「交詢社第十一回大會」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「交詢社第十一回大會」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

交詢社は去る二十七日其第十一回の大會を兩國中村樓に開き例の如く常議員の改撰をなしたる後米人マコーレー氏并に福澤先生の演説あり終りて樓上にて懇親の宴會を開き百數名の社員交も交も歡を盡して退散したりと云ふ願ふに同社の設立は今を去ること〓に十有一年その間時に盛衰なきにあらずと雖も能く社運を維持して以て今日に至りたるは决して偶然ならざるを知る可し世に某會又は某社と稱するもの少なからずと雖ども或は一部分同興味の人の集合を旨とするか或は一科專門の學術技藝を目的とするものにして官民の隔なく農工商の別なく學者技藝家と云はず政治家論客と云はず苟くも社會の上流に位するあらゆる種族を網羅して遺す所なきは獨り交詢社の特色なりと云はざるを得ず左れは其目的たる所謂知識を交換し〓務を諮詢するの■((「黒」の旧字体のれんがなし+「占」)+れんが)に於て裨益する所少なからざるは勿論なれども我輩の更に喜ぶ所は昨今世上には政黨の沙汰盛にして或は氷炭水火相容れざるものもある中に交詢社は前述の如く各種各類の人人相混ずるにも拘らず絶えて其〓〓を被らざるの一事にして現に當日大会後懇親會の席上には今の政黨に名を列し而も反對に立つ所の人〓も少なからざるに互に肝膽を打拔き杯酒の間に談笑する一種靄然の氣象は自ら之れ交詢社の餘徳にして世間に其類を見ざることならん我輩は今後社會の人事ますます繁多なると共に交詢社の用ますます廣く其餘徳の及ぶ所もますます大にして隨て其社運のますます隆盛ならんことを〓望するものなり