「政府の情實除く可きや否や」
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時事新報に掲載された「政府の情實除く可きや否や」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
政府の情實除く可きや否や
政府は第四議會以來部内の整理に着手して海軍改革の如き〓に其功を終り行政整理の結果も〓日の中に發表す可しと云う盖し政府が只管部内の整理に汲々たるは年來世間に〓實云々の攻撃喧しくして議會に對する〓動も意の如くならざるのみならず當局者自身と雖も内實は其〓の爲めに苦しめらるゝ事〓もなきに非ざれば議會の攻撃を幸にして此議會に際し大に部内を整理する意味もあることならんか政府の〓實は外より見て非難す可き點あるのみか自から其弊に堪えざる内〓もありとすれば之を除くは目下の急なれども抑も其〓實の病根は政府の如何なる部分に宿して如何なる〓態を呈しつゝあるか將た之を除くには如何なるものあり政府に冗員多きか之を省く可し、冗費大なるか之を〓す可し、病根果して冗員冗費に在らば之を除くこと誠に容易なりと雖も本來政府の〓實病は斯る輕症のものなるや否や我輩の所見を以てするば世人が〓實の原因と認むるものは所謂藩閥功臣の組織にして凡百の弊害は此原因より來るものと心得ることなれば冗員冗費の如きは畢竟その餘症と見做すに〓ぎず或は當局者の眞實に苦しむ所は其餘症たる冗員冗費の始末に在ることならんと雖も反對の眼より見るときは其始末の如き俗に云う自から〓氣を知らざる沙汰にして竊に一笑を催ほす可きのみ即ち彼の行政整理委員の如き政府部内の〓を〓きたるものならんられども矢張り〓實中の人たるを免れざるものにして其〓實中の人が取調べたる結果を以て世人の滿足を得んとするは到底難かる可し又海軍の改革の如き或人の説に據れば非常の〓斷にして冗員の始末に就ては從來に似ず隨分思い切たる處置も少なからずと云う當局者に取りては〓ぶ可からざるを〓びたる英斷にして或は自から得意なるやも知る可からずと雖も外より見るときは其改革に從事したる人人も亦是れ〓實中の人にして〓實中に行いたるものにこそあれば之に滿足するものはなかる可し即ち其滿足を得んとするには今の當局者が其地位を去りて他人をして從事せしむるに非ざれば不可なればなり單に海軍の改革のみならず政府一般の事に關しても皆同樣の次第なれば折角の行政整理は毫も世間の反對家を滿足せしむる〓なきのみならずますます其乗ずる所と爲りて自から苦しむ外ある可からず若しも當局者が此邊の事〓に〓ぜず他を和らげ〓て自から利せんとして飽までも〓實根治の政略を執ることもあらんか之を喩へば德川幕府末路の當局者が王政維新の曉を待たずして自から癈藩置縣を斷行するものに異ならず封建の制度に於てこそ幕府を維持する必要もあることなれ〓に諸藩を癈するときは幕府自身も亦無用の長物と爲りて政權〓上の擧に及ばず獨り自から倒るゝ外なきのみ明治政府が自から〓實を一掃して一點の痕〓だも絶たしめんとするは或は此例に類するが如きことなかる可きや若しも當局者に於て今の政府を維持せんとの考ならんには部内の改革整理を以て〓實云々の攻撃を免れんとするは到底覺束なき所なる可し二十餘年來の政府は〓實を以て立つものなり〓實を除かんとすれば功臣政府の根底より除かざる可からず之を除く得失論は姑く〓き當局者は果して此邊の意味を知るや知らずや自から〓く勇なくして細々〓實を矯めんとす我輩これを評して小刀細工の巧に似て拙なるものと云うのみ左れば今の謀を爲すに斷じて動かずして〓實と共に政府を維持するか然らざれば夫子自から去て〓實の根本を絶つ可し二者孰れにても苦しからず其撰擇は當局者に一任するものなり