「貿易の好況」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「貿易の好況」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

貿易の好況

昨年の我貿易額は實に二億三千七十二萬七千九百九十八圓に上り之を一昨二十六年に比すれば五千二百七十五萬七千九百六十二圓を〓したりとは〓に讀者に報〓せし所なり顧るに輸出入の一億圓に〓したるは去る明治二十年のことにして爾後七箇年を閲して早くも二億の聲を聞くに至りたるは誠に愉快と云わざるを得ず尤も昨年は銀價の下落により貿易品は一般に高直なりしが故に隨て金高の數字に於ても多少の〓加を現わすは勿論なれども爲替相塲の差に拘わらず全體に貿易の〓みたるは復た疑を容る可からず殊に六月以來外征の變ありしを以て其影響如何は人々の窃に懸念する所なりしが實際は金銀の輸出入に於て七百五十餘萬圓の輸出超〓を除く外、輸出入ともに〓加の一方にして且つ十月迄は輸入超〓に傾き居たりしかども十一、十二の兩月に於て俄に輸出を〓したるが爲め差引四百二十餘萬圓の輸入超〓を以て一年の終りを告げたるは時勢に照し見て之を上首尾と云うに妨なかる可し抑も〓〓我國の經濟界に非常の〓歩を呈し來りたるは爰に細〓するを俟たず事實爭う可からざる所にして我輩は夙に此〓〓を卜し多年を出でずして實利上世界に頭角を現わすを得可しとて猶ほ其實行の順序手段に付き百方計畫怠らざりしが二千餘年東洋の孤嶋に蟄伏して國を開くこと〓かりしが爲め日本と云へる名稱すら各國人中に知る者少なく恰も文明の競爭意外に〓けられて百事不如意殊に貿易業に於て最も〓憾を感じ居たりしに偶々昨年六月の朝鮮事變よりして日〓の開戰となり今や〓戰〓捷世に珍しき英武を顕わせしより各國の耳目〓〓として爲めに動き昨日まで日本に注意せざりしは却て今日一層の注意を深くする因となりたるものゝ如く老幼婦女に至るまでも日本の雷名を聞き日本の文明を稱し日本を尊重し日本を敬愛して我國勢の〓〓は實に幽谷を〓でゝ〓木に〓る觀あり此戰勝の効能たる萬説に就て千萬無量なりと雖も取分け多年不如意を〓みたる我貿易業の爲めには一大振興の機會を與へたるものにして〓して輕々に看〓す可きにあらず凡そ酒税に〓〓〓〓〓〓とすれ〓今回の戰勝の如き〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓の〓告に〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓向〓〓〓〓〓〓ざる〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓の〓〓〓〓〓〓爲め一〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓ずして〓〓り其〓告の〓によりイロ〓〓實利を〓むるは我商人の覺悟如何にあることにして且戰爭は〓して無代價にあらず直接間接の損害は皆各自の頭上に〓るが故に現に實戰に從事せざる人々に在ては唯殖産與利の一方に專らなる可きは勿論戰後償金等によりて假令ひ多少の潤澤あるにもせよ國家經濟の始末は斯る臨時のものに非ずして結局貿易の均整(Bal-ance of Trade)に於て勝を制する外なきは素より我輩の言を俟たず否な日本は戰勝と共に大國となりたることなれば商人も亦大國商人の心を以て自から相應の計を爲し一時の苟安に休息するが如きは許されざる所なる可し國民にして果して大勢の〓く所を察し此度の好機を利用して商〓の隆盛を圖りたらば〓に日本の面目を新にするのみならず世界の商界に向て新紀元をなさんこと亦敢て難きに非ず兎も角も從來徐々に〓歩を期したる種々の計畫も今日以後或は其規模を改め若くは實行を〓にして昨二十七年の貿易額二億圓は更に三億五億十億ともなりて我輩をして早く數倍の好〓を〓せしめんこと切に祈望に堪えざるなり