「第六議會」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「第六議會」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

はいよいよ本日を以て召集せられ議長選擧等の手續を經て兩三日の中に開會することなる可し今度の會期は僅に二十日間にして休日等を除けば正味の日數十七八日に過ぎず且つ政府の提出案とても格別重要のものもなきよしなれば全く儀式上の會議にて濟むことならんと思ひの外、昨今の樣子を見れば民黨の人人は六派の聯合など唱へて内の魂膽、外の運動、頗る騷騷しく或は開會第一に前議會解散の不當を論じて政府彈劾の上奏を爲す計畫なりとか云へり又彼條約■(がんだれ+「萬」)行案の如き昨年のままにては到底通過の見込なし左ればとて全く見合はするときは民論の消長にも關する次第なればとて何とか工風を運らして當らず障らずに議塲を通過せしめんとの趣向もあるよし隨分賑賑しき有樣にしていよいよ開會の上ならでは實際の形勢を詳にすること能はざれども右の彈劾案■(がんだれ+「萬」)行案の如きものが議塲を通過して之に次ぐに例の如く議會自から休會の决議を爲すにも至らば如何す可きや尋常普通の政府ならんには前の解散の理由に對しても是非とも再度の解散を斷行せざる可らず分り切つたる道理なれども果して其れまでの决心ある可きや否や現内閣の當局者は八方美人の名を博したる如く善く云へば手管に巧なるものならんかなれども惡く云へば卑怯未練の譏を免れずして對議會策の如き曾て一定の方針を見ず前回の解散の始末とても百方彌縫の末、止むを得ざるの手段に出でたるのみ最初より確乎たる决心のありて然るものとは認む可らざるが如し左れば今回とても甚だ不安心の至りにして議會の擧動いよいよ看過す可らざる塲合に立至りても引續き再度の解散とは事體穩かならず次期の議會も遠きに非ざれば今回は兎も角も彌縫して决斷は次に讓るこそ得策なれなど一種の情實談を生ずるは薄弱政府に免れざるの常にして或は不可思議の成行を見るやも知る可らず今度の始末にして果して斯くの如くなれば今後の成行も亦推知す可し誠に頼母しからぬ次第にして我輩は最早や重きを置くことを欲せざるものなれども爰に看過す可らざるは一般人民の利害にして目前に處理經營す可き重要の國務を差置きながら政府も議會も共に自家の爭にのみ忙はしとありては到底永く堪へ得べきに非ず議會の擧動が一般の望を失はしめたるは敢て今日に始まりたるに非ず人心の既に厭ふ所にして只一縷の望を政府に屬したることなれども今や其政府の處置も亦斯くの如くにして頼むに足らざるを見るときは天下公衆は全く政府に望を絶ち議會政府を擧げて共に改造するの必要を感ずるに至るやも知る可らず當局者の宜しく注意す可き所なり