「中山道鐡道公債證書發行手續」
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時事新報に掲載された「中山道鐡道公債證書發行手續」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
中山道鐡道布設のため七分利付無記名公債二千万圓を發行することに定めたりとの事は去年十二月第四十七號を以て布告ありたる以後今日に至るまで其發行の手續如何は大に全國商業〓會の注目する所なりし然るに大藏〓は昨廿三日告示第七號を以て其手續都て十三條を告示さられたり其前文は本日の公報〓内に記載したれば就て見らるべし
公債總額二千万圓の内今回の發行に係はるもの五百万圓其發行價格は額面白圓に付九十圓とし、引受人は本年二月廿日までに日本銀行及び其代理店の内に申込み、代價二度に分ち本年四月三十日までに四十圓六月十五日までに又四十圓都合八十圓と最初の保證金とを合して九十圓の代價拂込皆濟となるなり、利子は元金の九十圓拂込〓濟に至らざる間は保證金又は跡金等現在拂込みたる高丈〓に對し年七分の割を以て拂渡すものとす以上は今回告示第七號中の最も肝要なる事項なり
〓此發行手續を一讀し此公債證書の賣れ方如何を考るに當時東京の市塲にて六部利付無記名〓業公債は額面百圓〓付市價八十四圓計りなり此割合に從へば七部利付の公債なれば九十七八圓にて買入人の現れ出つべき道理なれども當時〓業公債は抽籤法にて元金拂戻しの利あるに新公債は五ヶ年置据にして此間は元金の戻るべき見込なきを以て此不利を考へ先づ九十四五圓にて賣出すも必ず買入人に不足なかるべき道理あり然るを今これを唯の九十圓〓て賣出さ〓〓ありては内外人民億万の金主を相手の五百万圓〓〓多くして公債少なく忽ちにして賣切ることならんとの説を懐くひともあらんかなれども我輩の考は大にこれに異なり五百万圓の公債固より巨額にあらずこれを賣捌くに格別の勞を要せざるは無論なりと雖もこれを九十圓にて賣らんとするは如何あらんか我輩の常に論辨する如く今の市塲は健康常態の市塲にあらず一種異常の不健康の中に〓み居るものなり然るに此市塲を目安にして五百万圓の公債を賣出さんとす隨分豪〓の所置なりと評せざるを得ざるなり九十圓にて買入人の現はれ出る者案外に少なきを見て發行價格改正の沙汰も甚だ不都合の次第なれば若し此儘に進むに於ては目下市塲の景況如何に拘はらず或は頗る困難なる地位に立つ等の事はなきかと我輩の竊かに憂慮する所なり〓し我輩の憂慮の全く空想に属すべきや否やは來る二月廿日を期して明知するを得べきなり