「有價證券の保險」

last updated: 2015-12-26

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時事新報に掲載された「有價證券の保險」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

有價證券の保險

〓來歐米諸國にては保險の事業大に發〓して種々樣々の保險會〓陸續現われ出る其中に最も耳あたらしき新工風とも云う可きは有價證〓保險會〓なるものにして其業務は專ら鐡〓、鑛業、製〓其他諸會〓の株〓〓債〓及び政府の公債等都て有價證〓の保險を爲すに在りて若しも其引受けたる證〓にして保險時限内に利子配當金を拂い得ざるが如きことあるときは一切これを支辨するは勿論、或は時宜に依りては元金額をも辨償する責任を負うものなり英國米國等にては〓に此類の保險會〓を設立して榮業するものも少なからず今後ますます流行せんとする勢にして新設の株式會〓が資金を募集するときなどは右の保險會〓に其保險を依頼して以て出金者の心を安んぜんことを謀る者多しと云う例えば〓般倫敦の其製鋼會〓は新に五分利付の〓債二十萬封度を募集するに當り其廣告文中に「有限責任有價證〓保險會〓は今回の〓債應募者の需に應じ一年百封度に付十志の割合にて元利共に保險す可し」と云い又加奈太モントリオルの水力會〓が十二萬封度の〓債を募集するときにも「左の保險會〓は本〓の債主の爲めに〓債〓の額面百封度に付現金六封度づゝを受取り以て元利の支拂を保證す可し」云々の旨を記して次に保險會〓五六種の名を〓げたり

凡そ直接に商賣工業に從事せざる者が其所有金を活用せんとするには慥なる有價證〓を買入るゝこそ便利の法にして世人の皆共に知る所なれども如何にせん數多き株〓債〓の中にて正確なるものと危險なるものとを見分るは尋常人の容易に爲し能わざる所なれば假令ひ眼前に利益の香ばしき有價證〓を見るも先づは之に錢を投ずることを見合わせて却て薄利なる地所田畑など買う者多きは世間普〓の人〓なり然るに今若し〓記の如き保險會〓なるものありて資本家の望に從い聊かの保險料を受取りて其買わんと欲する株式證〓の危險を引受け萬一の塲合には元利共に辨償す可しとの約束を爲す以上は是れが爲めに投資に〓う不安心は大に〓少し資本家に取りては實に無上の便利なること喋々を俟たずして明なり且又保險會〓の方にては常に諸般の會〓に就き其營業會計の模樣など綿密に取調べて危險の恐あるものには保險料の割合を高くし或は全く保險の恐あるものには保險料の割合を高くし或は全く保險を拒絶することもあるが故に世間にては保險會〓の擧動に由りて竊に諸會〓の安危を窺い知る便あり我國の如き諸般の株式會〓に對する世人の知識は殆んど皆無にして恰も少數投機者流の〓尾に附て〓〓し何等の見定もなくして或は買い或は賣る者滔々皆然らざるはなき有樣なれば或は後來左程の望もなく又現在に大利益もなき會〓の株〓にして法外なる高價を現わし一時市塲の流行物と爲りて轉々賣買の最中一旦の機に其流行止むときは何れにか損害の歸する所なきを得ず財産保護の安全なるものと云う可からざるなり左れば今日の商賣〓會に經驗もあり資力も厚くして信用圓滿なる人々が〓に新に有價證〓保險會〓を設立して細に諸會〓の内〓を探索し專ら自家の損得を表準として保險料の割合を定めたらんには其見る所は無識無經驗なる〓凡素人の考に同じからざるは必然にして或は是れが爲めに今日の株〓相塲に著しき變動を惹〓すやも知る可からず我輩は我日新の時〓に煩雑を極むる經濟〓會の安全を維持せんが爲め特に此種の保險會〓を企望して止まざる者なり然ると雖も凡そ物に一得あれば一失あるは免がる可からざる數にして有價證〓の保險にも亦二三の弊害なきに非ず例えば保險會〓が或る一會〓と竊に結合して其株券に不當の價格を附し愈よ最後の時に臨んで雙方共に分散して〓多の株主に非常の損失を蒙らしむることもあらん或は株熱の盛なる際に保險會〓の役員も亦其熱に〓かされて不慥なる會〓の證險をば前後の思慮もなく颯々と保險して扨その熱の〓に醒果てゝ今は反動の爲めに金融逼〓諸會〓分散等の惨〓を呈するに至れば保險會〓が第一に其災を蒙りて破〓するが如きは最も有り得べきことならん其他これに類する弊害を想像すれば尚ほ少なからざる可し我輩は他日を俟て再び論ずる所ある可し