「賣藥税論」

last updated: 2019-09-08

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時事新報に掲載された「賣藥税論」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

凡そ事物の利害得失を論定し之れに由つて人智の進歩を謀らんと欲する者の如きは必すや先つ眼を一般の社會に注し唯其時の流行の人情風俗に隨て愚俗に雷同す可らさるは論なく之が爲に生す可き利害影響を熟察せさる可らざるなり而して此等の主義を以って立論する者の如きは亦何〓有已〓愛憎好惡を以って妄りに是非するの理〓〓んや〓人は必す其是を是とし其非を非として以て〓〓の所〓を陳へさる可らさるなり

朝野新聞の記者は我輩に一種の名号を附して從來賣藥嫌ひを以って自から誇張する時事新報記者と稱したり我輩は固より賣藥を好む者に非ず聊か人身衞生の眞理原則をも人に聞たることあれは無稽至極呪符に等しき品物は之を口に入るゝを好まず賣藥嫌ひの名号も敢て辭する所に非ず衞生の眞理原則を重んすればとて敢て赤面することもなしと思へば又此を以って自から〓〓者に非ず何如〓なれば人身の疾病に無uなるものを無〓〓〓〓することにして差したる大發明に〓〓〓〓〓〓式〓の事に就て決して人に誇るの意なし〓〓〓〓朝野新聞記者は我輩を目して誇る者なり〓〓〓る〓〓りと叱咤せらるゝからには大に記者の意に激し〓〓〓〓思〓〓恐縮に堪へざるなり蓋し今日は自〓世の中にして人の好惡は其人の意に任して妨なきに非ずや記者は我輩の賣藥嫌いひに反して賣藥好きならん若しも記者をして之を好むならば~丹賣藥自由自在に服用して貴恙を醫に給はる可し我輩は自己の撩ヲを以て記者の愛好を妨けざる者なり記者〓論の言は政府〓り已に許したる媚藥營業なるが〓に其〓〓〓〓〓拘はらず能く其保護を厚くして〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓云ふ歟一家の子弟に飮酒を〓〓〓す〓〓〓〓〓之を許す以上は能く保護して之を〓めよと〓〓歟〓〓を勸めされば斷然これを禁ぜよと云ふ歟、我輩は此論を視て課税の反對論たるの効力を發明する能はさるなり又記者が賣藥の效能を述立てゝ下劑膏藥の説あり願くは其藥品と其用法とを記して何等の症に何等の功を奏し正に病理論の原則に適〓るの〓と其誤用を防くの方法に至るまでも詳に之〓〓〓〓〓〓〓我輩も至極便利の藥ならば之を服用せんと欲すれとも其藥功を學問上に説くは記者も〓〓んする所ならん又醫は意なり意思の信仰大なりと云へ〓此〓〓〓〓〓なり意思妄信大なるが故に世人は賣藥の實〓用るに非すして其名と形と色と香に併せて〓價の高下を目的にするのみ十錢を投すれば十錢の功あり一圓を費せば一圓の功を奏す而して其奏功は藥品の實力と關係なきものなりとのことは我輩が前日の論にも之を述へたり賣藥を買ふ者の意思に於ては錢を出すの多寡に由て其情を慰るの厚薄ある可きのみなれば賣藥者若し課税に苦しむならば其議の調合を如何樣にも改めて可なり其價を如何樣に變するも可なり毫も妨ある可らず是即ち我輩が前日に於て此課税を至當なりとして政府の擧を贊成したる由

我輩は前日の論説を以って無毒至極の主義なりと自から認めたるに豈計らんや人民の罪人なり政府の罪人なりとの譴責を蒙りたり朝野記者は今一度ひ我輩の前論を熟讀あらんこと我輩の希望する所なり