「歳計豫算議案に就て一言」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「歳計豫算議案に就て一言」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

歳計豫算議案に就て一言

帝國議會に於て重なる議案は申す〓もなく歳計豫算案にして議論の最も盛なるも亦この案なる可し我輩は議會が之を議するに當り聊か政府議會雙方の人々に〓意を乞わんとするものあり顧うに經費の〓加削〓に渉る些末の議事を外にして此案に關する議論の最要〓は彼の憲法第六十七絛に關する〓定の歳出云々の問題ならんなれども此問題たる今の論者の如く互に文字の數を根據として喧しく論ずれば如何にも重大なる疑問にして權限の伸縮消長にも關する大事件の如くなれども雙方ともに能く其心を〓にして之を普〓の〓に訴え事實の上より考えたらば實際には左まで六箇しき事にもあらざる可し政府が〓定歳出云々の解釋とも見る可き會計〓則なるものを發して固く其區域を限りたるは恰も一種の藩〓を設け是より以内には一切立入る可からざる禁制を置きたる觀なきにあらざれども事實に於て政府に如何なる懸念ありて斯る藩〓を設ける必要ありや抑も政府の歳計は立國の大本なれば漫に加除〓〓して實際に差支あるは勿論なりと雖も〓に議會を開き立法の權を會に付したる上にて種々の藩〓を設けて之を〓束するは〓して得策と云う可からず盖し憲法の文字は〓呼として明なりと雖も若しも普〓の〓を離れ單に理論の一〓より見るときは人々其見解を異にして政府にては斯く斯くなりと解すれば議會に於ては云々なりと論じ去り漢學の書生が銘々の見を以て經書を註釋すると一般異論百出到底歸一の望はなきのみならず假りに政府の見解は愈々動す可からずして議會の議權は僅に〓定歳出云々以外に限るものとして扨其成行を想像し事の極端に至れば甚だ難澁なるものあるを見る可し即ち雙方の感〓相反し一方は其見解の藩〓を密にして一歩も立入ることを肯んぜざれども一報は其外に於て縱横無盡に切り廻ることもあらんか例えば政府は豫算と名づくる一種の人體の手足を抱て一心に之を保護しながら其の手足の指をば他の切り去るに任ずると同樣無指の手足は手足の用を爲さざして一個の人間を癈殺するに〓ぎざるのみ事の成行斯の如くにして國に益ある可しとは我輩の信ぜざる所なり若しも今の國民が幼稚にして共に事を談ずるに足らずとすれば其〓の事にして國會の開設など誠に無益の談なれども實際は然らずして議會も〓に開け立法部と行政部とは憲法上相對して一國經綸の事を行う大任に當るものなれば互に大人〓して調和を失うが如きことある可からず今の〓定歳出云々の問題の如きは雙方ともに空理を根據とする水掛論にして畢竟小兒の戯に類するものなれども一國の輕綸は〓して小兒の戯にあらざれば雙方ともに眼を實際に〓ぎ之を人間の〓〓に訴えて圓滑の落着こそ願わしけれ議案の項目に就ては我輩別に異見を〓べず唯衝突の不幸を見ずして無事に議會の〓〓を〓るのみ