「の多し第一昨日の續」
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時事新報に掲載された「の多し第一昨日の續」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
・・・の書を示さんが爲めに其
・・・は云々佛國の葡萄酒は
・・・の〓〓を擧げて〓〓の
・・・までのことにして英の麥
・・・葡萄酒悉く毒物なり
・・・などは舶来して其賣買の價も
・・・中には〓る可きもの甚だ多きの
・・・たる高價の洋酒に
・・・るのみ殊に日本人の
・・・くして其良否を品評するほど
・・・は所謂文明開化の流行
・・・之を用ひて永年の間に意
・・・是を思ひ彼れを憶ひ〓
・・・に之〓論及したるものな
・・・論ゝに終りて
・・・法を示さんとす
・・・の如くに見せ掛け〓
・・・する〓〓〓〓〓〓の〓
・・・して〓〓なるもの〓〓
・・・ありて〓〓
・・・くして色白〓が故に
・・・と〓〓の白きもの
・・・るが此(以下の上段およそ20行読めず)
るも其他の飮食品には一切之を禁じたりと云ふされば西洋舶來の飮食品には斯る有害物を
混じたるもの少なからざるを知るべし然るに我が國にては未だサルチール酸の使用を禁ぜ
ずして國内の酒造家は之れを防腐の妙義と稱して酒中に混ずるもの多し昨年橫濱司会集塲
にて港内小賣店六箇所の日本酒を試驗せしに〓サルチール酸を含みたる由元來國内の酒造
家は正直にして素より故意に毒藥を混ずる抔の事實なきは勿論なれば或る米國の醫士の如
きは純粹の酒を求めんとならば日本酒に限ると云へる程なれども近年に至りて酒造家が文
明の新法を利用しサルチール酸を有毒と思はずして防腐の爲めに使用するは仮令無心にも
せよ亦咎む可きことなれば我輩は國内の酒造家が此一新報を廢して飽くまで元來の正直を
守らんことを勸むるものなり
右の如く洋酒其他舶來の飮食品は贋製多けれども西洋の事物に心醉して西洋の學理に迂濶
なる人々は其有害を覺らざるのみならず却て之を藥種の如くに思ひ誤り麥酒は胃病に妙效
あり ブランデー 酒は流行病を豫防するなど事實にあられもせぬ口實を設けて愍々毒藥
を飮み甚だしきは醫師にして尚且學理を誤解する者なきにあらず一日或る醫師が我輩の友
人に告ぐるを聽くに君は身体虚弱なれば日本酒は勿論これを飮むべからずと雖ども葡萄酒
などは少々づゝ服用する方却て健康を來すべしと云へり學醫社會の一奇談として聞く可き
のみ抑も我國に斯くも洋酒洋食品の流行して其性質の良否をも問はざるは全く西洋流の盲
信に生じたる弊害にして之を防ぐの法は單に政府の命を以てす可らず社會先達の士人が常
に心を冷にして物に觸れ事に當る毎に愍々その利害を説くの一法あるのみ先年日本に牛乳
の未だ流行せざる時に或る西洋熱心の一紳士が醫師の勸告に從ひ其服用を始めてより月餘
兎角腹合の常ならざるを訴へければ醫師は之を怪しみ牛乳の用法は如何すると問へば毎早
朝と答ふ、其量はと問へば五合を一週間にと答へたるに付き醫師は大に悟り然らば一度に
五合のミルクを買ひ之を七日に分けて呑むか、初日は兎も角も翌日より其ミルクは酸味を
帯ることならん、時々腹痛して下痢することならん、と云ひしに正しく其通りの答へにて
醫師の謦咳一方ならず實に紳士先生の西洋流に呆れはてたりと云ふ是れは二十年前の一奇
談なれども今日の紳士中或は西洋に熱して得々飮食する其品物の大半は何ぞ料らん七日貯
蓄の生牛乳に等しきものもある可し漫に古人の失策を笑ふ可らず唯この輩をして自から發
明せしむるの道は先達の士の忠告諭言あるのみ
正誤 昨日の本欄中四十五行目の草實は草花の誤植