「昨年中の帝國議會と將來の政策」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「昨年中の帝國議會と將來の政策」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

昨年中の帝國議會と將來の政策

昨明治二十七年は帝國議會の開院式を行うこと第六、第七、第八の都合三回に及びたる年にして此間二回の總撰擧を行いたることなれば政界の多事なりしは定めて讀者の記臆に存する所なる可し扨その第六議會とは如何なる性質のものなるやと云うに第五議會が二十六年十二月三十日を以て解散せられたるにより昨年三月一日を期して總撰擧を行い五月十五日恰も新〓蛙〓の時を以て改めて開會したるものにして即ち解散後の特別議會なり然るに其解散せられたる議會は政府に向て無二無三に衝突を試み遂に排外論を湧起して條約〓行を建議せんとするに至りたるものなりしが第六議會も其因〓によりて同じく前轍を〓み解散は非なり〓行は是なり斯る政府と並び立つこと能わずとて開會の〓頭より激烈なる上奏案を提起し形勢太だ不〓なりしも天下自から具眼の人ありて排外論もいつしか非難の聲に壓せられ爲めに其威を逞うすること能わず後に至りて大に修正を加えたるものを見れば殆んど〓行云々の跡なかりしかども政府に於ては右の沿革あるが爲めに猶その餘臭に堪えずやありけん一旦停會を命じたる後間もなく六月二日を以て上奏は御採用相成らずと宣告し同時に解散の令を下せしに即夜よりして朝鮮の變亂は世間の耳目を〓動することゝなれり開會〓に二十日未滿の其間には自由黨が井上伯と藤田組との舊事に就て攻撃を加える等種々の濁浪狂瀾を揚げて議會の品位は正論の〓子と共にますます亂暴を極めたる次第なれば假令解散に次ぐに解散を以てするも民論の反抗は決して鎭定す可くもあらず假令上奏は御採用相成らずと雖も種々に形を替えて閣臣の責任を問うは素より明白なる所にして殊に伊藤内閣は第四議會以來衝突に衝突を重ね最早や應椄に困却したる塲合なれば政界の前途頗る危急の模樣なりしに時なる哉韓山の風雲急を告げて局面全く一蹴せんとする兆候を呈せり聞く所によれば内閣にても議會解散の問題未だ決せざるに朝鮮問題の起るに〓しければ解散云々の如きは大事の前の小事となりてサシモの難問題も容易に一決したると云う

是より先き我帝國議會の紛爭非常なるを見聞して日本は到底立憲政體に堪えず〓の窃に〓〓したる外國人もありたる由なりしが所謂紛爭は我國民の一〓事たるに過ぎずして本心の光明は決して國家の大事を無〓するものにあらず左ればこそ前〓の如く沸騰の頂點に達したる政爭も一たび東洋危機動く警報に接するや狂嵐一〓〓〓〓ぶが如く〓行を言わず解散を談ぜず議員となり有志家となく〓〓一心〓〓斯國の大業を成さんとして昨日今日僅に一夜を隔てたる其間に全く身構を別にして〓〓〓〓天真〓〓〓したるこそ愉快の限りなれ爾來戰捷の一大立願の外他念なくして軈て九月一日に至り解散後の總撰擧を擧行するに及びては是も國民の要務なりとて戰爭中〓に撰擧の事を理し十月十五日に至り臨時に第七議會を廣嶋に召集するや全會一致を以て一億五千萬圓の軍事公債を可決し陛下に對し奉りては御威德を〓し政府に向ては飽まで終極の目的を貫く可しと建議したる外他に一語を云う者なく面して今度の第八議會も頗る〓〓の中に開會を告げたり首を回して六月以前の事を追想すれば茫々として夢の如く夫の諸外國人の如きは一驚背後に〓若たるのみにして殊に支那の李鴻章に至ては最も甚だしく我議會を〓認したる程に其喫驚悔悟も亦甚だしく唯長大息の外なしとは實に古今史上の一奇談と云う可し左れば本年の議會史は開院式を行うこと三回にも及びて一見極めて多事なるが如くなれども實は下〓季の二回は頗る粛々たるものにして唯特に着眼す可きは始めに粉〓の極度に達し後には〓〓の極度に達して兩極端の異例を呈し世界獨歩の偉觀を示したるの一事あるのみ

然りと雖も議會の〓〓なるは唯國家緊急の大事を念うが爲めにして決して前々來の不和軋轢を忘却したるに非ざれば事〓る後は復た衝突を再演せんこと〓し疑を容れざる可し政府が武功を挟んで議會に臨むと雖も其久きに堪えざるや素より明白なれば他に如何にして民論を操縱す可きや其政策の定まる所は即ち議會の政策も亦定まる所にして第一に注意す可き要件なれども我輩の所見にては一言以て之を蔽うに足るが如し即ち政府の政策は必ずや實業の朋友となり積極的に〓國の計を畫するなる可し是れぞ國家の急要のみならず假令或る他の點に於て議會と衝突を〓すことあるも爭う可からざる武功ある上に〓に實業の〓友たるを示す上は天下の與論は政府を認めて富國強兵の策に油斷なきものとして多少の瑕〓あるも敢て不信となさざる可し民論も亦これに抗する能わざる所なれば更に議會の爲めに謀るに寧ろ政府に先んじて實業の〓友たらんことを勉め來る八日より開會す可き議塲に於ても強て政府との衝突を避け富國の計を以て專一となす可し隨て與論の信任を得て將來政府の地位に立つも定めて安心なる可きを示すときは政黨内閣の時期に達する豈甚だ遠しとせんや政府も議會も將來の政策は実に此一途の外なきを信ずるものなり