「議會の閉會」
last updated:
2019-09-29
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時事新報に掲載された「議會の閉會」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
議會の閉會
第九議會は昨二十八日を以て無事に終りを告げたり抑も議會開設以來の有樣を見るに毎度
の不始末にて豫算の不成立に了りたることさへ屡ばなりしに今回は甚だ穩にして豫算は勿
論その他の諸法案いづれも目出度く通過したるは先づ以て上首尾と云はざるを得ず畢竟日
清戰爭の一事よりして國内の人心自から一致の實を呈し戰後經營の眼目たる軍備擴張案の
如き增税法案の如き何人も異議を唱ふるものなかりしが爲めとは云ひながら又一つには政
府の當局者が自由黨と結托して議塲に多數を占め反對論を制して原案の通過を容易ならし
めたるの一事、與りて力ありと云ふ可し我輩は敢て議塲に反對論のなきを欲するものに非
ず多數の議員が只政府の發案に盲從して一も二もなく之に盲判するが如きは最も好まざる
所なれども左ればとて從來の如く何事も政府に反對する其反對論は兎も角も眼前に必要な
る事業を一切高閣に束ねて毎年々々に流れとは如何にも堪へ難き次第なりしに然るに今度
の成蹟を見れば我輩の希望に於ては尚ほ不滿足の廉、少なからざるにも拘らず兎に角に必
要の法案だけは無事に通過して成立せしめたるは之を稱して開設以來の上出來と云はざる
を得ず當局者が一方ならぬ魂膽、自由黨を味方として議塲に多數を制したる其効能果して
空しからず得意想ふ可きなり只今後に注目す可きは政府が自由黨に對する始末にして政府
は如何なる方法を以て之に酬ひ又自由黨は如何なる條件を要求す可きや何れ此儘には濟ま
ざることならんなれども是れは双方相互の關係として我輩は唯無事の閉會を祝するものな
り