「第六議會」
このページについて
時事新報に掲載された「第六議會」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
第六議會
は來る五月十二日を以て召集し會期は二十一日間と定められたり左れば各議員は其當日より議院に參集したる上、正副議長常任委員の選擧等を終り議會の成立を告げて茲に開院式を行う例なれば何れ開院は十五六日の間に在ることならん而して會期二十一日の中、日曜の休暇等を除くときは正味事を議する日數は十七八日に過ぎざることならん抑も今回の議會は第五議會解散の後を承けたるものにして其議事の如きも自から前回の波瀾を傳へざるを得ず〓に第二議會解散の後に召集したる第三議會の如き其會期四十日の間に種々の難問題も少なからずして停會を命ぜられたることさえありき即ち今回の議會も前回の餘波として多少の混雜は免れざることならんと雖も從前の事情を察するに各黨派の如き豫め一定の成算あるものとては少なく多くは議會開會の上、所謂交渉なるもの行われて各派の間に意見交換の約束成立して始めて議塲に問題を出現する例にして其交渉往來の間に意見を纏むるには自から多少の時日を要して其時日の間に次第に切迫の勢を催ほすことなれども今回の會期は僅に十七八日間に過ぎずして然かも政府より提出す可き議案の如き格別議論の種と爲す可きものなきが如くなりと云えば議事切迫の勢を催ほす時機未だ熟せざる其中に會期は早く〓に過ぎ去り左程の混雜も見ずして閉院を告げることならんか或は彼の條約履行の問題の如き解散の一理由と爲りたるものにして關係する所少なからず若しも再び新議塲に現わるゝにも至らば其成行容易に知る可からずと雖も本來彼の問題は一時の狂熱より生じたるものにして〓來に至りては大に悟りたる樣子も見ゆれば昨年のまゝにて再び現わるゝことは覺束なかる可し或は中心には悟る所あるも前回よりの行掛りにて故なく思い止まり難き事〓もあらんかなれども譯もなく無理難題を持出して又もや自から解散を促す不利なるは議員自身に於ても承知のことなれば此問題に就てはいづれ何とか色を付けて難を後回に讓る工風に出づることならん果して然らば今回の議事は格別の波瀾もなくして政府の當局者も先づ以て安心なる可く又議員の人々も當撰〓々又もや解散の不幸にも遇わずして二十一日間の會期は兎に角に無事に經過することならん即ち其無事は當局者の施設宜しきを得て人望を回復したるが爲めにも非ず又議員の人々が大に悔悟して其擧動を悛めたるが爲めにも非ず唯會の期日短くして切迫の時機を見るに至らざるが爲めに外ならず今後の成行〓して油斷す可からざるなり