「日本帝國の海軍(昨日の續)」

last updated: 2019-09-08

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時事新報に掲載された「日本帝國の海軍(昨日の續)」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

日本帝國の海軍(昨日の續)

前節に於て既に詳論する如く良將練卒堅艦利砲、人と器と相須ちて始めて其用を爲すべきものにして我帝國海軍の如き既に精良なる海軍人に乏しからざる今日に於ては其用を全くせしめんがために器械の供給を不足なからしむること緊要なり殊に精良なる海軍人を養成せんとするには陸上の練習のみに依頼す可らず必ずや海上風濤の間に在て實地練習の功を積まざるを得ず則ち海軍をして護國の大用を盡さしめんと欲せば平日は海軍人のみを養成し置き一旦事有るの日に際して入用の船艦を供し以て安心すべきに非ず海軍の強弱は海軍人の良否に關し海軍人の良否は平日の訓練に關するが故に若し船艦の供給足らざるがために止むを得ず其訓練を怠りたるの後一朝忽ち堅艦利砲を活用して遺憾なからしめ〓と云ふは寧ろ無理の望たるに近かるべし事有るの日に海軍の用を望まんと欲せば豫め事無きの日に當て船艦の供給に不足なからしめさる可らず况や此船艦なるものは彼の糧食薪水彈藥等の如く僅少の時日間に〓給し得べきに非さるのみならず就中有事の日に當ては新たに之を得んとするに〓も困難を感するものたるに於てをや無事の日に〓て〓き有事の日〓〓〓海軍の〓〓〓〓〓し〓〓〓〓〓の感なからしむること〓〓の〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

兵備の〓は國民の〓〓を〓〓し〓〓〓〓〓の体面を損せざるに在り〓るに此大用〓〓せんとする〓〓〓の兵備を要するやは先つ他國の兵備如何を視て然る後に自家の〓要を〓〓するものにして其〓〓大小に〓定りある可らず〓に一備あり故に我亦一備を要し敵も二備〓り故に我〓二備を要す〓敵國兵備の器〓を視て私が兵備の増■(にすい+「咸」)を〓〓るのみ今世界各國の海軍備を視るに其大小強弱の一樣ならざる實に〓十百の種類を計ふべしと雖ども此に次で我帝國の海軍を以て他の文明國の海軍に比するに遺憾ながら小且弱なるものと言はざるを得ず彼我兵備の強弱如何を視て國の〓〓を卜知すべき今日に於て帝國現在の海軍を以て果して能く國民の權利を保護するの大用を達し得べきや否甚だ氣遣はしきなり我輩左に各國海軍備の一二例を擧げて讀者の〓考に供すべし

英國は世界第一の海軍を有する國なり同國國民の歌に「海は英國の〓する所」と云へる句ありて全國内に反〓し牧童樵夫に至るまで相共に之を唱和して愉快極りなき其傍に在て世界の最大強國等は〓觀〓〓して敢て一言の不同意を唱る者なし實に我輩をして羨望に堪えざらしむるものと云ふべし斯の如く英國海軍備の強大なるは一は其地勢の然らしむる所一は古來世界第一の貿易國にして海軍強大ならざれば國の富源たる貿易を保護すること能はざると又一は人民の勇壯なる國利の爲には費用と努力とを吝まず誓て其目的を必成するの氣風あるとに〓〓するものと稱すべし英國人民の海軍に熱心なる世界に其比類を見ず何樣に些少の事件なりと雖ども苟も海軍に關係する限りは一も全國人民の注意を〓るるものなし〓くも驚くべき事實とも稱すべきは現在の政府が何政黨の手に在るを論せず海軍費増加と聞きて國中一人の異議を唱る者なし〓して海軍事務取扱上に關しては新聞〓は〓〓を以て〓〓に難詰して假借する所なし故に海軍の當局者に於ても日夜孜孜勉めて輿望に背かざらんことに注意せざるはなし〓て國會議院に於て海軍卿の演説に英國の政客は海軍をして發明日新の風潮に援れしめず隨て又無頼最上位の海軍國たるの實を失はざるに在りと云ひたるが决して誇大の空言にあらず汽船發明以來今日に至るまで船艦の搆造等に關して幾〓の改良ありしや知る可らずと雖ども一事として英國が他國に後れを取りたるの例なし然れども英國人民は嘗て之に滿足することなく英國海軍は今一層強大ならざる可らずと云て止まざるなり千八百八十一年〓英國海軍省の定額は銀貨五千三百六十万圓にして軍艦の〓數は二百四十三艘此内四十八艘は外洋を航すべき〓〓なる船艦なり其銕〓の厚さは〓〓の〓〓なるも〓〓〓の四寸半なるものを最下等となし銕の二尺四寸なるものを以て最上等とす裝載の大砲は六噸半のものを以て最小とし八十一噸のものを以て最大とす進行の速力は九「ノツト」半(一時間に九海里半)のものを以て最緩とし十五「ノツト」半のものを以て最速とす而して其製造年〓の如きも多くば〓今より十年以内に在るものにして二十年を經たるものは三四艘を除くの外絶てあることなり此に由て之を視るに英國海軍の威名を世界に〓にするは蓋し其理由なきに非さるなり(未完)