「國立銀行條例の攺正加除」
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時事新報に掲載された「國立銀行條例の攺正加除」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
國立銀行條例の攺正加除
現行國立銀行條例の攺正あるべきは昨年以來世評最も喧しかりしが果して一昨五日を以て其攺正の布告ありたり(官令〓内に就て見るべし)此攺正に依て新たに銀行紙幣消却の方法を明らかにするのみならず銀行〓店其外の塲合に〓し大藏省の監督は一層の隱密を加えたるを以て直接には銀行株主の利害より〓きては全國の理論上に其關係する所少小ならず〓〓〓〓〓此攺正前後の新舊條例を比較して讀者の參觀に供すること左の如し
新舊條例十二條を比較するに
新第十二條
此條例を遵奉して創立する銀行は鎖店其他事故あるに非ざれば開業免狀を受けし日より二十ケ年の間其營業を繼續することを得べし右期限後は更に私立銀行の〓格を以て大藏省の許可を受け其營業を繼續することを得べし然れとも紙幣發行の
免許を有し國立銀行の資格を以て營業を繼續することを許さず
舊第十二條
此條例を遵奉して創立する銀行は鎖店其他の事故あるに非ざれば開業免狀を受けし日より二十ケ年の間其營業を取續くことを得べし右期限を過ぎ尙ほ營業せんと欲するに於ては其趣を紙幣頭に申請して更に免許を受くべし
舊條例に依れば國立銀行は二十ヶ年間營業の後尙ほ營業せんと欲するときは更に大藏省の免許を受け國立銀行の資格を以て其營業を繼續「することを得たりしもの新條例を以て二十ケ年後は私立銀行の資格を以て營業することを得るも紙幣を發行し又は國立銀行の資格を有することを得ずと攺正したり而して全國百五十の國立銀行中開業免狀を受けたることの最も早きは明治六年七月廿日にして最も後れたるは明治十二年十二月十日なるを以て明治二十六年より〓三十二年迄の間に紙幣發行の特權を有する國立銀行は日本全國に其跡を絶つことなるべし
次に新舊條例第二十條を比較するに
新第二十條
此條例を遵奉する銀行は其紙幣下付高四分の一に相當する通貨を以て發行紙幣引換の準備に充つべし
舊第二十條
此條例を遵奉する銀行は其資本全額十分の二を通貨を以て銀行に積置き前條に〓くる所の公債證書の代わりとして紙幣寮より受け取る銀行紙幣の引換準備に充つべし故に其銀行紙幣發行の際に於ては常に其流通高の四分の一の割合を以て準備金を現存するを定度とす尤銀行紙幣發行の增減に隨ひ其準備通貨も亦便宜之を增減し之を〓用琉することを得べし(但し右紙幣の引換多くして四分の一の準備にて引換方差し支ることあれば別に通貨を〓へて之を引き換へ决して之を拒み又は之を怠る可らず)
此第二十條の攺正に於て新舊條例を日して字句の繁簡はあれとも精神にも金額にも格別の變更なし唯舊條例に依れば銀行紙幣發行の都合に依り其流通高四分の一の割合を誤まらざる以上は準備金額を增減するを得たるもの新條例に於ては單に〓〓下付〓の四分の一(資本金十萬圓の銀行なれば發行紙幣〓萬圓を受取り之に對する四分の一卽ち二萬圓)に〓〓する〓〓〓明〓の準備に充つべしと云ふ隨時紙幣〓〓高の如何を問はざるものの如し
次に舊第二十二條は新條例に於て全く削除したり
新第二十二條
削除
舊第二十二條
此條例を遵奉する銀行に於て資本金集合の手順を了りたる後公債證書を納めて同額の銀行紙幣を受取り其引換準備金を積み立てるの割合は卽ち左の如し例へば資本金十萬圓を以て創立する銀行なれば八萬圓は4朱以上利付きの公債證書實價八萬圓に當る高て出納寮へ納め卽ち八萬圓の銀行紙幣を紙幣寮より受け取るべし二萬圓は通貨を以て銀行に積置き銀行紙幣引換の準備となすべし(但し此情勢第卅條に揭げる所の規定に從て資本金を築合するときは其入金毎に右の割合を以て公債證書銀行紙幣交收の手續をなすべし)
此條の削除は舊條例に通貨二萬圓を銀行に積置き引換の準備となるべしとあるもの今回攺正の準備金を日本銀行に納付すべしとあるに抵觸するが故なるべし其他格別此削除を必要とする程の事はなきが如し
次に新舊條例第二十七條を比較するに舊條例の但書を削除するのみ
新第二十七條
右公債證書より生する年々の利息は其銀行之を受取り毎年銀行の利益精勘定の内に加へて之を株主一同へ分配すべし
舊第二十七條
右公債證書より生する年々の利息は其銀行之を受取り毎年銀行の利益精勘定の内に加へて之を株主一同へ分配すべし(但し銀行に於て其銀行紙幣引換のことを怠るか又は此條例に背戾することあれば紙幣頭は其利息を取押さふることあるべし)
今回の攺正に依て此條の但書を削除したるは〓し銀行に於て紙幣引換を怠り又は條例に違背したる時の處置は他に充分の豫防準備を設けたるを以て之を必要ならずとしたるが〓なるべし
次に新舊條例第四十九條を比較するに
新第四十九條
此條例を遵奉して創立したる銀行より發行する所の銀行紙幣を通貨と〓〓へしこれを請求する者あるときは日本銀行に於て之を引き換ふべし
舊第四十九條
此條例を遵奉して創立したる銀行より發行する所の銀行〓〓〓〓〓〓の本店に於て之を引換ふべし(但し支店を設置する銀行は其銀行の都合に依り本店の外支店に於ても〓其〓〓に〓〓するを得べし)
今回攺正の銀行條例第十六章依て〓國立銀行の紙幣引換準備金は日本銀行に〓〓〓〓の元〓に充てたる以〓〓〓〓〓〓〓各銀行の〓〓〓〓〓〓日本銀行〓〓を代て其實に任ぜしめたるは理に於て斯くせざるべからざるべし但し日本銀行に於ては其本店のみならず支店其他に於ても必す紙幣引換の請求に應ずることならん〓 (未完)