「朝鮮の改革委員」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「朝鮮の改革委員」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

朝鮮よりの近報に據れば彼の政府は大島公使の要求を容れて政令改革の議に決し既に其委員を命じたりと云ふ事の稍や進みたるを見る可きが如しと雖も我輩は此報道に毫も重きを置かざるものなり日本國の兵力を以て彼の政府に臨む何事か〓かざるものあらん我要求に對して彼に異議なきは分り切たることにして今更ら怪しむにも足らず驚くにも足らず要は只その實行の如何に在るのみ或は既に委員を命じたりと云ふ其委員には如何なる人物が當りたるか知る可らずと雖も朝鮮政府目下の有樣より推測すれば何れ閔族の一類か然らざれば其使嗾を受けて表面の責に任ずるものなる可し我輩の竊に聞く所に據れば彼の王妃の如きは死力を以て外戚の勢力を維持せんとし既に閔泳駿の始末の如きも内外の非難にも拘はらず身を以て之を爭ひいよいよ泳駿を退けんとならば先づ我が頭を斷てと絶叫し物論百出の間に頑として動かず遂に免職の事も行はれずして止みたる程の次第なりと云ふ其跋扈の状、〓見る可し左れば今回の委員とても何れ閔族掌中の玩弄物にこそあれば實際の着手は迚も覺束なし只我要求に對して止むを得ず表面の儀式上に委員を命じたるまでのことにして改革の實行を見ることは到底難かるべし我輩は此報道に就て一毫の輕重をも感ぜざるものなり我當局者に於て果して實際に改革の事を成さんとならば表面の儀式は兎も角として虚々實々の間に無限の手段を盡し時に或は意表外の大英斷を施して退引ならぬ處にまで切込み一瞬の間に大事業を成して以て我朝野の人心を滿足せしめんこと我輩の特に冀望する所なり