「政府の讓歩」
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時事新報に掲載された「政府の讓歩」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
政府の讓歩
衆議院の特別委員が政府と談判の末、その内約とも云う可き絛件を〓せしより議會に於ても啻に詔勅に恭順するのみならず今は快く政府と並び立て和衷協同せんとの勢なりと云う實は事態の尚ほ未だ爰に至らざる時に當り早く自から悟らずして〓に粉〓を〓聽に〓せしめたるが如き我輩の〓す〓すも〓〓とする所なれども人悉く文珠にもあらず此の如きは凡夫の智慧の〓々免れざる所なれば今更悔ゆるも詮なき次第にして兎も角も折合の端緒を得たるは先づ以て賀す可きことの樣なれども右内約の中に憲法第六十七絛の費目中〓急を圖り削〓に同意す可きものは同意す可しとあるに至ては實に事の意外に驚かざるを得ず〓に詔勅にも粉議の因たれう可からずと定められたる第六十七絛費目のことなれば政府は斷然これに據りて覆〓を守り以て威信を保つ可しとは蓋し何人も想像せし所ならん又政府部内に一大改革を施したらば冗費の削〓す可きもの素より少なからざる可しと雖も今日の行政組織に對する彼の政府の豫算案に於ては云う迄もなく〓約に〓約を加え〓じ得可き限りを〓じたるものにして〓して俗に所謂掛直等のある可しとは是れ亦何人も思寄らざる所なる可し左ればこそ政府委員も豫算案の議塲に於て厘毛も〓ずる能わずと斷言せしことなる可く我輩も亦此點に付て政府を信用したればこそ民黨が〓激の難題を以て濫に政府を攻撃するものと認め粉〓の曲は民黨に在りとして其〓急を咎めたることもありしに豈圖らんや政府は六十七絛の款項中にも〓急を見て同意す可きものには同意す可しと云い尚ほ總理大臣の演〓に徴すれば前日に於ける政府と議會との行〓は今や云々する要用なしとて明に覆〓を取〓したり是れによりて觀れば元來かの政府の豫算案には削〓し得可き餘地ありしものなり若しも眞に餘地なしとすれば詔勅と雖も之を如何せんや〓んや詔勅には六十七絛は粉議の因たる可からずこそあれ〓して無理なる削〓を命ぜられたるにはあらず然るに今日に至りて原案提出者の方より削〓の餘地あるを發言したるは再三議會に直切られて〓に價の本相を現わし俗に云うに愛嬌の直引もて客の足を止めたるものと云う可きのみ右の立言果して〓わずとすれば民黨が之を激論に訴え之を上奏に訴え飽までも削〓に同意を求めて屈せざりしも自から一理のあることにして〓して粉〓の曲は民黨に在りとのみは斷言するを得可からず寧ろ政府の豫算案これをして然らしめたるなりと云うも亦敢て不可なきが如し左れば我輩は不日政府と議會と和協して其所謂削〓し得可きを削〓する議事に當ては民黨が自家の見る所を固執して無理なる〓文をなすことなく此際首尾よく終りを告げんことを切に〓る者なれども〓に豫算案に此弱點あるに於ては勢の趨く所、必要も或は無要〓して又もや結末に困却することあらん歟と窃に掛念に堪えざるなり
政府は亦第五議會開會までに行政各部の整理をなし政費〓〓の實を擧ぐることを努め特に海軍の如きは急に大改革に着手す可しと約し伊藤總理大臣は誓て責任を究うせんと演〓したり此點こそ從來民黨が政府攻撃の一本槍にして多年衝突の口實は恰も爰に寓するものゝ如くなれば此回は政府も大奮發を以て軈て實行に着手することならんと雖も大改革の事たるやツマリ吏員を省き棒給を〓ずる沙汰にして其結果は官僚の利害に直接〓面の關係を及ぼすことなれば爲めに怨恨も生ず可く不〓も〓る可く其困難にして且つ不利なること殆んど想像に餘りあり是れも元勲内閣の威光を以て斷然處分す可しとあればソレ迄なれども此の如くにして民黨は民論の行われたるに滿足し議會は〓謐にして政府の議員は年來民心に感ぜしめたる不〓の感〓を代表するものにして其望む所は政費〓〓など云える實物の得喪に非ざるが故に折角の大奮發も實際に効なく政府は恰も此一擧を以て數少なき部内の味方を敵にする姿となりて更に新奇荒手の攻撃に逢うことなきを期す可からず〓〓せざれば議會に責められ〓〓するも尚ほ責めらるゝ上に併せて脚下に火を〓すことゝもならば其損失たる實に大なりと云う可し之を要するに政府このたびの讓歩は失う所甚だ多くして得る所甚だ少なく和協の方略其巧に似て其實甚だ拙なるものとして我輩の惜む所なり