「政府且つ切迫することを休めよ」
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時事新報に掲載された「政府且つ切迫することを休めよ」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
我輩は前日の紙上に志士且つ切迫することを休めよと題して天下有志の士人は政治を以て唯一の國事と思ふことなく學問商賣等何れも立國の要素なれば之に從事して身を立て家を興すこと難からずとの旨を述べたるは固より士人の爲めにしたる言なれども又一方より見れば社會の風景斯くありてこそ當局の爲政者も政を爲すに便利にして恰も其運動の餘地を得ることなれば心を靜にして社會全面の大勢を通覽し此種の士人が學問商賣等の門に入るの道をして易からしむるの法を講ずるは今日の急務なる可し竊に案ずるに曩に憲法を發布して今年は國會開塲の期に臨みたれども内閣は斷じて政黨内閣に非ずとの旨は過般内務大臣の訓諭にも見えたることなれば國會議事の如何に由て政府の更迭ある可きに非ず相替らず今の閣員を以て持續するか、假令へ或は二三四五の新陳交代あるも其交代は國會の勢力に由らずとの意味なる可し盖し國に始めて民庶の會議を開き俄に勢力を得て俄に内閣を一掃し新陳劇變して面目を新にするが如きは頗る危險なることなれば兎に角に數年の安寧を買ふが爲め責任内閣の正則に達するまでは徐徐に歩を進めて政府と人民と恰も歩合ひの姿を爲し相互に調和せんこと我輩の切望する所なり其法如何と云ふに唯政府の人が自から會釋して名利の光明を薄くするの一事に在るのみ商賣國にもあらず學問國にもあらず純然たる政治國と稱する日本の政權を執るからには國中最上の名譽も利益も之を專有して其光明を耀さんとするは至極尤もなる次第にして深く咎む可きに非ず是れぞ彼等が畢生の志願を遂げたるものならんなれども名利の熱心は獨り政府中に流行するのみならず彼の所謂有志の士人等も大抵皆日本士族の子にあらざれば平民の士化したる者にして正しく政府の人と種族を同ふし一種特色の氣風を帶びて官途の名利を好むこと甚だしく己れ自から之を得ざれば他人の名利を羨むの情に堪へず其熱度の高きは俗に云ふお互ひの〓なれば爰の處は在朝の人人も篤と勘辨して、去り難き俗氣を去り、忘れ難き痴情を忘れて政府の役は唯政事を行ふに在るのみと覺悟を定め商賣工業學問等の事に付ても國法に關係する部分の外は一切これを人民に任せて干渉せざるのみか冥冥の際に官邊の勢力を假すが如き積弊を除き恰も世間と斷〓して所謂御用商人御用學者の輩を擯け扨在朝の本人は俸給を薄くし族爵位階等を棄て素朴殺風景に生活すること在昔の田舍武士の如くにして天下羨望の光明を撲滅せんには爲政の運動自由自在にして實際の政〓は今日に百倍し國會の開塲にも人民の〓訴を聞くことなくして政黨外の内閣を維持し以て數年の安寧を買ふこと難きに非ざる可し世間富豪の商家にても能く其家を調和して風波なからしめんとするには〓人自から粗衣粗食して〓飾〓體を用ひず〓人等と苦樂を共にし〓〓〓其〓〓の念を斷絶せしめ然る後に命令も行はれて商機の掛引自由なりと云ふ〓し主人の目的は唯商賣の利益を得るに在るのみなれば家人等が一家商賣の〓〓を犯さざる限りは自身の私に〓少〓〓〓〓〓自由あるも〓を犧牲にして商家の大目的を達せんとするものなる可し左れば今の政府の當局者も政治家の大目的たる政權を〓りて〓然たらんとならば〓その〓〓のみを〓〓て〓〓の〓如〓〓自由を〓ぶこと〓の商家の主人の如くすること〓〓なる可し又一方には民間の商賣學問に〓に〓〓を附與して十人以上の入る可き〓〓を廣くするの工風もなかる可らず今日の〓にては銀行又は諸會社の書記に〓圓の月給を得る者ありても其身分は〓〓商人にして月給三十圓の小吏に逢ふても〓て貴賤の差あるが如し謂れなきの甚だしきものにして等しく勞して錢を得る者にてありながら其錢の出處が政府なれば何故に世間に威張る可きや人間交際の大缺典と云ふ可し其〓學者にても富豪にても苟も政府の人に接するときは常に相當の禮遇を受けたる者あるを聞かず故に此〓は家に巨萬の財を私有し身に拔群の智識を抱きながら卑〓にも政府の人に近づいて其餘〓を〓り以て〓會の交〓體面を維持するに非ざれば〓じて官邊と絶交して一身の位を〓つのみ畢竟政府〓〓の〓〓に由來する〓のものなれば當局者は能く此事〓に注意して民間の商賣學問等を輕輕に〓ることなく其人に對しては常に〓意を表し〓〓〓をして學事〓〓に入るの志を〓〓せしめ之に入て之に安んずるの仕〓けなかる可らず、人各各〓長あり〓家に百萬の財ありて政府の人には是れなし學者に才學智徳ありて政府の人は迚も之に及ぶ可らず今その無を無とし其及ばざるを及ばずとして之に下るのみ誠に簡單明白なる理由にこそあれ斯くすればとて政府の人に何の損する所あるや唯少しく獨尊の俗氣〓情を害するのみなれども之を害すると共に其本職たる政治上の運〓は常に切迫ならず悠悠綽綽の際に〓〓を〓して〓を百世に傳ふ可し亦愉快ならずや若し或は然らずして名利の霊〓たる政府の一局部に光明を〓し公然これを示しながら之に近づくを得せしめず衆〓者の面前に獨り美食して頓着することなく犯さんとする者あれば不條理なりとて〓く〓〓を〓き以て自から守らんとするが如きあらば〓〓の〓〓など〓より〓〓可きにあらずして國會も〓唯志士〓言の〓〓たる可きのみ