「紳商の性質」
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時事新報に掲載された「紳商の性質」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
紳商の性質
立國の主義を尚商と定めて之を實際に行われんとせば官〓民卑を除かざる可からず官〓民卑を除かんとせば官邊の人が時勢を悟り自家の威權を犠牲にして先ず商賣人を重んじ〓て其事を重からしめて世上の榮譽も之れに歸し有爲の人才も之れに集り人と事との品位を高めて尚商の本色を現わさしめざる可からざれども彼の官邊の人の如き内々官〓民卑を利して其威〓を弄び〓榮を〓わんとする者にして〓ねて恩顧の商人輩が〓〓如として鼻息を窺い又〓〓を掃わんとすれば之れを窺い之を掃う者が一方に不愉快を〓ぶ程、一方は其愉快を感じて俗吏畢生の大得意は殆んど見る可からざるものならん左れば我日本國にて實地商人の品格を高め商賣の事に重きを置きて所謂尚商立國の功を擧げしめんとせば商人中に〓〓〓を生じ此有志家が發起して目的を一にし〓動を共にし商業上の實權を握りて獨立に商業〓會なるものを成し嚴に此〓會を守りて他〓會人の容〓を許さざる程の覺悟なかる可からず即ち官〓民卑を破りて商人の品格を高むるには邊に他力を恃まずして自力に依頼する外なしと雖ども扨て我商人〓會にて斯る自動力を振〓して〓會に重きを置き可きものは果して如何なる商人なるか代々の老舗伊勢屋何右衛門など稱し古流商人の筆法を守りて身に新教育を受けず戸外公共の〓〓〓ては初めより其利害を知ず、知らざるが故に無頓着にして力を致す念なき者は固より共に論ずるに足らず然らば〓來世上に出でゝ往々商賣の新局に當り時に〓〓〓呼ばるゝ輩は如何と云うに此輩の中には活〓有爲のものも多く公共の事も共に語りて全く解せざるに非ざれども其風儀上に於て〓ならざるものあるが如し何か一利を求めんとすれば先ず官邊の〓に〓因し〓〓と云い特約と云い甚だしきは御慈悲と云い尚お甚だしきは内々〓〓の話を聞き先きに〓〓りて投機を試る〓あれば或は小資本を以て不相應なる大商業を營み〓〓〓〓〓〓〓なれば〓ねて身代〓〓覺悟する者もあり〓い〓〓何々商會と稱するも其實地商業上の見〓は〓〓〓〓〓〓〓にして〓〓〓と何々の約束あり又は何〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓むもの甚だ多し即ち商法〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓に〓〓あるが爲め他の健全なる商業をも噛み倒して其獨立を妨ぐる情實なきを得ず凡そ此種の商人が世上に紳商の名を博して商業の要路に立つ間は益々商人の品格を下して官人の威權は益々伸び官〓民卑を一掃するなどゝは思いも寄らぬ事なる可し然るに爰に或人の説を聞くに〓來我日本國は政治上の變化頻繁にして之に關係する商賣以下萬般の事〓を變化するもの多く例えば從來紳商輩が特約と云い保護と云い政府に求むる所あれば先ず當局者を厚〓して其甘心を得ることを勉め深く要求の主趣を説明する必要もなかりしかば無學無識の素町人が一朝偶然の〓故に由り紳商など稱せられたる者も少なからずと雖も〓々國會開設して商政上の金策の如き殊に其評議を經べきに就ては所謂紳商〓中にて保護特約などを請う者は政府の當局者に説くと同時に國會議院にも〓附きて論議を上下せざる可からず斯くて多くの政治家に接し士君子の間に出入して事理を辨析説明するには一〓りの經濟論を心得、實素大體の智見を具えざる可からざるが故に酒色を挟んで人に接し〓問を學んで歡を〓えんとする流儀の者は次第次第に跡を〓めて所謂紳商の性質に〓からず一變更を生ずべし云々と云い蓋し人文〓歩すれば〓會は一種の〓明體と爲り縱横表裏に見〓して政治家の私に欠〓あれば反對黨派に弾劾せられ御用商人に密曲あれば忽ち傍觀者の指斥を蒙り威〓を恣にせんとする者も又これを假て自から利せんとする者も自然に世間の體裁に〓られ、一般人の明密なるが爲め周圍の事〓に〓られ止むを得ずして自から其〓横を愼み、其卑屈を愧じ、官吏紳商私に相對して私に事を談じ私に奇利を利するが如きは〓去の夢に属して之を再びす可からず、官人〓に私恩を賣る〓なければ從來之を吸〓して紳商風の〓〓を張り高きに據りて放吟したる者も露に渇する寒〓の秋風〓〓を感ずると一般、時勢を悟て漸く其影を〓むるに至る可し自然の勢なるが如くなれども此事實果して實際に行われ頓に卑屈紳商を一掃して日本に眞成の獨立商を出し官邊に〓ず〓榮に〓せず自から其品格を高尚にして商賣の事に重きを置き自動力を以て尚商立國の實を擧ぐることを得べきや如何、是れ我輩が世人と共に敢て講究せんと欲する所なり (以下次號)