「日本鐡〓會社の工事」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「日本鐡〓會社の工事」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

日本鐡〓會社の工事

日本鐡〓會社の第三區線路中、郡山以北仙臺までの軌條敷設は〓に一箇月以前に工事を竣わりて東京仙臺間の〓絡始て爰に〓じ昨今汽關車の徃復を開き尚お線路中地盤を固めつゝある際中なれば遲くも來十二月の十日前後には東京仙臺間鐡〓の開業ある可しと云えり斯て日本鐡〓會社に於て現今全く其工事を畢りたる線路は第一區品川前橋及上野赤羽間の鐡〓延長八十〓第二區大宮白河間同く八十〓之に今回落成したる白河仙臺間およそ一百〓を合計すれば其總延長二百六十〓にして同會社創業以來今日〓の成功事業即ち是なり回顧するに鐡〓會社が我政府より特許を得て社の組織に着手したるは今を距すこと出入七年明治十四年十一月の事にして當時政府の命令書中にも見ゆる如く同會社は其線路を東京より高崎を經て前橋に取り他の一線は中〓より轉じて白河仙臺盛岡を經〓し靑森に至る〓の鐡〓を建築し其間に〓輸業を營むことを特許せられたる者にして會社〓金募集の上は拂〓の翌月より〓算し毎區建築の落成までは一箇年八朱の利子を下附し毎區〓輸業開始の後も其収入純益年八朱に上らざる時は東京より仙臺までの間は毎區十箇年間仙臺より靑森までは同十五〓年間、日本政府の國庫より其利足を補給せらるゝ權利ある者にして待〓實に優〓ありと申す可し左る代りには鐡〓會社は之に〓〓る義務として東京靑森間の全線路を本書下附の當月〓ち明治十四年の十一月より〓算し滿七箇年間即ち來廿一年の十月までに竣成せしむる都合なるは如何にも至當の責任なりとして世人も亦會社が右の期限内に必ず其工事を全うす可きを信じ、〓來〓〓今日に至りて見れば〓よ〓よ仙臺までの鐡〓も落成し不日開業の式ありと云う次第なれば我輩も一たびは之を聞て喜悦の思いありたれども〓〓で既徃の歳月を屈指したるに島兎早々〓に去て滿六年、殘る一箇年の其間に我々も汽笛一聲客車に投じて瞬時に東京靑森間を徃來する便利を得可きやと熱々工事〓歩の實〓を考え見るに東京仙臺間の落成鐡〓は其距離凡そ二百〓、短きに非ざれども仙臺以北盛岡を經て靑森間にまで至る距離又更に二百餘〓、彼此合して四百餘〓の轍〓なれども今日漸く落成したるは僅か其半數なるに會社特約の期限は〓に七分の六を經由して尚今辛らくも一箇年の歳月を餘すに〓ぎず〓徃六箇年の其間に漸く二百餘〓の工事を〓めたる手際にして殘餘の一箇年に能く他の二百餘〓の鐡〓を敷設するを得るや否やの問題に至りては我輩も其答辨に苦むものなり

政府より保護待〓の優〓なる代りには鐡〓會社も政府に對する義務責任の履行を嚴にす可きは理の當然なる者にして若しも保護のみを私して其責任を全うせざる塲合もあらば政府は其特約を如何にして可ならやは早晩政府と日本鐡〓會社との間に起る所の疑問なるべし政府が會社の爲めに年八朱の利益を保證したる事實に就ても〓に論者中には其説あるを免れず曰く會社〓入の純益一箇年八朱に上らざる時東京より仙臺までの間は毎區十箇年間仙臺より靑森までは毎區十五年間政府より其不足を補給すべしとある十箇年十五箇年の其期限は毎區〓輸業開始以後の年數なるや但しは又特許條約下附の當年より〓算する者なるや例えば白河仙臺間第三區線路工事の如きも會社創業以來〓に滿六箇年を經〓して特約期限早や盡るに垂んとする今日に漸く〓輸業を開きたりとして八朱補給の約束は今より後ち滿十箇年の事なるや或は又去る明治十四年より〓算して補給の期限今後僅に四箇年を餘さざる者なるや漠然たる特許條約の其中には此等の明文も見えざれども假りに爰に説を作りて十箇年十五箇年の年限は孰れも會社免〓下附の當日より〓算す可き者なり其間會社の工事〓まざるより〓て補給年限の減縮す可きは自然の結果にして若し多く保護の澤に浴せんとならば一日も早く工事を捗取らせて營業開始の年月を延ばすに若かざるに會社の計始めより爰に出でざりしは謂ゆる自得の業にして政府は更に其餘の年月まで會社の爲めに國庫の金を投ずる責任なき者なりとは云わば全く夫れ〓の話にして我輩別に掛念する所もなけれども之に反して補給の年月は毎區營業開始の當日より〓算する者にして工事の〓むも〓まざるも其〓の事は利子の補給に關係を有せずと云う論に至りては甚だ理不盡の次第にして其趣は會社、無責任の保護に浴し恰も官恩の甘きに狙るゝ者にあらざるなきや云々と

以上論者の所説、激なる所なきに非ずと雖も其論意鐡〓會社に早く其工事を〓ましむるを望むに在る者なりとすれば我輩も此點に於ては之を賛成せざるを得ず特に萬々有るまじき事とは思えども鐡〓會社が特約七箇年の年月を經〓したるに拘わらず唯漫に依然として論者の謂ゆる無責任保護の官恩に浴せんとする如きの次第もあらば他日其塲合に際して我輩も鄙見を陳する機會あらんと雖も今日に於ては將來尚お一箇年の歳月なきにも非ざれば仙臺以北靑森まで出來る丈に工事を〓ませ會社に於て氣根限り其特約の義務を果すを竣て後右の問題を講するも未だ遲からず今は暫らく論者をも〓め唯〓會社に向て其工事〓歩の急ならんことを祈る者誠に我輩の〓神なり