「戰勝、偶然ならず」
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時事新報に掲載された「戰勝、偶然ならず」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
戰勝、偶然ならず
今回の戰爭に付き日本の實力を世界に發表し國の地位を〓めたるは疑もなき事實にして外國新聞紙などの記す所を見るに例の如く針小棒大の筆法を以て東洋遽に一大強國を生じたりとてあらゆる〓を盡して賞讃する其中にも日本が暫時の間に斯る勢力を博したるは如何なる次第なりやと竊に怪しむ〓もなきに非ざるが如し我國の事〓に疎き外國人などの觀察には左もある可きことなれども抑も日本の發〓進歩は三十年來のことにして其間の〓難苦勞は一方ならず内外の故障もあれば自家の失敗も少なからず或は前〓の成行に〓を懐きたるものもなきに非ざれども國民の多數は其方針を改〓々歩と一〓して毫も躊躇せず路に横わる各種の障害を排して一直線に〓みたる其結果として今日の發〓を致したるものなり其事實は内外識者の認むる所にして今回の戰爭は唯固有の國力を發表したるものに〓ぎず〓して偶然の出來事に非ざるなり抑も國力發〓の有樣を物に喩えれば人間身體の發育に異ならず人體に於ては四肢五〓共に發〓の度を同ふにして其働に〓不及なく心身活〓の〓を呈するに非ざれば之を稱して發育の完全なるものとは云う可からず立國の要素は一ならずして軍事と云ひ實業と云ひ政治と云ひ〓育と云ひ其役目はおのおの異なれども何れも人間の四肢五〓に比す可きものにして國力の發〓とは是等の諸要素が銘々に發〓しながら其〓歩の程を共にして一國全體の上に力を現わしたるものに外ならず吾々國民が〓年來の苦心盡力、その期する所は國力發〓の大目的を〓するが爲めにして或る政治家〓育家として國事の經營、學問知識の發〓に心を勞したるものもあらん或は軍人として國防軍備の事に身を委ねたるものもあらん或は實業家として商賣殖産に勉めたるものもあらん銘々の辛苦經營は自から異なれども歸着する所の目的は何れも同一ならざるはなし今回戰爭の一擧に就て日本の國力を世界に發表したるは實に軍人の功勞にして我輩は國家の爲めに只管その功勞を謝するものなれども顧みて事の全體より見るときは其戰功も亦是れ國力發〓の結果にして一般國民の苦心盡力が實際に其〓を現わしたるものと云わざるを得ず例えば敵と戰うに當り第一の必要は軍資金の供給にして若しも國貧にして其供給に乏しきときは如何に武勇熟練の軍隊を以てするも結局の勝算は覺束なかる可し切齒憤慨止むを得ずして敵に屈する外なけども我國の實際は如何と云うに軍資の如き多々ますます乏しきを患へず現に國民が一億五千萬の負擔を甘んじて毫も難色なきは自から日本人の特質とは云へ畢竟〓年來商賣工業の發〓〓歩尋常ならずして國力の富力を膨〓せしめ軍事の支出の如き〓々として餘〓あるが爲めに外ならず又海外の出師に就て最も注意す可きは〓〓力の如何にして日本が支那に比して出師の〓動機敏なりしは平生の心掛種々の點に於て彼に優るが爲めなれども〓航海業の〓歩は支那と同日の談に〓ずして〓〓船を〓〓するに容易〓りし〓〓こそ、特に〓〓〓をして機敏〓らしめたる原〓なる可し〓〓外交〓の〓〓〓云〓〓〓の〓〓〓〓云い今度〓〓〓を〓〓〓〓ある〓の一〓〓〓〓〓〓何れも〓〓〓〓〓〓〓の〓〓に非ざるはなし試に敵國の有樣を見る〓軍〓の兵器は我に比して〓良なるにも拘わらず毎戰敗北然かのみならず旅順口の砲薹は世界屈指の構〓にして天然人爲の要害を極めながら僅々數時間の攻撃に堪えずして敢なく陷りたるが如き彼の兵の卑怯にして且つ紀律の整わざるが爲めなりとは云へ護國の兵士をして斯る〓態に陷らしめたるは彼の〓會全體の腐敗に原因するものにして立國に必要なる諸般の要素、一として見る可きものなき其の中に獨り銃砲器械の類を〓〓したればとて何の用に立つ可きや彼の海軍が日本に比して優勢の戰力を備えながら黄海の一戰に敗北したるも亦この邊の事〓に外ならず彼我相對して勝敗の分るゝ相〓を尋ぬるときはますます我が成功の偶然ならざるを知るに見る可し即ち外國人などが今度の擧動に就て竊に怪しむは畢竟皮相の見に〓ぎざれども我國人たるものは此〓機會に際して單に戰爭の一事のみに心を傾くること〓〓ますます實力を發表してますます地位を〓むる覺悟なかる可からずとして目下の戰爭中に其〓を求むれば取り敢えず〓〓〓〓〓に定期航海を開て〓輸交〓の便を謀るが如き朝鮮の〓〓を〓張して商權を我に〓むるが如きは最も〓なるものにして其他種々の事業は尚ほ多々なる可し我輩は日本國民が〓に是等の事業に着手して戰爭外の功績を〓め國力發〓の實を發表して日本が今度の戰爭に地位を〓めて世界〓國の列に入りたるは〓して偶然ならざる事實を滿世界に示さんことを希望するものなり