「改正度量衡草案(昨日の續)」
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時事新報に掲載された「改正度量衡草案(昨日の續)」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
改正度量衡草案(昨日の續)
第三名稱命位 専ら簡明を主とする論者中には度量衡の名稱中其名を異にして其實を同じくする地面の歩と坪の如きは何れか一を存して一を癈すべしと云うものあれども坪は從來市街の宅地家屋建築等の塲合に唱え十百千萬の十〓法にて〓み、歩は耕地、山林農家宅地等地券薹張上の公稱に用いて〓、反、町に〓み兩者共に俄に癈すべからざる事〓あるを以て改正案の如く併存するを穩當とすべし、而して其名稱を同じくして其實を異にしたる權衡の斤は法律上百〓と一定し尚取引の性質又は土地の習慣に依り之を百二十〓とし、若くは百六十〓とし又二百〓とするも妨げなき旨を示したるが如き又現行絛例にては法律上曲尺と鯨尺との兩本位あるものなるに改正法は前〓に〓したる如く現行の曲尺を尺と單稱して之を本位とし鯨尺は布〓を度る時に限りて之を用いるものとしたるが如きは共に名稱命位の改正宜しきを得たるものと云う可し
第四メートル法度量衡との比較〓法 メートル法度量衡器の使用は薬品の調合、鐡〓〓河の工事、〓船及建築等、式を西洋に則る事業には〓來一般に行われて内國に之を製〓するものさえ少なからずと雖も現行絛例にては其取締法不十分にして動もすれば不正損害の媒介たるのみならず外國貿易の業漸く擴張の際寸尺斤量に關する彼我の商品中取引上換算を要する塲合少からざれども一定の基本明確ならざるを不便なりとせしに改正案は其第五絛にてメートル法度量衡との比較〓法を一定し且其器物の製作、修覆、版賣、使用等の取締法の一〓歩として見るべし
第五度量衡器の檢査 現行絛例に於ては度量衡器は製作の際合格、不合格を檢して發賣を許可するのみにて別に使用品を檢査する〓十分ならざるが爲め製作發賣の時は正確なるものも使用に從て或は磨滅し或は損敗して漸く差狂を生じ〓に不正を導く一因たりしに改正法は深く此邊に注意し其第十三絛にて度量衡器の製作者、修覆者、販賣者及使用者は取締の爲めにする當骸官吏の臨檢を拒むことを得ずと規定して商工業者が物品賣買に用いるものを隨時檢査するのみならず第十絛の末項にて官署、公署、官立、公立の諸建設塲及貧院病院等にて賣買授受及證明の爲めに使用するものも總て檢査の下に在らしめ更に第十六絛に於て差狂を生じたるものと知て之を使用したる者を罰する法を設けたり、度量衡の〓亂を防ぐに肝要の取締なるべし
第六製作賣捌の〓業 現行絛例は度量衡製作人と賣捌人とを區別して〓業を許さず兩者の〓むべき利益の割合まで規定して粗製に流れず高價に失せざる樣〓意したれども當業者の手數煩わしくして不便利なる上に營業の權利漸く賣捌人の手に歸して製作者は掛引上常に賣捌人に致され勢品物を粗末にし製費を省きて其同業者と廉價を競うに至り實際の結果は却て粗〓を促がし度量衡器〓亂の原因たるに〓ぎざるが如し改正案の第九絛にて製作賣捌の〓業を許したるは蓋し是れ十餘年來の實驗に徴して以上の弊を〓けんとするに外ならずと信ず
以上列〓したる所は現行絛例と比較して改正案の〓歩を表し立案者の〓意宜しきを得たる重なる箇絛なるが其他附則第十八絛に於て從來度量衡製作賣捌の免許を得たる者は更に免許を要せず本法の規定に從い其營業を繼續することを得せしめたるが如き又其第十九絛にて從來の度量衡器も改正法施行後三年間は使用を許し且同期内に改めて改正法の檢定を受くるものには其料金を徴せざるが如き共に人事に〓〓したる政策にして我輩の意を得たる所なり、之を要するに此改正案は大體申分なき出來にして格別異議を容るべき重要の箇絛なきものなれば貴衆兩院ともに著るしき論難を見ずして可〓すべしと信ず、但我輩の當局者に向て深く望む所は本案は唯度量衡取締上の大綱法に止り未だ以て本法改正の〓目を盡したるものにあらず農商務省大臣の行政權内にある度量衡器の種類、其形〓及物質を定め製作免許に關する年限、人員、身元保證金〓に其他の制限を立つる等その細目こそ法律實施の目的を全うすると否とに關する大切の事柄なれば其施行細目、度量衡器檢査規則、同製作規則等の編成には更に一層の〓意を怠らず綱目共に完璧を得せしめんことこそ願わしけれ尚お〓目の件々に就ては〓て紙上に開陳する所あるべし (完)