「衆議院の擧動」
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時事新報に掲載された「衆議院の擧動」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
衆議院の擧動
此回衆議院と政府と衝突して休會に次ぐに停會を以てし〓に一昨日の議塲に於ては弾劾的上奏案を可〓して併せて全期を休會することとなせり始め上奏の風〓あるや我輩は其不可なる所以を陳べて事の未然に〓意を促せしが其甲斐もなく今日に立到りたるは亦是非もなき次第なれども元來如何なる重大の事件ありて此衝突を惹〓したるやと尋ぬれば議院は豫算に大削〓を加え政府は之に同意すること能わず云へる豫算上の爭にして敢て珍しき大事にもあらず昨年も此爭あり一昨年も此爭あり明年明後年も蓋し此爭なきを期す可からず其都度上奏に訴えたらば殆んど際限もなき次第なる可し勿論上奏の權は憲法上衆議院に附與せられたるものなれば其權限内に〓動するは妨なきに似たれども法の〓〓より窺へば百年に一たび用いるか、千年に再び用いるか、儀式同樣と〓做して大小の政事は都て政府と議員とに於て其責に任じて分外に〓す可からざるは何人も了解すること難からざる筈なるに毎年有勝なる豫算の爭を以て容易に叡慮を煩し奉るとは之を不穩と云わずして寧ろ議院が自家の權限を輕〓濫用するものと評せざるを得ず或は上奏に付ては別に勅諭の御沙汰もなきことならんが唯議院の爲めに我輩の飽くまでも非難する所なれどもそは暫く〓き議院が上奏に次で全期休會と〓したるに至ては實に堪え難しと云う外なし休會の口實とする所は恭敬の意を表する等これを云えば種々ある可しと雖も議會一たび休止すれば千百の法律議定も亦休止せざるを得ざるは我憲法の定めにして事〓の如何に拘わらず兎も角も議會は國家行政の働を阻害する咎を免る可からず方今我經國の要務は積んで山を成し之を處理するに日も亦足らずして天下の人民も亦悉く足を〓てゝ事蹟の擧るを俟たざるはなし例へば鐡〓法案のことなり取引所絛例のことなり航路擴張のことなり何れも人民の利害に直接せる計畫なれども議會休會とありては是亦一年を空うせざる可からざる譯にして國家の急を〓るのみならず亦實に人民の急に戻るものなり〓に人民の急に戻りたらば豈その不〓なくして〓〓んや議院は國家の爲めに責めらるゝ上に亦實に人民の急に戻るものなき〓に人民の急に戻りたらば豈その不平なくして〓〓にや議院は國家の爲めに責めらるゝ上に又人民の者の爲めにも咎めらるゝことならん窃に按ずるに明治政府は〓して良政府にあらず維新以來の〓〓失錯は枚擧に堪えざる程にして殊に明治十四年後に至ては益々民間の不〓を買い而して毫も〓意の實なかりし折柄國家開設せられて各地方の代議士は恰も民間積年の不〓を代表して政府と對陣したることなれば衝突の〓るや怪むに足らざる所にして此點より〓れば上奏と云い休會と云い凡そ斯る難局を釀したる責は主として政府にある可しと雖も是は衝突の〓因にして〓因と云えば寧ろ民黨が〓激の改革を企てゝ一直線に突〓したる結果と云う可し政府の責か議院の失か人民は今や之が爲め空々漠々百事なすなきの境域に委棄せられ自家の利害に取て不〓なき能わずとすれば其不〓は何れにか向う所なかる可からず此時に當り詳に多年の歴史に〓え政局變動の〓理を察して遙に〓因を難ずる者〓々たる天下知らず果して幾人ある可きや〓んや時勢の變〓は民心を實利の一方に導き事業上の興癈に忙しいして時の遲〓を爭う者多きに於てをや先づ〓因を〓て直ちに責を民黨の〓激に歸し公利私益こもごも相混じて議院はあれども猶ほ無きが如し議院は却て民利を妨る者なりなど端なく〓世の〓判と爲り偶々以て政府に民論排斥の口實を假すに足る迄のことなれば我輩は此際議員諸氏の心を〓めて熟慮あらんと望む者なり