『諭吉の流儀―「福翁自伝」を読む』について

2014-04-18

書籍の情報

タイトル
『諭吉の流儀―「福翁自伝」を読む』
出版社
PHP研究所
刊行日
5月12日
ISBN-13
978-4569709413

書評等

篠塚英子「諭吉流儀の人付き合い」

以下に掲げるのは、篠塚英子氏の「諭吉流儀の人付き合い」(『金融財政ビジネス』2009年6月18日号)です。 本サイトへの再掲を許してくださった篠塚氏と時事通信社に感謝いたします。

年に数回、異業種、異分野のビジネスマン数人と、銀座「交詢社」のしゃれた小食堂でランチを挟んだ政治・経済談義を楽しんでいる。

交詢社は、知る人ぞ知る歴史的建築物。福澤諭吉が、明治13(1880)年に社交の場として設立したもので、当時のモダンな薫りが今も残留する。

私自身は慶応義塾大学の出身ではないが、同大学で学位を取得できたのは幸運だ。理由は、民間の経済研究所に勤務していた当時、後に慶応義塾福澤研究センター長も歴任された西川俊作慶大名誉教授と一緒に仕事をして、知遇を得たのが御ご 縁である。以来、幾つかの人生の分岐点で意見を頂き、30余年に及ぶ。

20年前に女子大に奉職することになってから、福澤諭吉の「女大学評論・新女大学」「日本婦人論」などを授業で使い、拙著にまで用いた。 後半はかなりの福澤ファンに変身しており、新入生教養ゼミでは「福翁自伝」を数年にわたりテキストとして活用した。読むほどに福澤の魅力が増幅するのである。

去年、西川名誉教授の紹介により、颯爽さっそうと文壇に登場した福澤研究者・ 平山洋氏の「福澤諭吉」(ミネルヴァ書房)の書評を書く機会を得た。さらに、これがきっかけで平山氏と交流が生まれ、最新作「諭吉の流儀――『福翁自伝』を読む』(PHP研究所)を頂くまでになった。

この新著の作りがユニークで楽しい。「自伝」から重要な個所を100項目選択して短文を引用し、1項目を見開き2ページで解説する。

お気に入りは「人に交わるの法」。「交際をやめても此方こっちの身に害を加えぬ限りは相手の人を憎むには及ばず、ただ近づかぬようにするばかりだ」に続く数行が引用されている。

その平山氏の解説が良い。福澤は「人付き合いの良い、朗らかな性格は持って生まれたので」「上司から見た諭吉は理想の部下だった」とし「関係を決定的に悪くする前に身を引いて、いつでも交際の窓口を開いておけば、また共に活動する機会が巡ってくるかもしれない」「それが人間関係を保つ諭吉の流儀なのでした」と、見事に看破している。

ところで、最近増えている官僚のパワハラを含むメンタルへルス対策も、人事院の領分だ。諭吉の人付き合いの流儀は、部下を使う幹部官僚の作法にも十分応用できそうだ。

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「まえがき」全文

以下に掲げるのは、『諭吉の流儀―「福翁自伝」を読む』(PHP研究所・5月12日刊行予定)の 「まえがき」全文です。掲載を許可してくださった平山洋氏とPHP研究所に謝意を表します。

なお、以下のテキストでは、角川学芸出版の『福翁自伝』にリンクを張っています。その書籍に平山氏の解説が掲載されています。詳細は2008年8月 『福翁自伝』解説全文をご覧ください。

また、2011年1月から、著者とPHP研究所のご厚意により、『諭吉の流儀』の全文アップロードをはじめています。

まえがき――この本の使い方

皆さん、福沢諭吉という人を知っていますか? あらゆる日本人の顔のなかで、一万円札の肖像に使われている福沢の顔ほど、広く知られている顔はほかにはないでしょう。とはいえその福沢の生涯と思想がどのようなものであったかについては、十分に理解されてはいないのが実情です。この本の目的は、その、知られているようで実は知られていない福沢諭吉の一生を、『福翁自伝』を読み解きつつたどることにあります。

それではまず本書の構成と使い方について説明しましょう。『福翁自伝』は、明治三〇(一八九七)年の秋から翌年の春にかけて口述され、新聞連載の後、明治三二(一八九九)年六月に刊行されました。本書を構成するにあたり、その自伝全一五章を三章づつ五つの部に分け、各部の扉にその時期にふさわしい福沢の言葉を掲げることで、理解の手助けとしています。読者は扉の言葉とその説明によって、各時代の出来事と福沢の動向について大まかに把握できるはずです。

本文は、数行の引用文とその解説で一つのまとまり(項目)となっています。一項目は見開き二頁に収められていて、引用文ごとに通し番号と主題が付されています。各項目は独立しているので、興味のおもむくまま、どこから読んでも構いません。引用文については音読を心がけてください。福沢諭吉の文章の「よさ」を知るには、黙読では不十分と考えられますので。それが本書を使うにあたっての主たる注意点です。また、本書を手に取られたからには、一度は『福翁自伝』そのものを通読してください。

けれども、それはわざわざ言う必要もないことだと思っています。なぜなら、私の知るかぎり、『福翁自伝』のどの一節にでも触れた人で、結局読み通さなかった人などいないからです。店頭で本書を購入しようかどうしようかと迷っているあなた、ここで試みに「えいやっ」と本文を開いて、目に入った項目を一読してください。するとたちまち、「全部を読んでみたいな」と思われてくるに違いないのです。

そもそも『福翁自伝』ほど面白くてためになる本は、そうはないでしょう。面白さについての説明は要りません。本書の引用文からだけでもそれははっきりと分かりますし、通読してその面白さを認めない人もいないはずです。一方、ためになる、については、自伝の各所にちりばめられているために、あるいは見つけだしにくいことがあるかもしれません。そうした『福翁自伝』の「ためになる」部分を拾い出し、解説を加えたところに、本書の意義を求めることもできます。

最後に、本書の題名は、自伝中の一節、「私は私の流儀を守って生涯このまま変えずに終わることであろう」(「品行家風」の章「莫逆の友なし」の節)によっています。福沢諭吉が生涯変えずにいた流儀とはいったい何なのか、それはこの本の中で明かされることになります。