「衆議院議長」
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時事新報に掲載された「衆議院議長」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
衆議院議長
衆議院にては一昨日議長の撰擧を行いたるに中嶋信行津田眞〓、松田正久の三氏多數を以て候補者に擧られ〓問の上昨日を以て最多數の中嶋氏が愈々勅任せられたり抑も議長撰擧の事に就ては〓日來客黨派の競爭頗る盛にして銘々自黨の中より議長の出でん事を勉めたる由なりしが今中嶋氏が其中に於て最多數の投票を得たるを見れば以て其名望の〓院中に重きを知る可し今の議院法に就て議長の職掌を問えば各議院の議長は其議院の秩序を保持し議事を整理し院外に對し議院を代表するとありて其責任は極めて重きものなれば氏の負擔も亦大なりと云わざるを得ず議院を代表して院外に對すに内閣には山縣伯其の他の諸氏あり貴族院には伊藤議長の在るあり何れも先輩故老の人にして氏が從來の經歴を以て之と對等の地位に立たんとするは其身に取りて容易なる事にあらず又その院内の秩序を保ち議事を整理するに就ては必ずしも抜群の材能智力を要するにもあらざれども一種特別の熟練あるにあらざれば叶わざる事柄なれば何れの〓より〓るも氏の負擔は重大にして心配少なからざる尚ほ其上にも心事淡泊にして洗うが如く苟も偏頗の沙汰なくして公平無心なるは議長の資格に缺く可からざる所のものなり氏も今日までの處にては何れの黨派にか名を列したる事ならんなれども〓に議長の任に就きたる上は一黨派の人にあらずして衆議院の議長なれば其心事の一轉す可きは無論にして議員の人々も其黨派の如何を問わず單に之を議長として〓ること肝要なる可し又氏が今回の當任は〓てより臭味を同じにしたる政友の人々にとりて此上もなき滿足ならんと雖も此滿足は唯氏の榮譽を賀して之に滿足するのみ自黨の中より議長を出したりとて之に由りて黨派〓長の觀を爲さざるは勿論、政談の一事に關しては却て議塲に中嶋氏の如き〓々たる一員を失いたる〓憾こそある可けれ左れば氏の出身は何れの國よりするも何れの黨派よりするも〓に議長の任に就きたる上は淡泊なる無偏無黨の議長を以て自から居り滿塲各議員の觀る所も斯の如く氏が〓生の政友も亦斯の如くならんこと我輩の呉々も希望する所にして此希望の空しからざるは衆議院全體に行わるゝ政治上の公德に訴えて敢て之を信ずるものなり