓〓〓〓政府は〓令長官フ〓〓〓〓〓〓に訓令し〓若しも日本の海軍が揚子江を〓らんと企ることあらば江口に於て〓慮なく之を砲撃す可しとの旨を命じたりなど云傳へて頻りに本國政府の〓硬政略を稱揚し陰に陽に示威の言論を弄ぶものゝ如し

抑も英人中斯の如く一圖に支那に味方して日本の〓路を妨げんと欲する者あるは何故なるかと尋るに〓して日本に對して〓恨を抱く者に非ざれども詰る所彼等は多年來東洋に對する政策を一にして曾て變〓に乏しく世界の形勢は日に月に〓歩して面目を新にすれども英國人の眼に映ずる所は百年前の東洋も百年後の東洋も正しく同一樣にして舊昔の政策都て實際の時勢に後れたる其中にも先人の言傳に由り支那を現在のまゝに保存するは英國の利益なりと想像して斯は日本の戰勝を恐れ氣〓ふ者に外ならざる可し然れども我輩の毎度切論したるが如く今日の時勢に照して此言傳ほど事實に齟齬する妄想はある可からず盖し東洋に於ける英國の利益は二樣にして一は政治上の利益を〓張せんと欲せば何は扨て置き東洋の〓國と同盟して緩急相救う約を結ぶに勝る〓策はなかる可し如何となれば現在未來英國と利害を異にし常に其隙を窺いて自家の領土を廣め自家の權勢を加へんことに汲々たる國は一にして足らず是等の國をば悉く相手にして首尾よく其侵略の〓動を喰止ることは英國の獨力を以てして〓して容易の業にあらざればなり然るに今東洋二大國の兵力を比較するに日本の支那に優ること數等の上に在るは今回の戰爭に由りても明々白々の事實なれば英國の爲めに謀りて無力無能なる支那の歡心を買わんとして徒に日本人を激昂せしむるよりも寧ろ日本の爲す所に任せて充分に戰勝の報酬を得せしめ以て其好意を全うする得策なるは喋々を俟たずして明なり又商賣上より論じて支那を亡ぼすときは是れが爲め英國は東洋第一の貿易市塲を失うが故に飽くまでも之を助けて日本をして戰勝の利益を恣にせしむ可からずとの立言あれども固より取るに足らざる愚論のみ何となれば第一日本の目的は元來支那を亡ぼさんとする者にあらざればなり又第二假りに一歩を讓りて日本が支那の國土を大に分割したりとせんか、是れが爲めに毫も英國の貿易に損害を及ぼす理由なければなり然のみならず若しも日本にして支那に領地を開き〓に新政府を設立して〓路を〓り鐡〓を敷き電線を架し製〓所を建るが如きことあらば〓て天然の富源豊なる支那の内地は忽ちにして非常の繁華を致し人民に購買の餘力を生じて英國製〓業者の爲めには世界無二の好得意と爲るや疑を容れず英國人は商賣上の利益を思う結果として日本が支那を征服せんことこそ〓る可き筈なるに却て日本軍の勝利に心を痛ましむるとは我輩の頗る合點に苦しむ所なり支那が外國貿易に從事するは〓に百餘年に及べども其輸出入現在の總額は僅に二億五千〓兩内外に過ぎず英國の政略が如何に舊來の位置(Status qno)を維持するに在りと云うも斯の如く〓歩の遲々たる貿易〓塲に滿足して却て之を改革せんとする者を敵〓するが如き次第にして政治上より〓るも商賣上より考えるも今日支那に加勢して局外中立の實を破るは英國の利益に非ざること明なれば我輩は英國政治家の技量を信ずる厚き彼れが今日の塲合に兵力的干渉を企てつゝありとの〓は必ず無根なりと斷言する者なり