「詔勅に就て政府并に議會を望む」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「詔勅に就て政府并に議會を望む」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

詔勅に就て政府并に議會を望む

今回下賜の詔勅に就ては去る十一日の紙上にも〓べたる如く聖意の優遲切實なる一〓の賛し奉る可き物なく吾々臣民の分としては唯恐入るのみなれども熟ら熟ら聖勅の文を〓讀して特に吾々の〓意を要する點は「憲法の施行方に〓歩に属す始め愼み終を克くし端を今日に正し大成を將來に期せざる可からず」と宣わせられたる御辭に在る可しと信ずるなり抑も立憲の政は日本立國以來幾千百年間の歴史上に曾て無き所にして西洋諸國の例に傚いて始めて行いたるものなれば今日その端を正すに當りて始を愼む可きは申す迄もなく〓に一たび之を行いたる以上今後千萬世と雖も苟も變更を容す可からず終を克くするとは即ち萬世の基礎を立つる故にして所謂大成を將來に期する聖意も此に外ならざる可し之を建築に喩えるに俗に云う一夜〓りの家屋にして意に滿たざるときは直に取毀して差支なきが如きものなれば〓々に圖引して〓々に着手するも可なれども苟も之を百年の後に存して建築の模範と爲さしめんとする大建物に於ては圖引なり木組なり其計畫は〓して容易の事に非ず〓んや國家萬世の基礎たる憲法政治に於てをや其端を成す始めに當りては最も愼重の意を致さざる可からざるに然るに我國國會開設以來の有樣を見れば官民共に只管功を急ぎて西洋諸國にては數百年來の經驗を犠牲にして漸く今日の結果を〓めたる其憲法政治を朝に施して夕に〓を見んと期するものゝ如し雙方の期する所、互いに大にして互いに意に滿たず年々歳々粉〓を呈して〓に〓般來の衝突を致したる其原因を尋ぬれば即ち雙方共に功を〓ぎたるが爲めに外ならずして聖勅に所謂紛爭日を〓くする實を見たるこそ〓〓なれ思うに憲法〓に實施せられていよいよ立憲政治と爲りたる今日に於ては實際に其〓を〓むる用意も素より肝要なれども前に〓べたる如く今の時は萬世の基礎を〓らんとする始めにして所謂憲法の施行方に〓歩に属する時なれば其始を愼しみ大成を將來に期すること大切なる可し即ち我輩が毎度論じたる如く官民共に國會の議塲を以て政治の練修所と心得、實際の實〓は兎も角もとして唯儀式上に事を練〓し斯くて數年間を經〓し其練〓次第に熟するに隨い次第に實地に立入り實〓を〓むる工風こそ終りを克くする順路にして竊に我輩の所見を以てすれば聖勅の旨を奉體する〓は此邊の〓意に外ならざる可しと信じるものなり

我輩が今回の聖勅を〓讀して政府議會の雙方に希望する所は上文の趣旨に外ならざれども終りに臨んで特に一言を陳せんとするものあるは外ならず凡そ詔勅の文は事の大體を指示せらるゝに止まり其細目に至りては實際の責任者に於て處分すること普〓の事なるに然るに今度の聖勅に限りては特に細密の點にまで叡慮に掛けさせられたるの一事なり斯る事例は從來に絶えて見ざる所にして吾々臣民たるものは唯恐入る外ある可からず行政〓に立法の局に當る人々は此詔勅に對し奉りて大に省慮す可きこと勿論なれども我輩は就中、親しく〓弼の責に當る其人に向て特に希望の〓に切なるものなり