「降伏を納めゝに必要の一事」
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時事新報に掲載された「降伏を納めゝに必要の一事」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
降伏を納めゝに必要の一事
日〓の戰爭は朝鮮獨立の問題に就て端を開きたれども其原因を尋ぬれば〓して一朝一夕の故に非ず支那人が種々の無禮を働き動き恰も日本に對して戰を挑む擧動を演じたるは十數年のことにして其事實は一にして足らず吾々日本人の常に切齒に堪えずして一日も忘れざる所なれども只東洋全局の〓和を維持するが爲めに〓ぶ可からざるを〓んで〓〓屈辱、以て年月を經〓する中に干〓に訴えるに至りしものなりとは我輩の曾て〓べたる所にして讀者に於ても異議なかる可し扨戰爭は〓戰〓勝の有樣にして北京城下の盟も日を期して待つ可きのみなれば流石の支那人も今日と爲りては自から悔ゆる外なきことならん聞く所に據れば彼の當局者は頻りに外國人に泣付き日本に對して朝鮮の獨立を認め又今日までの軍費を賠償して〓和の局を結ばんことを嘆願に及びたるよし其いよいよ窮したるを知るに足る可し誠に憫れむ可きが如しと雖も今回の戰端は朝鮮問題より發したりとは云へ目下の次第に立至りながら纔に朝鮮の獨立を認むる一事（軍備の賠償は尋常のことにして云うに足らず）を以て和を〓うとは餘り蟲の善き話にして誰れとても斯る相談に耳を傾くるものはある可からず今や彼の四百餘州を蹂躙し去りて其土地を占領するは全く我權力に存して甚だ自由なれども本來我國の目的は彼の無禮を懲らし將來を戒むる爲めにして敢て他志あるに非ざれば彼にして果して其非を悔い實際に改悟の實を表して降服を〓うに於ては朝鮮の獨立の如きは〓に事實上に承認せられたるものにして今更ら〓和の絛件と爲す可きに非ざれば土地の割與なり絛約の讓歩なり相當の謝罪を表するは無論なりとして其個絛は姑く〓き我輩は其〓和の終結に際し是等の個絛の外に特に必要の一事を認むるものなり抑も國と國との交際は相互に敬重する禮意を存すること肝要にして若しも其禮意を欠くときは交際は〓して永續するを得ず從來支那の擧動を見るに自〓自大、自から中華中國を稱して他を夷狄〓し之を輕蔑すること一方ならず實に無〓の甚だしきものなり例えば日本が朝鮮の獨立を認めて絛約を結び對等の交際を爲すや彼は傲然朝鮮を自國の属邦なりと明言して國際法に於て許す可からざる暴亂狼藉の擧動を加えたる如き畢竟日本は其属國と同等の地位に在る事實を示して我を侮辱したるものに外ならず又現に兩國の間に締結したる絛約の文面に中日兩國など記載して自から中國と稱したるは取りも直さず我を夷狄〓したるものにして最も鄭重を要す可き絛約の文面にさへ斯る文字を用いるとは全く國交際の禮儀を無したるものと云わざるを得ず凡そ是種の例を計うれば其咎む可きもの一にして足らず彼の宣戰の布告に我國人を稱するに倭人の名を以てしたるが如き假令へ戰爭の塲合とは云へ無禮千萬の語法にして以て其〓生の心掛を見るに足る可し盖し支那人が唯我獨〓、言語に擧動を他國を輕蔑するは單に日本のみに非ず諸外國人に對するにも矢張り同一の筆法を以てすることにして之を小兒の〓として看〓すれば敢て意に介するに足らざるが如くなれども我國に〓りては〓して之を不問に付すること能わざる理由ありと云うは外ならず西洋諸國の如きは文字も〓ひ人種も別にして百般の慣〓自から殊なるが故に支那人が得意の筆法を逞うして言動の間に之を輕蔑するも西洋の人は之を野蠻國の常態と見て心にも留めず實際の利害に關せざる限りは馬耳東風に付し去りて甚だ無頓着なれども日本人に於ては然るを得ず纔に彼と一衣帶水を隔てる地位に國して然かも其言語擧動は一として一般國人の耳目に影響せざるはなし其趣を喩えば西洋諸國の人々は恰も壁を隔てゝ微々たる影言を聞くと一般にして之を聞流すも敢て差支えなけれども之に反して日本人は恰も面前に辱しめらるゝと同樣の次第なれば〓して黙々に付するを得ず畢竟今回の事を釀したる其原因は彼等が毎度無禮を働きて年來我感〓を害したる爲めにこそあればいよいよ降服の實を表して〓和の結局を告ぐるも彼等にして其言動を改めず依然我に對して自大自〓の態を存するに於ては兩國の交際は〓して舊に復することを得べからず左れば今度の結局に際しては償金土地以下の如き降服の絛件として我に〓む可きもの少なからざる其上に從來の無禮を謝せしむるは勿論、陰にも陽にも我に對して此邊の心得〓いなきよう屹度誓わしむること永久の〓和の爲めに必要なる可し