「臺灣經營の大決斷」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「臺灣經營の大決斷」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

臺灣經營の大決斷

臺灣施政の大方針を決したる處にていよいよ諸般の經營に着手して新版圖の實を成さんとするには其事多々にして隨て費用も大ならざるを得ず臺灣經營の問題は取りも直さず費用支出の問題と云ふも可なり第一に海陸の軍備を始めとして道路の開通、港灣の修築、鐵道電信の敷架、衛生上の工事、定期航海の保護、憲兵警察の仕〓の如き何れも經營上の必要にして何れ億以上の金を要することならん一方には斯く莫大の經費を要しながら一方に嶋地の収入を如何と云へば到底その支出を償ふに足〓〓〓は無論、假令ひ之を國庫に仰がんとするも今〓〓〓の〓〓にて一時の支出は素より望む可らず毎年その〓〓〓〓を出だし歳月を期して成功を見るの外なきが如くなれども實際彼の豫算の如き支出額にては今後何年を經て目的を達するや如何にも待遠き〓のみか差當り目下の差支を如何す可きや若しも今日の有樣にして何事にも着手せず否な着手するも費用の少なきが爲めに容易に效を奏するを得ず内地人が彼地に渡らんとするにも甚だ不便にして恰も海外萬里の絶海孤嶋に行くの思あり強ひて其不便を忍んで渡航すれば嶋地内の不便は又一入にして道路橋梁も至極不完全にして天然の炎熱に加ふるに人為の不潔を以てして病毒傳染の危險も免かれずとありては到底拓殖の目的は〓す可らず殊に彼の土匪の如き蜂起の上、兵力を以て〓壓するは容易なるが如しと雖も目下の如く憲兵警察の力、不足にして取締行届かざるに於ては之を未發に防ぐことは甚だ覺束なく假令ひ兵力を以てするも交通不便の爲めに痒き處に手の届かずして看す看す事を大ならしむるが如き遺憾も多かる可し要するに現在の如き始末にて何事も意の如くならず土匪の輩は其不如意に乗じて時々蜂起するなど日本の威令は恰も嶋内に行はれざるの姿を呈するときは外國の中には多年來臺灣に着目して其割讓に就て大に失望したるものもなきに非ざれば斯る有樣を見て日本は到底臺灣を維持するの力なしなど種々の説を放て世界に吹聽さるゝときは國の不面目この上ある可らず日本人にいよいよ其力なきに於ては實際致方なけれども事は只經費支出の問題にして金さへあれば諸般の着手も容易なりと云ふ大に〓發して日本人の腕前を示す可き所なり扨その金の出處は如何す可きやと云ふ何億の金額決して小ならず假令ひ嶋地の經營に必要の經費とは云ひながら之を内地の人民に負擔せしむるが如き甚だ妙ならずとの説もありて〓止むを得ざるときは政府は爰に大決斷を斷じて臺灣の全嶋を抵當に廣く内外に向て一〓の公債を募る可し土地抵當とあれば何億の金を集むる決して難きに非〓〓〓〓〓〓〓〓〓て募集に應ずるこ〓〓〓なれば其金を以て直に諸般の經營に着手し凡そ五六年にして事の成功を期す可し經費の豐なると共に當局に其人を得〓〓〓〓〓任を負ふて事に當らしめたらば其〓〓疑あ〓〓〓〓〓〓は元〓〓〓〓地にして各嶋の〓〓に富み〓〓〓〓の〓多々〓〓〓〓〓〓〓の運輸交〓〓〓にし〓〓〓〓の〓〓を施して〓〓に可なるの土地〓爲し又〓〓〓〓〓して船舶寄港の〓を謀るときは内地人は積々移住して産業の發達と共に地理上自然の好位置よりして商賣貿易の繁昌期して待つ可し何れも本國の利益にして一時の借金の如き直に返濟して永久國家の富源たる可きは我輩の確に保證する所なれども若しも萬一かゝる大金を投じて又かくまでに力を費しながら毫も事の實を擧るを得ず依然たる舊の有樣にして寸效の見る可きものなしとならば是れは何人の罪にも非ず日本人全體に海外所領地を始末するの能力なき明白の證據なれば自から無能力と諦らめて事を斷念し早速、該嶋を賣却して負債を償ひ奇麗に手を引く可きのみ本來割讓の目的は利益の一點に外ならざるに實際利益の見込なしと定まる上は之を維持するの必要あらざればなり今日までの如く爲す可き事も爲さずしてグヅグヅに經過し不始末を極むる其結果、外國人などをして我國人の無能を疑はしむるに至ては國の面目に掛けて斷じて忍ぶ可らず敢て大決斷を希望する所以なり