「北京進撃」
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時事新報に掲載された「北京進撃」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
北京進撃
旅順、威海衛の陷落は敵の兩手を斷ちたると同樣のみならず北〓軍はますます彼の内地に侵入して牛〓、營口も〓に我手に歸したる今日、我軍の〓戰〓勝に引換へ彼に於ては萬が一の勝算もある可きに非ず尋常普〓の相手ならんには〓に罪を謝して降伏の實を表するこそ自家の得策なれ一日を延引するときは一日の損害を招くのみか〓には全滅の災を取らざるを得ず數の最も〓易き所にして明白の成行なれども彼の遲鈍頑〓なる支那人の腦中には容易に其利害得失を判斷するを得ず否な四境の國土は次第に削割せられて滅亡の期、旦夕に〓るも尚ほ且つ傲然として中華中國の〓大を以て自から居るは無〓經國人の常態にして敢て怪しむに足らず古來歴史の證する所にして自家の生命を失うに垂んとしても尚ほ悟らざるものにこそあれば彼等の考を以てすれば旅順威海の如き邊隅の地を失いたりとて〓して意に介す可きに非ず〓來は賊勢〓〓にして上國に〓き牛〓營口の邊を犯したるよし風聞あれども邊防の將師自から其人あり能く〓外の任を辱しめず日ならずして倭〓の首を〓下に致す可しなどとて自から安んずることならんなれば日本に對して眞實降伏など容易に思い到る可きに非ず或は少しく事理を解して此上、戰爭を繼續する不利を悟るものあるも滿朝滿野かゝる頑〓の〓氣に鎖されたる其中に居ては竊に一身の安危を顧みて眞實の意中を口外するものとてあらざれば目下の有樣に於ては彼が心の底より悔悟して降伏の實を表するは先づ以て覺束なきことならん或は先頃來彼が頻りに〓和使を我國に派〓して兩度までも拒絶せられたるに拘わらず今回は李鴻章が全權使〓としていよいよ渡來す可しと云う以て彼が只管和を〓うに切なる〓を見る可きが如くなれども李が〓らす所の所謂全權とは果して如何なるものにして實際に我指命の絛件に應ずる權能あるや否や聊か疑を容れざるを得ず好しや彼が〓回の失敗に懲り今度こそは眞實の全權を帶びて渡來し談判の要領を得ることある可しとするも元來その和議たるや李鴻章等一派の發意にして漸く北京〓〓の首尾を取繕いて漸く使〓派〓の〓びに立至りたる次第にこそあれば云わば其一派の術策に出でたるものにして彼の滿廷の親王大臣輩が戰爭の實際に詳にして此上、日本軍に刃向うは到底無益なりと眞實心の底より屈服して降伏を思い立たるものに非ざるや事實に於て疑ある可からず左れば彼等は〓和使派〓の今日に於ても基本心は依然中華の〓大を以て自から居り毫も昨非を〓めざることなれば苟も彼の妄慢〓傲を懲らし數千百年來の〓夢を〓〓せしめて大に後來を戒しむる目的を〓せんとならば日本國の勢力の大に怖る可き事實を彼等の眼〓に示して流石の無〓經國人をして眞實我に畏服せしむる外に手段ある可からず即ち我輩が開戰以來毎度〓べたる如く北京〓撃の必要なる所以にして戰爭の結局いよいよ〓くに隨い我輩はますます其必要を主張るものなり眼〓に首府の陷落、國王の〓〓を見るときは彼等の頑〓を以てするも到底力を以て爭う可からざるを悟り始めて畏服の念を生ずることならんと思へども若しも首府の〓撃にして尚ほ且つ彼等の〓夢を〓するに足らざることもあらんには百萬の兵馬、更に四百餘州の土地を蹂躙し盡しても全く其夢を醒さしむること期せざる可からず要は飽までも彼等を打懲らして充分に〓慾の目的を〓するに在るのみ今や季〓も次第に温和に向いて北〓の海陸に於ける天然の障害正に其跡を絶てり〓軍の好時期にして思うに我當局者に於ては新局面〓撃の計畫大に熟するものある可し敢て局外者の云々を要せざる所なれども我輩は目下切〓の時機に於て只その實行の一日片時も〓ならんことを切望に堪えざるものなり或は今度李鴻章の渡來に就ては從前の使〓と〓い其全權の委任も確なりとのことにて〓和の談判は差したる困難なく〓る可しとて今更ら北京の〓撃を不必要なりと認むるものもあらんかなれども我輩の所見に於ては〓して然らず事の成否は豫め知る可からずと雖も假りに一歩を讓りて談判は案外容易に〓る見〓ありとするも之が爲めに今より北京〓撃を思い止まる必要はなかる可し如何となれば今日〓和の哀願を容るゝに當りて彼に命ず可き絛件は我輩が敵國の首府に侵入し其國帝を捕え親王大臣等を始め李鴻章も捕虜中の一名にして最後の大〓利を〓めたる其時に要求す可きものと同一なる可きは勿論にして其絛件に寸分を欠くときは斷じて和を許さざる〓心なりとすれば假令ひ〓撃の中〓にして兩國の間に〓和の成行を呈し其計畫を中止することあるも事の實際に於て差支えなければなり我輩は目下の塲合に臨み他を顧みずして只〓撃の一方を急がんとするものなり