「軍事費の始末と増税問題」
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時事新報に掲載された「軍事費の始末と増税問題」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
軍事費の始末と増税問題
曩にい臨時議會の廣〓に開設せらるゝや議會は能く全國の人心を代表して此回の大事の爲めには費用を〓まず負擔を辭せずとて軍事公債一億五千萬圓の募集案を可〓し全會一致未曾有の盛〓なりしが當時は〓卒の際にして會期も短かりしが故にや其公債の償〓法に就ては政府も言わず議會も語らず唯負擔を辭せざるの〓心中に含蓄せられて終了したることなれば其邊の提案は想うに第八議會を俟ちたることにして其議會も〓に召集せられいよいよ本議に入るも〓からざることとて種々の〓をなす者ある或は心窃に凱旋後の償金を目的として右の始末に充てんと擬する者もあれども幾干の償金を領〓し得可きや豫定し難きのみならず軍事費なりとて悉く海外に消散するにあらず其大部分は國内に落るが故に新に償金を齎し來りて公債を償却することともならば〓貨徒に膨張して却て國家經濟の不利を見る可し此事に就ては我輩別に讀者の參考に供する所ある可ければ暫く措き兎も角も軍事の始末は償金の有無に拘わらず成る可く〓〓以て事に應ずるこそ肝要なるに就ては先ず第一に屈指す可き〓源は〓に開戰の初に於て我輩の〓べたる如く彼の〓酒〓に如くものなし政府は曾て第四議會に於て政爭を姑息に調停せんが爲め自から地價修正論に殉し其修正日として酒、〓草、所得の三〓改正法案を提出し識者の〓を招きたることありしが今や時勢も大に變じて國家の前〓ますます多事なると共に地價修正論の如き自然に消滅せざるを得ずして復た顧るに足らざるに至りたれども政府の新〓源として目指す所或は依然として彼の三〓を主とし其法案に少し修正を加えて其まま提出するが如きあらんには我輩は斷じて反對〓を主張する者なり所謂三〓法案の示す所によれば酒〓に於ては一石に付き一圓を〓したるのみにして隨て國庫に益する所は僅に百六十餘萬圓外に自家用料酒の製〓〓をも高めたれども數ふるに足らず〓草〓も亦從來定價の二割なりしを三割となし由て以て四十餘萬圓を〓〓するのみ所得税に至ては最も面白からずして多額所得者の税率を〓すこそ當然なる可きに却て銀行法の五等以下更に二階級を〓設する等の窮策を取りたれども其〓高に於ては頗る輕少にして見るに足らざりしなり畢竟地價修正費を供給せんが爲めの小策なれば目的相應の計畫なれども軍事費に至ては即ち然るを得ず千萬圓以上の〓源を求めざる可からざる上に所得〓の如きは如何に〓せばとて高の知れたるものにして却て徴〓の手數に煩殺せらるゝ樣のものなれば我輩は之を眼中に置かず唯夫の酒〓に至ては現今僅に一石に付き四圓を課するのみにして其低廉なるは世界各國に類例を見ず之を倍して八圓となすも〓して〓當に非ざる次第は前日の紙上に詳記したる〓りなれば政府に於ても今度は地價修正のときの如くならずして斷じて筆法を改め酒〓の一〓に於て立案する覺悟なかる可からず又〓草〓は今日三百萬圓以下の少額なれども是れも各國の事例に照すときは實に格外低〓にして更に二倍となし三倍となすも〓して不釣合に非ず殊に〓來は巻〓草の流行甚だしく子供までも之を喫するなど固より無益有害の沙汰なれば聊か禁止の意味を以て課〓を重くするも不都合はなかる可し要するに軍事費の始末は固より國民の負擔にして之が爲めに〓〓するも國中一言の不平ある可からず唯その國家の經濟に影響する所大なるが故に此際政府は一切の小策を用いず事を簡にして〓源の大なるものを求め一擧して目的に〓せんこと我輩の敢て勸告する所なり即ち其〓源は〓酒の外になかる可し或は尚お足らずとならば之を次ぐに〓草を以てするも可なり所得〓その他〓々の課〓を以て大に民を煩わして僅に國庫を利するが如きは智者の事に非ざるなり