「朝鮮政府の改革」
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時事新報に掲載された「朝鮮政府の改革」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
朝鮮政府の改革
は文明仁義等の問題を別にして單に日本國の自利の爲めに是非とも斷行せざる可からずとの次第は前々號の紙上(三月十二日)に論〓したり扨て之を斷行する方法如何と云うに實を申せば利害直接の朝鮮人をして事に當らしめ日本は傍より時々忠告を與える位に止るこそ最も穩當なる處分に似たれども如何にせん彼の國人の卑屈にして自から〓む勇なく私に委縮して國事に不深切なるは最早や天下に隱れなき事實にして若しも彼等の爲す所に任せ置くときは何百年の後に改革の實効を奏す可きや殆んど河〓を待つに異ならず或は目下日本國の勢力を以て彼れに臨み固く改革を約したらばマサカ之に背くこともなかる可しなど云う人もあれども之を從前の實驗に照し凡そ朝鮮人に約束して其約束の〓りに履行したる例は先づ以て皆無と云うも可なり政府と政府との公約は勿論一個人の私に於ても無抵當の約束は無約に異ならず例えば金錢の貸借の如き苟も之を手離して彼れに渡すときは其約束の如何に拘わらず實際は〓上も同樣にして曾て〓濟の義務を果したることなきのみか彼等の本心に於ても之を思うことなく借用したる金も貰いたる金も又拾いたる金も自分の手に入りたる金は即ち私有金にして〓蛙〓蛙〓氣なるは〓も日本國民などの想像に及ばざる所なり彼の國〓に經驗ある或人の話に「朝鮮人の公心に乏しきは實に世人の想像外にして彼國にて〓々たる名士を以て稱せらるゝ人と雖も眞實、心の底より國の爲を思う者は甚だ少なし今若し朝鮮の所謂愛國家に向て朝鮮政府に百萬圓を〓與せんか或は君に百圓を與えんかと問わば彼等は必ず自から百圓を得んことを望むに相〓ある可からず斯の如き者共を相手にして國事を談ずるは畢竟益の勞のみ」とて痛く失望落膽して語りたることあり數百年來弊政の結果〓に〓會の人心を腐敗し了りたるものにして今日彼等の手を以て自から國事を改革せんなどは到底思い寄らざる所なれば日本政府は當所支那を〓けて獨力以て朝鮮を改革せんと決したれども今は其朝鮮人をも眼中に見ずして之を斷行する覺悟なかる可からず是れに就き目下第一の急務は我輩の兼て主張する如く彼の政府に日本人を入れて直に事に當らしめ改革に〓する政務をば都て日本人の手を以て處理することなり朝鮮國王は此程〓勅を發して德行才藝賢〓方正の士を〓く國中に求めたる由なれども現在の朝鮮に人才を求るは恰も〓〓の中より金銀珠玉を得んと欲するものに異ならず先づ以て覺束なき詮〓と云わざるを得ず夫れよりも〓に西洋文明の空氣を呼吸して殊に改革の業には最も〓慣れたる日本人を〓〓して其經驗技量を利用する方遙かに得策なるは多言に俟たずして明なり或は外国人を政府に容れては獨立國の體面を汚す云々の〓〓あらんかなれども今日の勢は最早や斯る細事に頓着する遑なきを如何せん凡そ人の住家に斷なく侵入するは不法の所爲なれども其家に火を失したるときは門戸を毀しても突入して危急を救うは啻に法律上妨げなきのみならず〓德上にも賞す可き事柄なり今や朝鮮は幣政の災に罹り其混亂狼狽は出火も啻ならずして我國に救も求め來りしものなれば其〓に應じて之を救助するに何の疚しきことあらんや若しも今日の塲合に尚ほ獨立國の體面云々に掛念し〓慮して空しく傍觀することもあらんには是れが爲めに彼國の腐敗は愈々益々甚だしく〓には自から亡滅して其獨立を失うに至る可し是れぞ即ち〓慮に〓ぎて却て人の禍を大にするものにして世間の人事に珍しからぬ間〓なり故に曰く我輩は朝鮮の獨立を全うせんが爲めに我國が飽くまでも彼れの内政に干渉せんことを希望する者なりと