「日清談判、英國の喜憂」
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時事新報に掲載された「日清談判、英國の喜憂」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
日清談判、英國の喜憂
佛清兵連る年又年、其間對局者の軍費損害等は幾んど貸られざる可しと雖も之を傍觀する中立國にても亦其商賣を妨害せられて爲めに大損毛を被るもの少なからず特に支那を以て一大花主とする英國の如きは其取引上に非常の影響を受けたるが故に在支那の英國人は其商法會議所の議決を〓て佛清事件の仲裁を歐洲諸大國に訴え本國政府も亦此事件の早落着を望み同外務卿が佛清〓政府に向けて其調停を試みること殆んど數四に及びたれども双方行き〓りの痩我慢にて毎度之を拒絶したれば佛清調停の事は最早今日に望みなしとて經て此事件は如何に落着す可きやと考えるに其落着の日は支那が毎戰佛軍に破られ木〓陥り天津破れて北京城下の〓を爲すか或は佛兵奔命に疲れ北上窮迫の〓も〓餅に〓し精〓き力屈して中道にして休戰するか二者其一に居る時なる可し夫れ然り然りと雖も支那も〓大帝國なり佛國も亦〓〓〓なれば〓國孰れにても右〓の時目に達するまでには今より長日月を費さざる可からず英國は此長日月間に其商賣の損毛に堪え可からずとして英國の爲めに謀るごときは佛清孰れにても早く勝敗を決するに若かず而して今日の勢、佛國先ず敗る可き〓將た支那最も先ず敗る可き〓と云うに佛國は名にし逢う歐洲の任侠國にして歴史に對し祖先に對して國の名譽を重んずること他に其比例を見ざる程なれば縦え國力は疲〓して唯皮骨のみを剰すに至るとも支那人に打ち負けて黙止するものに非ざるは多年の經〓に於いて英國人の熟知する所ならん果して然らば英國は何様の手段を用いるとも先ず支那人の失敗を促し其をして早く佛國に低頭せしめ〓くて佛清の無事を招く策略を立てざる可からず策略爰に立て之を實行する方便は種々様々なる可しと雖も支那に對して何様かの難題を言い掛け口實を設け辞柄を握りて一寸も動かず果ては佛國と聯合して咸豊年中の活劇十八番を再演し有無を言わせず北京政府の喉を扼して自國並に佛國の要求に應ぜしめ一擧〓忙に事局を結んで早く〓時の平和に復するが如きも亦其方便中の一ならんと思わるゝなり
英國は右の方便に由て佛清〓國の戰根を断たんとするか其力必ずしも之を能くし難きには非ざる可しと雖も英國は目下埃及の遠征最中にしてごるどん少尉の訃音を報ずる電線尚未だ〓い止まざるにうとるすれい將軍も亦危地に陥りたりとの報知あるが如き有様なれば今の改進〓内閣にては又々渤海に事あるを望むこと能わず此際己に代えて佛國を援け己れの爲さんと欲するところを爲して早く佛清間の事局を結ばしむるものはなきかと窃かに天下を〓睨しつゝあることなる可し然るに今は我國にては朝鮮事變の際に支那人より被りたる不敬損害に對して大に北京政府に談判する爲め伊藤特派全權大使を北京へ派遣し其一行は今方に使命の進次にあり大使の此行たるや我日本人より之を視れば左まで困難なることに非ず我れに被りたる損害不敬あれば行を其箇條を示談し我要求の滿足を得んと欲するまでにして北京政府にても〓〓狼戻に非ざる限りは亦其要求に應じて日清談判爰に平和の落着を得るならんと思考する外なしと雖も英國人等より之を視れば其間に又種々の想像を画〓萬一日清の談判困難なるに至りて双方断然たる處置に出づることもあらば日佛同盟するは必定、〓てく支那を共攻すれば支那も即座に降服して東洋一時の平和を復し英國のごときも〓色を動かさずして商賣上の損害を免るゝを得ん〓と窃に奇想を抱くものなしと云う可からず左れば此度の談判は其成行最も英國人の喜憂に〓し在東洋の英國外交官は申す迄もなく心ある英人民は皆な此談判に注目することならん我日本人より視ては尋常の國〓談判なりと思〓するも文明國民一般の心が此談判に向いて重量を加えたる以上は此談判の當局者も亦日本國の榮辱を目的として内外國人の企望を空うするなからんこと祈るなり