「北海道物産税則の改正を希望す 第一」
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本文
北海道物産税則の改正を希望す 第一
北海道は沃野千里の地なり數罟〓池に入るも石狩川の魚〓〓を食ふべからず斧斤時ならず
して山林に入るも根室山の材木勝て用ふべからず野に栽ゆるの穀物は以て海外に輸出すべ
く山に採るの鑛物は以て國用に供すべし其他養蠶や牧畜や物として殆んど地に適せざるは
なし是れ豈に天然の美國、造化の富源にして實に我國の倉庫と稱すべきものにあらずや魚蝦
の利未だ之を盡さず千里の沃野空しく熊鹿の群に委し去るが如きは誠に日進の世界に遺憾
とすべき所の者にして經世愛國の士が痛歎して措かざる所のものなり蓋し斯の如きは手を
開拓の業に着してより以來日未だ尚しかをざるの致す所なりと云ふと雖ども亦た此業の来
た宜きを得ざる者ありて而して終に其進歩を遅〓せしことありしものならんとも未だ知る
べからず左れば北海開拓の業を思ふ者は鋭意熱心一利も之を起し一害も之を除き以て天然
の富源を發せんことを〓めざるべからず是れ我輩が此稿を草して以て世上の與論に訴へん
と欲する所以なり況んや現今恰も是れ水産博覽会の開設に際し世上幾多の水産家も者が東
京に集り以て大に其改良進歩を謀らんとするの好〓〓なるを以て亦た〓聊か北海の〓産〓
を水産に係る租税税即の事を論し〓〓水産家の〓〓を喚起し以て其税則改正を促すの一端
をなさんとす知らす〓〓の與論と水産家の公〓とは幸に能く此改正に左〓して以て我輩の
素志をして空しからしめざるや否や
帝京の地に安居して足未だ北海の風雪を蹈まざる者は北海道物産税の輕重を辨知せざるべ
し内州繁華の情に通して眼未た此地未開の事を見ざる者は北海道物産税の適否を辨知せざ
るべし然れども徃年北海道巡幸の事ありて我が〓聖天子親しく其人民の疾〓を問はせられ
たると又た昨年山田、佐々木、西鄕、大山の諸參議及び會計檢査院長租税局長より其〓大小
の官吏續々として彼地に巡回せるとは皆な要路に當る者をして北海道物産税の事を知悉せ
しむるに足るものなるべし其れ既に之を知悉す則ち北海道物産税の舊來慣行する所の國庫
歳入の一部たるに拘はらず局外より之を論して以て其改正を希望するも亦た無用の勞に属
せざるべきを知る唯だ彼れ足未だ北海の風雪を蹈まず眼未だ北地未開の事を見ざるの徒其
物産税の實際を知らざるを以て空しく之を等閑に附し去ることなく少しく此點に注意して
此論を讀まば則ち幸なるべきのみ夫の課税の種類と其税率とは各國其制を異にするを以て
未だ遽かに得失を判定し易からずと雖ども佛國學士「ボリユー」氏の説によるに歐洲列國に
於て其生産力と税金との割合は大抵生産金額の六分より七分に至るを通例とす而して佛國
の如きは課税の煩雜にして且つ苛刻なる文明國中に此類を見す故に徃々にして人民の幸福
を害し其生産力を減縮するの傾向ありと云へり今試に北海道物産税表なる者を?げて之を
見るに課税の種類は重に水産にして其税率は収獲原品の一割以上二割五分に至るものあり
之を以て我國税及び地方税の別なく何種の税と此するも最も重き収税たるが如し見よ我國
に於て最も〓〓と〓〓べき彼の改正酒造税の如きも其税率決して〓〓の一割二四分より重
からざるを、況んや之を以て彼の「ボリユー」氏が云ふ所に比すれば益其重きを見る可し
且つ未開の地に収税を軽うして其人文の進歩の助成するは拓地一般の通法なるべきに我北
海道の収税に至りては全く之れと相反する者あるが如し今夫れ〓〓〓州と北海道と収税の
輕重を比較せんに十五年度歳入第一次經常租税の合計は金六千百六十一万八千九百圓にし
て北海道物産税合計金百二十八万八千八百三十圓を〓〓〓して〓の經常租税金六千百六十
一万八千九百圓を内州の総人口三千五百六十万七千八十九人に平均分賦すれは一人一圓七
十三〓一〓にして此の物産税金百二十八万〓〓千八百三十圓を北海道の総人口二十二万六
千四百六十二人に平均分賦すれば一人〓〓六十九〓一〓なり〓ち北海道人〓〓負擔する所
は内州人氏の負擔する所と此へて〓〓〓〓〓こと三倍〓〓〓〓なりと〓ふ〓〓〓〓〓〓中
〓〓〓〓〓〓〓又た北海道の物産税は内州の諸税に比して其税率既に重く更に又これを其
人口に平均して益々重きを見るのみにあらず同種類同物品にして内州に在ては〓税を免〓
〓獨り北海道に於ては税を蒙る者なり蓋し其〓の〓〓〓〓〓〓〓にして〓に北海の貿易に
關係〓〓〓され〓〓〓〓な〓と雖ども僅かに津輕海狹一〓〓〓〓隔てゝ出す所の海産の如
き皆な何等の課税を〓〓〓〓〓〓〓〓最も偏重の事甚だしきを見るが如し〓者〓は〓目〓
〓〓地方税品にも各地税率の輕重を〓〓する〓一國の〓〓利ならすと〓ふ況んや此物産の
國庫歳入の一部〓属するに於ておや然れども今一歩を〓て海狹を隔つるの地に税の輕重あ
るは尚ほ忍ふべしとするも同く是れ北海道の漁塲にして其〓を異にするが爲めに〓種類の
物品にも税率の輕重を別に〓る者ある〓〓石狩に於いては鮭漁の税率収〓原品の〓割五分
〓〓〓〓〓〓〓は一割五分たり岩内に於ては〓〓〓の〓〓二割に〓小樽に於ては一割たる
が如く〓〓〓〓〓〓〓を税率の上に生するを、其他各物産品税率を異にする〓悉く之を計れ
ば枚擧に遑あらず實際に於ては何か〓情もあることならんと雖ども數に就て〓〓ば平等な
らずと云はさるを得ず
以上列記する所によれば北海道物産税則の改正せざるへからざるや明かなり