「中山道銕道公債證書條例〓に金札引換無記名公債證書條例」

last updated: 2019-09-08

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時事新報に掲載された「中山道銕道公債證書條例〓に金札引換無記名公債證書條例」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

中山道銕道公債證書條例〓に金札引換無記名公債證書條例

我日本政府は〓〓廿八日を以て中山道銕道公債證書條例〓に金札引換無記名公債證書條例を制定公布せり其全文は翌廿九日の時事新報公法欄内に掲載し書きたるを以て既に看官諸君の熟讀を〓たるものたりと信ず

中山道銕道公債證書發行の趣意は其條例第一條に明言する如く上野國高崎より美濃國大垣に至るまで中山道に沿い銕道を布設し及び其資金に充てるが爲めなりとあり抑も中山道に銕道を布設し早く東京大坂間の連絡を通することは疾より我輩の希望する所にして前日中山道鉄道布設決定の沙汰を聞くも〓其着手成功の〓〓ならんことを憂苦し竊かに思考する所なきにあらざりしと雖も今此公債發行の布告を見て其の落成決して遠きにあらざることを知り得たるを以て我輩は大体上に於て唯満悦するの外なきなり然るに此銕道線路は高崎より大垣までとあるのみにて大垣以西の線路中にある長濱より大津まで琵琶湖畔十七里の道は此資金を以て鉄道を布設せんとするの意なきやに察せらるゝものあるは我輩が甚だ不審に堪えざる所なり若し二千万圓の公債にては僅かに高崎大垣間の銕道を布設し得るに止まるものにして〓も此金額の内にて長濱大津間の銕道をも布設し得るべき限りにあらざるが故なりとの理由よりして然りしものならんには我輩は直に此公債の發行高を増加して二千幾百万圓を限り發行するとするに於いて猶像躊躇を要せずと信ずるなり必竟するに高崎大垣間に銕道を布設するの要ありて然る後に二千万圓の公債を發行するの要を見出したるものなるが故に長濱大津間にも銕道を布設するの要あらば二千万の外更に幾百万圓を増加して其須〓に〓するも大いに差支える所ありとは思われず果たして然らば長濱大津間の銕道布設の事今回の公債條例より漏れたる理由は此十七里間の銕道布設の要を見ず長濱より大津までは琵琶湖上の小〓船を往復せしめて運輸の用に差支えなしとするよりにして然るものが吾輩の見る所は大にこれに異なり〓船の往復便は即ち〓なりと雖も固よりこれを以て銕道の至便なるに比〓すべからず況や長濱大津の両〓船塲に於いて旅客と荷物とに〓な〓〓〓皆銕道を下りて船に上り再び船を下りて銕道に〓る其〓雑不便云うべからず或は十七里の〓〓中〓に比〓〓の難しきものに出逢えば船の小なると〓の〓きがために船中皆二百十日の暴風雨に〓州洋を〓航すると一艘の〓ひを爲すことあらん果して斯の如くやなる〓は折角の東京大坂間の往復も未だ以て文明の〓行と〓ずるに〓〓〓〓〓〓の大便〓を一〓に欠くものにして〓〓〓の〓〓大〓〓ものと云うべく若し此〓〓を〓むれ〓〓〓〓〓〓〓〓駕籠にて間を合せ木曾川の銕道も渡し舟にて事足るべし何を故さらに數百十万圓の大金を費やして小不便を避けるの要あらんやと云はんにこれに〓るの詞なかるべきなりこれに由てこれを觀れば高崎以西大垣に至るまでの銕道を布設すると同時に又長濱大津間の銕道をも布設するの大切なるは無論のことなるが故に今回の銕道公債條例中に此線路を漏るべき理由なく若し故意にこれを漏らしたりとせば此線路の布設當分不用なりとしてこれに着手せずとの意より出てたるにはあらずして長濱大津間の鉄道は別に其資金出所の覺悟ありて今回の公債を配分するの要なきがためなるべしと我輩は斯の如く信じて疑わざるなり

以上は中山道銕道の線路に關し先ず我輩が初見を述べたるものなり次に此銕道公債發行に關する次第を見るに發行高は二千万圓にして鉄道工事の都合を計りて漸次にこれを賣出し利子は年七分にして毎年六月十二月の両度に〓渡し元金償還は最初五ヶ年間据置き跡二十五ヶ年間に毎年抽籤法を以て償還し〓すの法なり而して此公債發行手續、時々の發行の金額、公債の賣渡價格等は時に臨み大藏卿の定むるものにして今日に當りて其詳細を知ることを得ず随て此公債の賣れ加減市塲の賣買相塲等を像想すること甚だ困難なり若し銕道の工事を急がず先ず此れ公債全額を十分し其一分即ち二百万圓位ずつを毎年發行する様の事ならんには此公債發行は格別其影響を市塲に及ぼすことなかるべしと雖も或は一ヶ年乃至一ヶ年半位の期日中に發行し〓す様の事ならんには其影響の市塲に及ぶもの決して少々ならざるべし又此公債の賣買價格の如き目下市塲の景況より見れば額面百圓に付九十圓に近き價あるべき筈なりと雖も今の市塲は一種異常のものにしてこれを健康の常態なりと云う可からざるが故に此七分利付五ヶ年据置の銕道公債を九十圓に近き價格にて賣出し果して何程の買入人を出見すべきや甚だ困難なる問題にして我輩はその大概をも像定〓はざるなり〓は大藏卿に於いて一定の發行價格を公告せず時の相塲次第にて賣渡すとし最初九十圓に賣出して買入人少なくは更に八十五圓に減じ暫らくして又八十圓〓至七十五圓に減ずることとするか〓七十五圓にて賣出〓〓景氣なれば更に八十圓に〓上尚〓買入人多數なれば更に又八十五圓九十圓に引上たる等の〓法に従うことあらば其時々市塲の激動一方ならずして害の及ぶ所も容易ならざるべきが故に大藏卿は決して斯る方法に由らざるなるべく左れば〓賣出の価格を一定せんとすれば其加減甚だ困難なるものあらん兎角此公債の發行法は一難事たるを免れざるものと察せらるゝなり(未完)