「英佛獨三國の太平洋占略」
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時事新報に掲載された「英佛獨三國の太平洋占略」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
英佛獨三國の太平洋占略
英佛獨の三國が〓來太平洋諸嶋の占略に着眼する其理由は〓に一昨日の紙上に説明したれば爰には更に其占略の事實を記して〓來右三國の太平洋に於ける〓動如何を視察する便に供せんとす偖英國は〓に太平洋の南部に廣漠たる属地を占有し濠太刺亞の如きは面積非常に廣くして儼然たる一大陸のみならず天與の恩惠厚くして地味特に豊饒なれば開拓繁昌の望、前〓春如海と云うも可なり且つ其地勢は印度と相對して恰も世界〓商の門戸を成し商賣に兵事に都て英國の利益たる可きが故に今後印度濠洲の發〓〓歩は毎歩英國の勢力を〓し人をして畏れしむる所のものならん又ニウージーランドも〓に全く英國の版圖に歸して其地勢は太平洋の南方特に要害の處を占めたれば本國の東洋政略に關しては最も必要なる農地と稱して可ならん次に赤道に接〓してニユーギーテの全嶋は面積至て廣くして太平洋上屈強の地なればとて今は距る四年以前に嶋の南東部凡そ八萬六千平方英里を占領し殘る所の地は尚〓和蘭の所領たれども要衝の部分は〓に英國の爲めに奪われたれば該嶋に於ける和蘭の主權は今後次第に衰える外なかる可し然るに〓來獨逸が此地に着眼し大に國旗を其一方に樹てんことを計畫してより英人は獨り南東部を占略したるを以て足れりとせずして早く其全嶋を押領せざりしを憾む内〓もあれば早晩右の諸國間にニユーギーテ分割の問題を再發することもある可し抑も和蘭領のニユーギーテは印度の方面に接するを以て蘭領印度を相待て其關係大切なれども英人の占領したる南東部は然らず即ち太平洋面の英領諸嶋とは聯絡の用を爲せども英領印度と相距ること〓きが故に交〓の便は蘭領ギーテの蘭領印度に於ける者に比して讓る所なきを得ざるは英人の頗る不平とする所なり特に獨逸の占領したるニユーギーテの一小部分は商賣上に其要用少なけれども風土健全にして其海岸單に出入に便なるのみならず更に良港多ければ船艦の碇繋安全なるに反し英の領地は斯る利益を缺くを以て必ず他に其不足を償う計畫あることならんと云へり
ニユーギーテを離れて濠洲に〓ずる〓中にソロモン、二ユーヘブリツヂ、ローヤルテーアイランド、ニユーカレドニヤ等の諸嶋ありて軍艦の碇泊には極めて要害なるが故に右の諸嶋は現時未だ全く英領に属せざれども英人は太平洋上に大に爲す所あらんとする今日なれば早晩併呑を行うに相〓なかる可し尚お右諸嶋と濠洲諸嶋との間に併列したる群嶋はオークランド、ロルドホー、ノルフホルク、アヴホン等にして孰れも軍略上必須の地勢なればとて曩に〓に英人の手に〓めたるは抜目なき手段と云う外なし唯ソロモン以下の諸嶋は對し公然其主權を張る能わざるは或は〓憾とする所ならんなれどもソロモン群嶋中のブーゲンウイル、イサベル、シヨワスール三嶋は面積稍廣くして殊に要衝に當るを以て〓頃獨〓と約束して其嶋々に英の威力を行うも差支えなき許諾を得たる由なり此他ニユーギーテの南東に位する數個の群嶋も今日〓に英領に属しニユーヂヨルジヤ、ゴータルカナル、マランタ、サンクリストバルの四群嶋も〓頃又英人の支配を受くるに至れり右の外、其〓傍なるサンクルーズの多嶋海にも漸く英國の威力を現わし此邊は元來佛國の所有なれば容易に犯す可からざるは勿論なれども雙方の談判次第にては或は英領となることも難からざる可し次にニユーヘブリツヂ群嶋は英佛二國の間にて今日互に占略の權を爭う者にして先頃〓に一塲の〓藤を生じたるも當分兩國ともに此嶋に手出しすることなかる可しとて紛議漸く纏まりたれども同嶋實際の權力は佛人の手に在るが故に若しも英人が早くこれに斷念し其報酬としてサンクルーズ嶋の主權を要求したらば圓滑に事局を結ぶ望なきに非ずと雖も然らざるに於ては早晩兩國の間にヘブリツヂ群嶋占略の爭を起すことある可し
フイジー群嶋も今は全く英領に歸したり其地は太平洋支〓線路の要所に在てニユーカレドニヤ、ローヤルテーの諸嶋より更に形勝なれば軍港として之に太平洋艦隊を容るゝには屈強なるのみならずパナマ開〓の後に至らば中央のステーシヨンは此嶋を〓て他に良地なかる可しと云う次にフイジー群嶋より二ユージーランドに至る中〓にケルマデツク群嶋あり是れもニユージーランドの入口としては最も要用なるが故に英國の併す所となりたり右の外チヤザム嶋はケルマデツク嶋の西南に在ちて食糧薪炭の貯蓄塲には有用なるを以て〓に英の所領と爲りカロライン、スタールバツク、マルデン、フアンニング、ベンリンの諸嶋も〓頃英人の有に歸し凡そ太平洋上要害の地は英國に占略せられざれば佛獨二國の併呑する所と爲り獨立自主の群嶋とては今は殆んど其數を絶つに至れり而してカロライン以下の諸嶋中、フアンニン嶋は周圍僅々三十英里なれども土地豊沃にして料水の便あり赤〓以北五度に位し布〓より殆んど西南に當る要嶋なり又ベンリン嶋は周圍は五十英里、大船を入るべき良港なけれども小船の碇泊は自在安全なるのみならずバンクヴアル、ニユージーランド間航路の中央に在るを以て今後商賣上有用の地となるに疑なしと云えり (未完)