「衆議院議員の撰擧」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「衆議院議員の撰擧」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

衆議院議員當撰の結果は何れ兩三日の紙上に報道し終る事を得べし葢し今回の結果に就ては身親ら政治界に奔走する人人の中には俄に得意を催ほすものもあらん又は俄に落膽するものもあらん喜憂得失、樣樣なることならんと雖も要するに一個人銘銘の私情に過ぎず我輩は唯其人人が最初の撰擧に目出たく當撰したる其榮譽を祝賀せんとする者なり顧ふに今回の撰擧は各地方ともに隨分騷騷しくして中には往往目に餘る程の振舞もなきにあらざりしと雖も之は競爭上に免る可らざるの弊にして深く咎むるに足らず况や其事の終りたる今日に至り既往の事を云云して怨を結ぶが如きは男子の事にあらざれば敵も味方も共に往時を一夢に附し更に未來の新天地を樂む可きのみ然り而して其當撰したる人人は既に無責任の政談家にあらずして嚴然たる一國の代議士なれば自ら顧みて其責任の重大なることを思はざる可らず殊に初度の議員たるものの〓論擧動は後來議會の慣習を養成するに非常の關係を有す可きは勿論、東洋の日本國に國會開設の擧ありと聞き其結果は如何あらんと注目する所の外國人は初度の〓塲の有樣を以て忽ち之が判斷を爲す其判斷は取も直さず外國に對して日本の輕重を爲すものなれば撰ばれて議員たるものは國の爲めに自ら重んずるの覺悟なかる可らず我輩も亦今後國の爲めに其議論擧動に就き時時論ずる所のものある可し