「官立學校獨立策は如何」
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時事新報に掲載された「官立學校獨立策は如何」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
國に公立の小學中學あり小學中學の上には官立の高等中學大學あり小學より中學に入り中學より高等中學に入り更に大學に入るの順序にして秩序井然毫も紊るゝことなく殊に大學は國家の人材を養成する所として之に重きを置き惜氣もなく莫大の國庫金を投じて年々無數の學士官吏を造出し又高等中學も大學に入るの豫備門なればとて是れ又少なからざる國資を投じて其維持を謀るは今日我官邊教育の仕組にして其體裁は甚だ美ならざるに非ざれども之を國〓の實際に徴するに獨り教育のみに重きを置て莫大の資金を支出するは今の日本國の經濟に於て不都合ならざるか將た其他の事業に割合して不釣合ひならざるじゃ或は〓會の發達幼稚にして一般の人心教育の何物たるを知らざる時〓に於ては政府の干渉を必要とする塲合もあらんと雖も識者の眼中には〓に教育過度の弊害を認識する今日に政府が官立學校の維持に汲々として曾て經濟上經世上の計に思ひ至らざるは決して其當を得たるものと云ふ可らず即ち世に官立學校云々の談ある所以なり然らば則ち今の官立學校は如何す可きやと云ふに我輩の所見に於ては之を全廢して差支なきを信ずるものにして苟も國に人材の必要あれば法律家なり政治家なり若くは技藝家なり國中に之を製造し之を供給するの塲所なきに非ず即ち今日我國學問教育の發達は十分に其需用に應ずるの餘裕あるものにて最早官立學校を待つの必要あるべからず此〓に於ては敢て差支なきことなれども又一方より考ふれば官立學校の由來は〓に久しきものにて從來の成跡に徴すれば教育學問に〓uしたる所決して少小ならざるのみならず單に此一〓より見るときは今後と雖も其〓なきに非ず唯その教育の高尚善美なると共に國の資金を費すこと莫大なる其費用の〓に就て苦〓あるのみのことなれば若しも其教育法を大に變ずることなくして一方向て世間の苦〓を免るゝの方便あるときは我輩は寧ろ是種の學校を保存するの要を見るものなり故〓〓〓〓〓の如きは此に見る所ありしにや大學の〓〓に〓〓〓基本の説を立て又其他官公立學校の維持〓〓〓でも計畫したる所ありしと云ふ其方法の如何は〓もされども若しも當局者に早くより其邊の計畫ありて又引續き其計畫を實行したらんには學校の獨立維持も今日に至りては或は幾分の基礎を爲したることならんに實際に曾て其事なかりしは官立學校の爲めに惜まざるを得ず然れども〓徃は〓徃の事として改めて今後の策を講ぜんに國費の支出は〓に不可なりとして他に維持の方法を求むるに當りて或は大學の如きは帝室費の保護を仰ぎては如何との説もあれども今の大學の學科程度は全く一個人の自營を得せしめ若くは官吏養成の目的を以てするものにて國の文明の花たる最高等の學藝とは自から區別のあるものなれば其保護を一〓同仁の帝室に仰ぐは決して隱當の策に非ざる可し然らば則ち他に如何なる手段あるやと云ふに我輩の所見を以てすれば矢張り尋常の私立學校と同樣授業料を基本として支出の計算を定め其不足の分は之を一般〓會の寄附に求むるも可なり或は是迄の行掛もあることなれば私立學〓の例の如く國庫の補助を〓求するも可なり何れにしても先づ其獨立々脚の基本を一定し其基本を土臺として而して後に公私の〓助を求むるの手段こそ肝要なれ是等の諸學校が政府の手を離れて獨立の基礎を定め永久維持の方法を〓會の〓助に求むるに至れば今日までの如き諸種の贅澤を恣にするは固より覺束なかる可しと雖も其教育學問にして果して目下に必要のものならんには〓會は必ず其價を〓めて國會なり又は一私人なり之を〓助するに怠らずして獨立の維持に差支なきは我輩の萬々疑はざる所なり斯くの如くなるときは是等の學校の教育も全く政府の干渉を脱し當局者の意見と共に浮沈變動する弊を免れ直に教育學問の獨立を見るに至る可し學校に從事する學者の爲めにも喜ぶ可き所ならずや我輩は其人々が大に國〓時勢の成行如何に着目し政府の直轄を離れて獨立維持の工風あらんことを希望するものなり