「書〓郵税」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「書〓郵税」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

書〓郵税

我が政府は去る八月七日を以て郵〓條例中の一部分を改正し第三種郵便物(毎月一回以上發行する定時印刷物其附〓)の郵税を半〓し第四種郵便物(書籍、帳簿、各種の印刷物、寫眞、書〓、繪圖、罫紙、營業品の見本及び雛型、農産物種子)の重量八〓毎に郵税金二錢なりしを三十〓毎に二錢に改めて來る十月一日より改正〓りに施行する都合にして此擧たる我が郵便事業上〓來の一大美事として我輩は〓て其功德を稱揚する機會ある可しと信ずるが故に今暫く之を〓き爰に取〓望〓の人〓より申せば此改正を延て第一種郵便物即ち書〓の郵税に及ぼし大に之を改正する〓びに至らざりしを〓まざるを得ず抑も現今の郵便税は書〓重量二〓毎に金二錢を課する法にして我が金二錢の價額は米の二仙、英の一ペンス、佛の十サンチーム等と相對するが故に時の當局者も價額の比例を右等に取りて二錢と云える課税法を定めたるものならんと雖ども此二錢に對する重量を僅々二〓に限りたるは聊か不可思議なるが如し盖し我が郵便法は西洋諸國の制に據りたる者にして諸國の郵税重量は多少の相〓ありと雖ども今英國の例を以て申せば内國書〓重量一オンス(我が七〓五分強)未滿は一ペンス(我が二錢六厘強)一オンス以上二オンス未滿は一ペンス半、二オンス以上四オンス未滿は二ペンス是より以上二オンス毎に半ペンスを加える法にして英國にては二錢六厘を以て七〓五分の書〓を郵〓することを得れども日本にては八錢を拂わざる可からず且つ我が郵便税制には重量の〓加するに〓い其郵税を〓〓する法なきが〓に英國にては右七〓五分の重量を倍したる十五〓を凡そ四錢にて郵〓すれども日本にては十六錢を拂わざる可からず我輩嘗て日本と英國との生計を比較するに英國にて一〓間の諸入費と我が一箇月間の〓用と正に相對する割合にして日常生活の度合より申せば我が郵便税の如き彼れに比して幾分か廉價なる可き筈なるに實際然る能わずして寧ろ反對の割合を呈するは我輩の毎度〓憾とする所なり然りと雖ども彼我の形勢固より相同しきを得ず郵便物の多寡の如きも雙方異常の相〓あるが故に〓常書〓の郵〓料を金二錢と定めたるは實地算勘上より來りたる數なりとして暫く〓き其重量を僅々二〓と限りたるは如何、日本古來の習例にては書〓に用紙を〓撰して丁寧なる用意を示すが爲には或は彼の奉書紙を用い執筆も亦心を用いて墨黒々と健腕を振い雲〓龍蛇の字跡に由りて人品素性を輕重する程の始末なりしが故に手紙に紙面を費すこと彼の西洋徃復書〓の常に蠅〓字を横列する者の比に非ず且つ〓年に至りては〓袋の用も廣まりたれども徃時は之を略儀と見做し〓筆の手紙を封紙に包みて鄭重に目方を加えたるが故に凡そ一封の書〓に就き重量五六〓は〓常にして從來日本の徃復書〓は西洋書〓に比較して割合に嵩張りたるものゝ如し斯かる慣行ある日本社會にてありながら郵便條例を制定するに當り二〓云々の算勘は甚だ不審なるが如くなれどもつらつら此郵便法の世に出でたる時代を按ずるに明治の初年文明風の吹き廻わしにて總べて舊弊を一掃し事々物々簡單を悦ぶ人〓は徃復文書の體裁までに及び御家流の〓筆も癈れて前略云々の短文を尚び封紙に代わるに〓袋を以てするは勿論、此頃よりして彼の雁皮紙を用いる者を〓し薄紙細字の短簡を手輕く一片の〓袋に封じて其用を〓する趣向を成したれば當時郵便事務の局に當りたる者も〓便手紙の流行に〓れて書〓の重量を二〓と定め初例一出復た之を怪しむものなく因襲の久しき今日に至りて未だ其改正を見ざるものにてもあらんか斯の如く重量を小額に限れば二〓以上の書〓を作りて其書〓の目方に〓い二錢又二錢大書禁止税を課せらるゝことを恐れ人々相戒めて薄紙細字の方を撰び文學上より云うときは自然文章の美を〓い筆跡の妙を損する趣なきを得ず左なきだに社會の〓歩するに〓い人事はますます複雑して〓信應答の箇條を〓し一筆啓上火の用心〓まん泣すな馬肥せなど云える短辭を以て今の人事を言い盡くすこと思いも寄らざる次第なるが故に我輩は我郵政の當局者が先般第三種第四種郵便物の課税重量を改正したる其主義を布〓して〓て第一種郵便物即ち普〓書〓に及ぼし人事の〓歩に伴いて書〓郵〓の便利を謀り一時偶然に定まりたる彼の二〓書〓の不便窮屈を除かんこと取〓望蜀の〓に於て偏に希望に堪えざるなり