「全國農事大會の決議」
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時事新報に掲載された「全國農事大會の決議」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
全國農事大會の決議
本月一日より全國農事大會を府下の〓生館に開き農事振興の方法に關する二十餘絛の要目を義議定したるは曩に本紙に記載せる所の如し目下我國の百事は何れも戰爭の爲めに多少の影響を蒙り殊に新事業新計畫に属するものゝ如き直接に金融に〓あると否とを問わず〓ね〓行を躊躇する中に於て農事大會の擧行は之を稱して其本分を盡すに熱心なるものと云わざるを得ず而して議定の項目二十餘絛都て相應の考案にして〓し農界の時弊に〓したるものならんなれども其〓〓を要するに各府縣に農事團體を組織して之を主動者となし世話役となし以て各種の方法を實施せしむ可しと云うに外ならず一應何人も想像に〓む所にして從來として或は計畫せられ或は實施せられたることもありしが其成績多くは思わしからずして能く完うしたるもの甚だ鮮し〓の變〓と共に箇人の信用衰えたるよりして樣々の〓〓を結ばんとするにも兎角法律的の仕組を離れず例へば其主任者の行爲を監督するに組合全部の會議を以てするなど其他種々繁雜なる事務に煩わされ無益の金錢を費して俗に謂う入費倒れとなるもあり又は政治的有志家の爲めに〓〓せられて弊害百出すると共に團體の信用を失い組合員自から之を蔑〓して顧みざるに至るものも少なからず例へば彼の自治制度の如きも立案者の趣向は〓ほ農事會が團體の計畫をなしたると等く之を以て地方百般の經營に任ぜしむ可き積りに相〓なかる可しと雖も事の實際を見るに及んでは人をして失望せしむるもの比々然らざるなし試に各府縣の自治體が一年中に幾回の會議を〓したるや、幾干の日子を査して其擧げ得たる事〓に對比し〓各地方に於て實着なる人民が果して自家の自治體に信用を置きつゝあるや否と問わず其前〓を憂ふる者少なからざる可し是れ皆自から偶然ならざる仔細の在ることにして農事團體の組織に就ても大に參考となすに足る可し左れば議〓事項の實施に付ては別に委員を設くる筈の由なれども若しも徒に計畫を急ぎ輕卒に組織に着手するに於ては農民は啻に利益に浴せざるのみか恰かも一種の租〓を負擔する姿と爲り實益未だ得ずして怨言先づ發する惧なしと云う可からず我輩は當事者の飽までも〓重ならんを〓意する者なり又此種の計畫及び團體の爲す可き業務等に就ては實際地方長官の〓として中央政府の命令に對しては周旋奔走を辭せざれども人民に向ては兎角疎〓にして其〓實を問わず一片の法文以て萬事を貫かんとして却て無限の繁累を生ずることなきに非ず例へば右大會の議〓中にも諸般の公事及び納税等成る可く組合總代をして之を代辨せしむる慣例を養成す可し云々とあり是れは農家の繁文に苦むを濟わん爲めの一案にして案の便否は暫く措き地方官が行政の手心を以て百事簡易を主とし政事を一種の商賣と〓做して手間を省き費用を〓ずることにのみ〓意し官民直接に相應して事を謀りたらんには農民の爲めに利すること必ず大なる可し是等は農會の責任として地方官に向て大に談す可き所のものなり
序に一言す可きは議〓中移住に關する方法として殖民事業を保護監督せしむ可き官衙の設立を促すことゝあり官衙の事は我輩は今茲に言わずと雖も戰爭落着の後には想うに我國人を移殖す可き新領地を得ることなる可く隨て〓に從軍せる人夫等は勿論〓ほ續々移住者を要す可ければ農界の先〓たる人々は宜しく之を獎勵して新地に永住せしむる用意大切なる可し農事改良の極意は〓剰の人口を移すにい在りと云う〓んや新地の移民は國家の要務なるに於てをや而して人〓は常に墳墓の地を去るを好まず先〓を煩す所以なり