「政費〓〓」
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時事新報に掲載された「政費〓〓」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
政費〓〓
政費〓〓の四字は今の政界の〓語にして世人の常に口にする所なれども其意義に於ては少しく明了ならざる憾なきにあらず聞く所に據れば目下各種の政黨政〓又は議員の〓中は國會に出る用意として夫れ夫れ政務の調査に從事し昨今は其調査も大抵了りたる由なれば議塲の言論に一段の〓明を見るは今より期す可しと雖も今日の事〓より推測するに其結果として議塲に勢力あるものは先ず政費〓〓の説なりと想像せざるを得ず然れども其政費〓〓とは果して如何の意味なるや我輩は豫め其説を聞んと欲するものなり抑も政府の經費は經濟學上に所謂不生産的の消費にして之れが爲めに國に一物を生ぜざるのみか動もすれば冗費を免がれざる常にして局外の目より見るときは十分に〓〓を加えて可なりと思うものもある可し即ち民間に〓〓論を見る所以にして我輩に於ても異論なき所なれども其所謂〓〓とは政府の〓費中にて無用の冗費と認むるものを〓し之れを移して有用の費に供せんとする意なるか抑も又今の政費の實額を以て國民の負擔に不相當なりとし大に之を〓ぜんとする意なるか論者の〓〓もしも前者にあらずして後者に在りとすれば自から是れ一大問題にして輕々に〓丁す可きものにあらず一國の政費は人民の實力に相應す可きものにあらず一國の政費は人民の實力に相應す可きこと勿論にして今日我國の有樣にては成る可く其負擔の輕からん事こそ願わしけれども又一方より考えれば今の文明立國の要務は〓々多端にして兵制なり法律なり教育なり外交なり其他諸説の政務に何れも費用を要せざるはなく面も其〓〓擴張を期せんとするには政費の多きも亦止む可からず從來政府の施設中には或は事〓の爲めに不急の事を急にし或は人の爲めに事を設けたるなどの意味もなきにあらずして隨て冗費の嵩むを致したる事もあらんなれども大要は立國の要務に〓られ止むを得ざるに出でたるものも多ければ若しも今の立國の有樣にして大に其面目を變ぜざる限りは如何なる人物が政府に出るも著るしく政費の〓額を見るは中々難かる可し左れば世上にて唱える〓減論の意味にして今の政府に向て〓費を責め不急の事を略して不要の人を〓じ簡易素朴を旨として〓飾浪費を省き其〓〓したるものを轉じて之を有用の費〓に向け財政の根本を整理して政務を一新する趣旨なれば頗る時弊に〓したる處置にして實際に差支もなかる可しと雖も若しも然らず歳入の實額に對して單に〓〓を加えんとの〓〓ならんには議〓して容易ならず政府の歳入を〓して人民の負擔を〓ずるは何人を望む所なれども之を實行するに當りて第一に考う可きは日本立國の體面にして若しも今の歳入の實額を〓ずるも目下渡來毫も差支なき見〓ある以上は八千萬圓を〓じて六千萬圓と爲し又三千萬圓と爲すも可なりと雖も前にも〓たる如く立國の要務は甚だ多端にして其多端なるは今後とても同一樣なる可ければ其有樣を今の儘にして獨り費額の〓少のみを謀るは實際に於て頗る困難なりと云わざるを得ず且又人民の負擔を〓ずる一段に至りても之を行うは敢て難きにあらざれども其結果は果して如何なる可きや今の政府の歳入の二分の一もしくは三分の一を〓ずることを得ば甚だ妙なれども斯る大〓〓は俄に望む可からざるが故に當分の處は先ず幾百萬圓位は止むる事とせんか民生の實際に差したる潤澤も覺えずして扨後年に至り一朝政費〓加の必要を感じて之を人民の負擔に課する止むを得ざることも出來せんには其額は假令へ僅少なりとするも租税〓加の聲は忽ち人民の耳に反響して苦〓の容易ならざるものあるは從來の經驗に徴しても明白なる所なれば今後〓來の目的なくして漫然〓〓の説を爲すは〓して智者の事にあらざる可し然りと雖も政費〓〓云々は年來流行の説にして殊に〓來政務調査の結果として其方法の如きも必ず見る可きものあらん畢竟するに事の難易利害は方法の如何に在るものなれば我輩は一日も早く其説を聞んと欲する者なり