「外國人旅行規程の制限は嚴守せざる可らず」

last updated: 2019-09-08

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時事新報に掲載された「外國人旅行規程の制限は嚴守せざる可らず」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

外國人旅行規程の制限は嚴守せざる可らず

内地交通の便を開けば外國人の内地旅行を許さざるを得ず我國にては内地交通の便を開きたり故に我國にては外國人の内地旅行を許さざるを得ずとは我輩の嘗て我紙上に陳したる論理にして固より信して疑はざる所なりと雖とも是は唯大勢に就て論したるのみ今日に於て苟も此勢に從ひ難きの事情あらば其事情のあらん限りは人力を以て之を制せざるを得ず抑も我國が三十年前諸外國と修好通商の條約を取結ふに當ては固より海外交際の模樣を知らざるが故に關税法裁判法等極めて重要なるものに至ては外國人の言ふが儘に之れに例外の特典を與へて敢て頓着することなく徒に外人の内地に入るを恐れて開港塲より旅行規程を十里と定め故なくして一歩も此規程を踰ゆ可らずと約したり三十年前〓世界の條約、その不都合千万なるは今更改めて申すに及ばず近來は條約批准〓も〓かる〓〓なれば、この條約を換骨奪體した文明〓〓の條約と爲すに〓きも亦〓〓〓〓〓〓〓〓んと雖とも善かれ惡かれ條約は條約なり外國人にして治外法權を〓り海關税權を〓〓せざる間は旅行規程も亦十里以内に限り内地に一歩も〓〓〓せしむ可らず乃ち現行條約の改正する迄は其條約の明文上に於て内地旅行を許すこと〓〓ざる所以にして内地交通の〓〓たるにも拘らす力を盡して其旅行を防かざる可らざるなり

我開港塲に於て旅行規程を十里と定めたることは條約〓に詳かなり又東京〓市塲に在留する外國人の旅行規程〓〓〓〓慶應三年丁卯十一月に約定したるものあり即ち其約定の第十一條に江戸在留外國人は左に記せし境界の内は遊歩勝手次第たるべし即ち新利根川(或は江戸川と云ふ)口より北の方金町の關所迄夫れより西の方水戸街道に沿ひ千住宿大橋迄夫れより隅田川以南川上へ登り古谷上の〓〓〓より小〓村、高倉村、小谷田村、荻原村、宮寺村、石畠村、三木村、田中村の諸村落に添ふて日野村迄線を引き日野〓塲より玉川口迄を限りとすべしとあり外國人の旅行遊歩には條約面上に於て斯く制限あるが故に内地より東京並に各開港塲に達する鉄道線路は如何程に其數を増したりとて外國人にして自から其條約を守る可きは勿論、我國人も亦能く此條約を履行して彼等が徒歩騎馬すると汽車に駕するとを問はず苟くも旅行規程に達すれば之を踰て一歩することをも許す可らず尤も我外務省と各國公使との照會に於て學術研究と病氣療養の爲めには外國人をして旅行券を請ふて内地に入らしむることを許し置くと雖とも是とても一々取調へたらば稀には旅行券を所持せずして内地に入るものなしとも云ふ可らず例へば相州小田原の郭外酒匂川の東岸には條約規程の制札ありと雖も箱根温泉に浴する外國人は或は横濱より日歸り〓もする者さへあることなれば婦人小兒に至るまでも逐一旅行券を所持するや否や少しく其邊に疑なきを得ず固より本人の故意に出たるには非ずと雖も是〓〓〓〓〓〓々視するは人〓の常に免かれざる所のものなり左れば今〓〓〓〓〓の〓〓開くるに隨ひ學術研究と病氣療養とを謂はず外國人が内地に入るの必要を感すること益急なるに〓らば一両日にして往返する旅行には一々旅行券を〓して〓〓なし或は友人の誘引等にて俄に暫時の内地行を思ひ立ちたる〓〓には知らず識らず旅行規程の制限を犯すことなきを制す可らず是等は〓れも條約に對して相濟〓さるものなれば勉めて之を制せざる可らず外國人にして若し之を不都合なりとせん歟、〓〓是れ條約上の不都合なれば其不都合を除くは唯條約を改正するの外なからんのみ

我輩は元來外國人を〓つものに非ず〓〓上の私〓〓〓へば外國人中朋友〓〓〓〓〓〓なることなれば〓てして自由に内地を跋渉せしめんと欲し〓一國の〓〓〓〓〓〓外國人〓〓〓勝手に内〓に入らしめて内外〓〓るの〓〓〓〓〓〓〓〓〓するものにして〓〓〓〓〓〓のが〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第なりと雖も從來の條約を改正せざる限りは日本人の〓義に於て巳むを得ず之を守らざる可らず古來我日本人は法律を利用するよりも寧ろ情實に制せられたる習慣にして外人に交るにも細大の事に付き動もすれば違約遷延を〓められて竊に赤面することも少なからず何とかして〓〓〓〓〓一〓も速に除去せんとて有識の士は〓に之を忘れざるの〓〓悟も上野高崎間の鐵道も竣功〓〓〓〓〓〓の工〓も近日起工の事と定まる等内地の〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓ては從來情實家の名を成したる〓國人にして或は〓〓人が旅行規程を踰るも之を傍觀〓〓實に〓〓〓の事なりとて默々に附するが如き優柔不斷の所爲なきを期す可らず左りとては例の違約遷延の舊套を演して重ねて又外國人に嘲を買ふものなれば苟くも今の條約のあらん限りは謹て之を守り規程の限界には無形の〓〓を〓らさざる可らず或は上野の停車塲には外國人と内國人と〓車を別にして其發車の時刻を異にし外國人〓乗せたる車は唯條約規程内の線路を徃〓するが如きは便法の一ならん其邊は兎も角も唯我輩〓〓と外國人を嫌ふ者に非ずして尚ほ且つ斯くも窮窟なることを發言するは實に斷腸痛恨に堪へざる次第なれとも私は以て〓を〓す〓す可らず不本意ながらも條約を墨守し日本人が外國人に對して一歩も枉くる所なきを明かにし併せて我國人の信義を天下に表せざる可らずと信ずるなり