「陸軍食費改正」

last updated: 2019-09-08

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時事新報に掲載された「陸軍食費改正」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

陸軍食費改正

過日の雑報に此頃陸軍省にては兵士の食費を増加云々の事を記したり此事實に然らば政府近時の一美事にして我輩の大に賛成する所なり軍人は護國の死士なり其身を犠牲にして國に報し、事あるときは我々人民に先たちて死を致す者なり其任重くして危険なりと云ふ可し此危険の地に居て此重任を負ふ之を養ふに厚くするは固より至當の事と云ふ可し在昔封建の士族が往々大祿を収領して起居したるも其名は軍役の爲にしたるものにして事あるときは一死以て之れに報するに過ぎず死は一なり今の兵士が少小の給料を収領して身を犠牲にするも何そ昔の士族に異ならんや唯時勢の變遷にして今日は士民を問はず全國兵の法と爲りし上は兵士に給すること舊時の士族の如くす可らさるは無論なりと雖とも今の事情に適して大なる不都合を見さる限りは勉めて之を厚ふせんこと我輩の特に冀望する所にして朝野共に決して異論なきこと信す今回の改正は何れの點にまで達するやを知る可らすと雖とも幾分にてもその費用を増したらば必ず食物の品格を進めて兵士一般の快樂を助くることならん蔭ながら欣喜に堪へさるなり抑も此議は元と醫局に於いても獨り知る所なりと聞けば敢て贅言を要せすと雖とも我輩も亦少しく見る所あれば一言を呈せざるを得ず元來食物論は全く學問上の事にして之を言ふこと易からず或は口に旨くして身体に益する少なき物あり、身体に益するは少なくして口に美なる物あり、天然の理を以て論すれば身を養ふ物即ち口に適す可き筈なれとも或は積年の習慣に由り又古來一般の風俗に從ひ自から人の嗜しむ所のもの各別にして識らす知らず身に益なきものをも口に食ふことなきに非ずとも注意す可き營養となり殊に兵士の食費の如きは仮令ひ之を増加せると云ふも限あるものなれば其負ふ可き食を用るに務めて〓〓に抑も〓〓〓に軍隊にても身体を〓〓して〓〓〓一〓〓〓〓〓