「讀ジヤパン メール新聞」
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時事新報に掲載された「讀ジヤパン メール新聞」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
讀ジヤパン メール新聞
今を距ること凡七週前時事新報が御用商人と題して今の御用商人なる者は目下樣樣の便利を得て得意なるが如くなれども本來商賣競爭の外に居て得難きの利を容易に得るものなれば斯る商賣の奇相は永久す可きにあらず又その本人の爲めに謀りても餘り香しき事にあらず人の知らざる所に心配も多し入費も少なからざることなれば何卒官の蔭に倚ることなくして獨立の日本商人たる可しと忠告の體にて一編を掲げたりしに昨日に至り横濱發兌のジヤパン メール新聞は之を評して時事の説は甚だ力ある忠言なれども凡そ爰に商人と官邊なるもののあらん限りは此言に從ふ者ある可きや甚だ疑ふ可し好しや斯る空漠たる道理に從て商人等が政府の庇蔭を辭することありとするも甲去り乙來りて御用商人の新陳交代たるに過ぎざる可し又或は世にあらゆる商人が政府に近づくことなきに至らば政府は商人の同盟に由て窘しめらるることある可しと説を立てられたり我輩この評論を一讀するに政府と商人とあらん限り御用商人の止むことなかる可しとは甚だ謂れなきにあらず我日本のみに限らず歐米諸國の政府に於ても其商人との關係は或は我日本國に似たるものもあらんメール新聞も其弊を知らざるには非ざれども人間世界の大勢これを如何ともす可らずと觀念して恕したることならん能く人情に通じたる言にして我輩も正面より一概に異存を張るものにあらず然りと雖ども今の日本の御用商人と官邊との關係は至極入組たるものにして我輩の敢て言ふを好まざる所なれどもメール新聞は果して能く其實を詳にして然る後に尋常一樣の人情論に訴へ之を如何ともす可らずとして觀念したるものか我輩の聞かんと欲する所なり之を喩へば病に治療を施すが如し輕症の胃弱の如きは先づ普通の病として傍より強ひて療法を忠告するにも及ばず云はば大目に見て捨置く可しと雖も其病症の稍や重くして深きものに就ては假令へ忠言の容れられざるを知るまでも一應は之を試みざるを得ず遂に我輩が空漠たる理窟を吐くとまで評論せられたる由縁にして畢竟我輩が國を思ふの婆心商賣上の病症を重く視たるにメール新聞は輕く診斷したるの相違あるのみ又メール新聞の説に商人が政府の庇蔭を辭することあるも甲去り乙來るに過ぎずとは是れも或は然らん胃病を治したりとて或は再發することもあらんと雖ども左ればとて我輩は人の現在の病を見ながら其再發を見越して施療を斷念すること能はず畢竟時事新報の愚直にして此邊は只管メール新聞の諒察を乞ふのみ又メール新聞は世にあらゆる商人が政府に遠ざかりたらば政府は商人の同盟に窘しめられんとの先見なれども世に御用商人なければとて日本の商人は政府の怨敵にあらず苟も賣買に利益の見る可きあらば政府に對して之を賣り又これを買ふことを勉め商人社會自から競爭を生じ以て賣買の本色を呈するに至る自然の道理にしてメール新聞の先見或は中らざることあ〓〓〓日本の商人少なしと雖ども合して一團の商〓を〓〓〓〓に〓して徒に高く賣り安く買ふが如き好手段〓〓〓〓〓は〓可〓〓斯る手段は〓て少數の商人〓〓〓〓〓〓〓〓易からん故に此一點は我輩全くメール〓〓に〓するものなり